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TCP/IPまるわかり 第8回

TCP/IPアプリケーションの仕組みを知ろう

HTTP、FTP、SMTP、SIPはどう動くの?

2009年08月10日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

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メールの送信と転送を担当SMTP

 電子メールを扱うプロトコルも、SMTP、POP3、IMAP4など複数ある。ここでは、インターネットプロバイダのメールサービスの事実上の標準となった、SMTPとPOP3について説明する。

 SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)は、信頼性が高く効率的にメールを配送するプロトコルで、メールをサーバへ送信するときに使われる。メールソフトを使ってパソコンからサーバへ送るときも、サーバからサーバへ転送するときも、たいていはSMTPが使われる。メールサーバは通常、25番のポートを開設して、他のホストからの接続を待つ。メールを送信するホストは、このポートとコネクションを確立して、文字列のコマンドを送信する。サーバはそのコマンドを実行して、その結果を応答コードで返す。1組のホストの間に開設されるSMTPのコネクションは1つだけで、メールのデータはコマンドと同じコネクションを使って、サーバへ送信される。

図3 メールシステムの基本的な構成

 SMTPでは、HELO(最初に送信ホストが自分の名前を受信ホストに通知する)、DATA(メールのデータを送信する)、QUIT(SMTPによる接続を終了する)などのコマンドが定義され、サーバはそのうち8個の必須コマンドをサポートすればよい。このたった8個のコマンドでメールの転送ができる点が名前の“Simple”の由来になっている。SMTPでは送信側も受信側もお互いに認証をいっさい行なわないため、SPAMが横行する元になった。

 SMTPでメールを受信するには、つねに25番のポートを開けて接続を待っていなければならない。つまり、24時間いつでも電源を入れておかねばならいので、個人のパソコンには適さない。そこでSMTPでのメールの最終目的地は、会社であればシステム部門の管理するメールサーバ、個人であれば契約したプロバイダの管理するメールサーバとなる。

 また、ユーザーは自ら定期的にメールサーバまでメールを取りに行く必要がある。これは、紙の郵便の世界の「郵便局留め」扱いに相当する。

メールを受け取るプロトコルPOP3

 POP(Post Office Protocol)は、メールサーバに溜まったメールを読み出して、パソコンやワークステーションに取り込むためのプロトコルで、POP3は「POPのバージョン3」を意味する。POP3のメールサーバは通常、110番のポートを開設して、クライアントからの接続を待つ。メールを読み出すクライアントは、このポートとコネクションを確立し、ユーザーIDとパスワードによる認証を経てサーバにログインする。それから、クライアントがコマンドを送信してメールの読み出しを指示し、サーバはメールのデータを送信する。

 POP3より前のバージョンではユーザーIDだけでメールの読み出しが可能だったが、POP3ではパスワードが必須となりセキュリティレベルが向上している。ただし、パスワードは平文のまま送信されるので、現在ではパスワードをMD5で保護するAPOPや、POPの通信全体をSSLでカプセル化する POP over SSLなどが使われている。

(次ページ、「SIPの動作」に続く)


 

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