今回からはグラフィックチップ、GPUの話をしよう。90年代は何社もの開発会社がしのぎを削ったGPU業界だが、Matroxは業務用に、XGIは組み込み(と一部サーバー)用に特化してしまっており、VIAの傘下にあるS3も、一部のノート向け以外はほぼ組み込み用という雰囲気だ。GPU業界と言っても、事実上ATI(AMD)とNVIDIAの一騎打ちになってしまっている。
まずはNVIDIAから取り上げよう。その設立から、GeForce FXの頃までを振り返ってみる。
1999年のGeForce 256で飛躍的に性能向上
NVIDIAの設立は1993年と、やや最近(ライバルであるATIは1985年)である。最初の製品である「NV1」は、「EDGE 3D」というグラフィックスカードで旧Diamond Multimedia社から発売された。格闘ゲーム「バーチャファイター」が同梱されたこともあって、一部ではウケたものの、売り上げにはあまりぱっとしたものではなかった。
同社が飛躍するのは、これに続く「RIVA 128」(コード名 NV3)や、これを改良した「RIVA TNT」(NV4)「RIVA TNT2」(NV5)といった製品を投入してからだ。これらはまだジオメトリ演算処理エンジンに当たるものは搭載していなかったが、当時の競合製品だった3DFX社の「Voodoo 1」「同2」と互角の描画能力があり、マーケットシェアを伸ばし始める。
大きなターニングポイントは、1999年に登場した「NV10」こと「GeForce 256」は、当時最新のマルチメディアAPI「DirectX 7.0」に準拠したジオメトリエンジンを搭載。描画性能を大きく伸ばすことにより、競合である3dfx(Voodoo 3の頃に社名が3dfxに変わった)の「Voodoo Banshee」や「Voodoo 3」に大きな差をつけることに成功する。
3dfxも「Voodoo 4」「同5」の開発を急ぐが、こちらは当初予定から2年遅れた2000年の投入となってしまい、完全に大きな差がついてしまった。結局3dfxは2000年12月にNVIDIAに買収されてしまい(関連リンク)、これで当面の敵は居なくなった。しかし、今度はATIがRadeonシリーズで新たに競争を仕掛けてきて、その競争は今日もまだ続いている。
話をNVIDIAの製品ラインに戻そう。1999年のGeForce 256に続き、2000年には「NV15」を「GeForce 2 GTS」として投入する。こちらはプロセスの微細化を進めて動作周波数を引き上げるとともに、テクスチャユニットをパイプラインあたり2基に強化したモデルである。
ロードマップ図でコアやメモリーの動作周波数に幅があるのは、OEMベンダーによって構成の変更による差別化が行なわれているからである。同じ2000年8月には、ハイエンド向けに動作周波数やメモリークロックを引き上げた「GeForce 2 Ultra」(NV16)がリリースされている。
これと並行して、GeForce 2 GTSのサブセットとでも言うべき製品も開発された。それが「NV11」で、「GeForce 2 MX」という名称で2000年6月にリリースされている。こちらはパイプラインの数を半分に減らしたもので、この結果、NV15が2500万トランジスターなのに対し、NV11では1900万トランジスターと削減され、ダイサイズもその分縮小されている。
純粋に半分にならないのは、メモリーインターフェースやAGPインターフェースなどはNV11とNV15で共通だからである。それでも消費電力の多い描画パイプラインを半減させるとともに、動作周波数を低めに抑えたこともあり、単に低価格向けのみならず、低消費電力の製品としてもラインナップされることになる。
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