このページの本文へ

古川 享×清水 亮×遠藤 諭

「第参回天下一カウボーイ大会」開催記念座談会

2009年08月25日 23時58分更新

文● 天下一カウボーイ大会実行委員会

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

夏への扉

清水:今日は絶対お二人にお聞きしようと思っていたことがあって。最近、Web2.0ブームに乗ってできてきた会社が、バタバタバタッと今月だけで20社くらいサービス停止や廃業に追い込まれていて。でもこういうのって昔もあったような気がして。昔パソコンのソフトのメーカーが一斉に廃業していった時代があったでしょう。そこで生き残る会社とそうでない会社は、いったい何が違うのかな、と思って。

遠藤:というか、そもそもWeb2.0って言うのは、米国でドットコムバブルの崩壊以降に生き残った会社を分類したものでしょ。オライリー自身がそう言ってるし。残ったものを分類したのがいわゆる「Web2.0」で、つまり、日本というフィールドでWeb2.0という概念はなかったともいえますよね。

清水:なるほど。でもそれじゃあ3.0になるときに、どういうところが生き残るかを考える参考にはならない。コンピューターの社会における発散と淘汰の歴史を長くご覧になっているお二人なら、なにか普遍的な法則みたいなものをご存知なんじゃないかな、と思ったんですけど。

古川:エンジニアリングのトップと、技術のトップと、それが一人のときもあるし二人のときもあるんだけど、そういう人たちがさ、もっといいものを世に出すということよりも、六本木・銀座方面のクラブ活動とか、クルマや時計の自慢に夢中になりだすともうダメだね。やっぱり生きるうえでのエネルギーがどこを向いているかっていう問題は大きいと思う。金は魔物だからそうなっちゃうのか、みんなからおだてられて偉くなった気になっちゃうのか……。

遠藤:不幸な青春を送ってきた人は、少しは取り戻したい気分になりますよね。

清水:モテなかったからとか?

古川:でもねえ。それはその人がモテてるわけじゃなくて、懐の福沢諭吉さんがモテてるだけだから。

遠藤:日本の不幸はね、将来的にブレイクする可能性のある技術を持っていたとしても、目の前のビジネスモデルのないところは一様に生き残れないところですよね。米国は、グーグルやヤフーに買収されるパターンがあるから、ビジネスモデルもさることながら、技術自体に突っ込めるみたいなのがあるじゃないですか?

古川:イグジットプランの幅が狭いというのはあるよね。アメリカなんかだったら、ある程度サービスが大きくなったらそれを商社や大企業なんかに売却してね、新しいこと始めたっていいわけだよ。でも、日本でそういうことやると「逃げた」なんて言われる。アメリカだったら、成功した場合でも、失敗した場合でも、一度事業を立ち上げた後にまた大学に戻って、また授業受けて面白いこと見つけて、もう一度外に出て会社をやるなんてことをだいたい4ラウンドから5ラウンドはできる。

遠藤:うーん、ぜんぜん違いますね。

清水:そういう人はあんまり居ないですね。

古川:ホリエモンにしたって西さんにしたって、あれだけ光り輝いてたのに1回グシャッと社会からつぶされると、這い上がれない。アメリカだったら、金額的にもキャリア的にも次のステージに上がるチャンスがあるんだけど、日本の場合はその人に次のチャンスを与えることなく一度つぶしたらみんなで踏みつけて、二度と這い上がれないようにしてしまう。

遠藤:メディアの責任はありますね。

古川:だから、失敗をバネに次のステップに進むっていう可能性自体が少なくて、一度落ちたら奈落の底まで行くしかないような状態。

遠藤:じゃあ、日本で何ができるか。アメリカではエンジェルがいたり、適切な経営の専門家が送り込まれたり、起業を助ける仕組みがある。でも日本にはないじゃないですか。メディアの責任ってどういうことかというと、製品や人を評価をする働きがちゃんと機能しなくなっているのではないかということです。体系立てて評価をするシステムができると何が生まれるかというと、「スター」が生まれる。スターって何かっていうと、ワガママが言える人。お金を出してもらっても、誰が出したかに影響されないで好きなように作れる人が「スター」だと思います。だとすると、アニメの製作委員会みたいな形でね、予算を組んだらいいと思うんですよ。アニメがうまくいってるのかどうか、たった今は怪しいので、これはものすごくダメな発言かもしれないですが。

古川:でも、そういうのは出てきてるよ。信託みたいな形でね。

遠藤:これには「スター」がいないとダメなんですけどね。そうでないと、船頭が増えて船が山に登っちゃいます。だから、スター性がある人に「君はスターだ」って言ってあげるメディアが重要。そうやって、日本民族に向いていて、現状やれてるような形で、ネットベンチャーをローンチするような方法があってもいいんじゃないですかね。

古川:今はちょうど信託法が変わって、そういうのが自由に組めるようになってきてる。第何号議案は、このプログラマーとこのタレントとこの技術を組み合わせて個人が一口百万円、企業は一千万円からでファンドがまわります、とかさ。

遠藤:そういう日本人向けの手法をね、アニメや映画と同じで、それを宣伝できる人、売るのが得意な人、応用ができる人、海外に持っていきたい人、純粋な投資家もあっていいけど、保険屋も入っているとか集まってやれたらどうか。いろいろ試してみるのがいいんじゃないでしょうか。

次ページに続く

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中