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ガンダムに見るマウスとキャットと物量戦

2009年07月23日 21時18分更新

文● 吉田 重戦車

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 京都の人と話していると「前(さき)の戦争で焼け出されまして…」と言うことがある。「え、いつの戦争ですか?」と聞くと、すました顔で「応仁の乱」とか言う。同じようにガンダムオタクと話していると「あの戦争では物量で負けた」とか言う。「どの戦争?」って聞くと「一年戦争」とか言う。おいおい、そりゃ架空の戦争だろう?と突っ込みたくもなるが、こちらもガンオタなので同じ穴のムジナ、結局話が盛り上がってしまう。

 さて「ガンダムと戦争」などと言ってはいるものの、実際のところ戦争は嫌いだし起きないにこしたことはない。身内も先の大戦(もちろん第二次世界大戦だ)で数人亡くなっている。ただ、機動戦士ガンダムの設定が歴史上の出来事や兵器をイメージしているのも事実だ。

 知っている人も多い話だが、劇中ではジオン公国が枢軸国のイメージで描かれている。確かに黒と赤が基調のジオン国旗は、第二次大戦中のドイツ海軍旗がモチーフになっている。

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 ジオンの兵器もそうだ。モビルスーツ・ザクの名称は、以前より旧日本海軍の零式艦上戦闘機のコードネームZeke(ジーク)に由来しているのではと指摘している人もいる。一年戦争緒戦でのザクの大活躍は、確かに太平洋戦争開戦当初の零戦の無敵神話を彷彿とさせる。

 さらに妄想だが零戦も第二次世界大戦中盤以降、緑色に塗装されることが多かったのが、ザクが緑色になった理由なのかも、とも思った。が、これは珍説のたぐいということで忘れて頂きたい。

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 一年戦争については下記の書籍がよくまとまっている。特に「GUNDAM CENTURY RENEWAL VERSION」は初版が、1981年の第一次ガンダムブームのさなかに刊行された一番濃い内容のもの。公式設定がまだ明確になっていない時期に、想像とSFマインドでガンダム世界を補完した好著だ。

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役に立たなかったドイツ超兵器こそジオン軍メカの先祖だ

 さてさて実は私は「ビグザム=マウス」説をこっそり唱えている。もちろん公式の設定でもなんでもないので、サンライズに問い合わせるのは止めていただきたい。あと「マウス」ってドイツの戦車の名前だ。

 なんでそう思ったかというと一年戦争当時、やたら試作機(もしくは個体性能に優れた少数生産機)を戦場に投入するはジオン軍側で、第二次世界大戦の枢軸側、まさにドイツ軍のイメージだ。世界最大の80cm列車砲超自走砲カール、そして超重戦車マウスなど、まさに超兵器のオンパレードだ。同様に一年戦争のジオンのモビルアーマーや試作モビルスーツは、高性能で製造に手間がかかる故に大量生産できず、戦局に寄与しない戦術兵器だったドイツ超兵器のイメージにピッタリ重なる。

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 ちなみに80cm列車砲は上記リンク表紙にあるように都市・要塞攻撃用兵器で、戦艦大和の46cm主砲を遙かに凌駕する大砲だった。よくもまあ、こんな兵器を作って運用したなあというのが正直な感想だ。

 話を戻そう。重戦車マウスは、ドイツの敵国だった戦車大国ソ連など連合軍のあらゆる戦車を撃破することのできる兵器として開発された。その重量188t。4t軽トラックなら50台近く、お台場潮風公園の1/1ガンダムが重量35tなのでその5機分にもなる。まさに戦車の中の戦車、戦車の王と言える。まさにビグザムの持つ、あらゆるモビルスーツやモビルアーマーの王的なイメージと重なるのだ。

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 マウスは上記のように不細工な戦車だ。正直格好いいとは言えない。史実においてマウスは実戦投入されたものの、戦うことなく故障で放棄されている。もちろん、放棄されたときにドイツ軍の将軍がマウスの砲塔上で機関銃を乱射したような史実も伝わっていない。戦場でソ連軍に回収されたマウスは、現在モスクワのクビンカ博物館で展示されている。

(次ページへ続く)

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