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怪獣映画は特撮の皮をかぶった「戦争映画」

2009年07月24日 22時47分更新

文● 吉田 重戦車

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 子供の頃は、ゴジラとガメラ、どちらが好きかと問われれば断然ゴジラ派だった。ゴジラに登場し、マニアに「東宝自衛隊」と呼ばれる対怪獣能力を持った特殊な戦闘車両や航空機の活躍を見るのが好きだった。

 しかし、平成になりゴジラとガメラが復活した時、ついにガメラ派になってしまった。それはなぜか。「平成ガメラ」がミリタリーオタクの琴線に触れる「特撮の皮をかぶった戦争映画」として登場したからだ。

 もちろん他の特撮でも、自衛隊の協力で兵器や隊員が映像として登場しているが、架空の兵器や架空の組織が主体となっていて、自衛隊は脇役となっていることが多い。

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 ところが平成ガメラでは架空の兵器や対怪獣組織が登場しない。基本的に自衛隊が主体となり、現実の自衛隊が装備している兵器で怪獣と戦う。そして金子修介監督や特撮監督樋口真嗣、シナリオ担当の伊藤和典などスタッフの力で、登場する兵器や人間にリアリティーを感じさせる作品に仕上がっている。

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 「ガメラ2レギオン襲来」撮影後、金子監督はインタビューで「怪獣映画は戦争映画の変形と考えている」「日本では戦争映画が娯楽映画として育たなかったのは、やはり50年前の戦争体験があるからでしょう。(中略)ガメラの場合、レギオンという侵略者を撃退する話ですから、戦争映画手法で描いても痛快になるだろう(後略)」と「ガメラ2レギオン襲来完全解析」の中で語っている。本物の戦争はできれば避けて通りたいが、おとぎ話としての「映画の中の戦争」なら大歓迎だ。どうせ架空の話なら、できるだけ派手な見所のあるストーリーがイイ。

 今回リリースされた平成ガメラ3部作のうち、最も「戦争映画として痛快」と言えるのは第2作「ガメラ2 レギオン襲来」だ。

 本作がイイのはまずその設定だ。ガメラが戦う脅威は、宇宙人やロボット、異次元怪獣などではない。「異世界の生態系」そのものが地球を侵略するのだ。敵役として登場するのは、根付いた惑星の大気を改造し、自らの種子を化学反応で大気圏外に打ち出して繁殖する巨大植物「草体」(そうたい)。巨大植物と共生し、ガードする存在のシリコン群体生物「レギオン」。群体生物レギオンが最後まで自衛隊、そしてガメラを苦しめるのだ。札幌地下鉄構内での戦い、仙台霞の目飛行場での戦い、そして最終防衛戦での戦いと、レギオンは様々な形で攻撃を繰り広げる。

 ちなみに化学反応で種子を宇宙に打ち出すストーリーと言えば、星野之宣の「2001夜物語」が有名。「ガメラ2 レギオン襲来」はそこからヒントが取られているとのことだ。

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 「ガメラ2 レギオン襲来」には「戦争映画」につきものの人間ドラマもちゃんと準備されている。平成ガメラは毎回ヒロインが登場するが、今回のヒロインは水野美紀演じる穂波碧だ。そして碧を囲む二人の男性が登場する。吹越満演じるNTT北海道社員で知的な帯津と、永島敏行が好演する渡良瀬二等陸佐だ。彼ら3人の微妙な、いかにも日本的な三角関係が見る者を楽しませる。

 なお、唯一本作を見ていて不満なことは、自衛隊の協力を得て作劇上のリアリティーは大いに増しているものの、代償として航空自衛隊所属機の撃墜シーンを映画に含めることが許可されなかったことだ。金子監督は、その鬱憤を晴らすかのように、監督作品「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」に架空の組織「防衛隊」を登場させ、防衛空軍のF-7J(なんと旧ソ連のフランカーだ)戦闘機多数をゴジラに撃墜させている。

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 村田雄浩演じるF-7Jパイロットが「角度の問題じゃない!」と絶叫しつつ、ゴジラの放射能火炎で乗機を撃墜されるシーンは、「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」の名シーンの一つだ。

 しかしこうやって振り返って見ると、今の日本で「戦争映画」を撮っているのは金子監督だけなのかも知れない。ミリタリーオタクとしては、非常に寂しい限りだ。平成ガメラも平成ゴジラも共にシリーズ再開の動きが無い今こそ、金子監督には本格的な戦争映画を手がけて欲しいと考える次第だ。

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