コンピューターを取り巻く状況が時々刻々と移り変わる激動のこの時代。技術力を武器に時代の荒波を乗り越えよう意気込むITエンジニアたちが集うのが、「天下一カウボーイ大会」だ。
各界から著名なエンジニアの発表(「ロデオ」と呼ぶ)のほか、第参回となる今回は「Code is Love」と題して、180秒ジャスト(延長は一切なし)の短時間でプレゼンを行なう一般の部「180ロデオ」コーナーも新たに設けられた。“わずか3分間でプレゼンを完了する”というひとつのチャレンジになっていた。
――と、このように一日目(8月29日)夜のNHKニュースでは、「IT技術者の成果発表会」などと紹介されていたが、実のところそんな堅苦しいイベントではない。メインパーソナリティーを努める3人の座談会(関連記事)を読んでいる読者ならすでにお分かりのとおり、とにかくITの世界であればジャンルを問わず“俺はこんなものを作っている/作った”という発表というか腕自慢大会の場だ。
自慢の腕を見せつけろ!
ITを一番乗りこなせるのはオレ様だ
プレゼンターにしても、西川 徹氏(プリファードインフラストラクチャー 代表取締役社長)の「検索エンジンの技術」では、その高速化の手法や検索アルゴリズムだけでなく、ハードウェアの進歩(SSDの導入)によって検索エンジンのつくり自体を見直すことになる……といったものから、神谷栄治氏(アイビス 代表取締役社長)の「自律移動ロボットの開発」では、単に一個人の趣味として始めて現在も開発途中(「つくばチャレンジ」に参加したが、まだ完走できていない)まで、仕事も趣味も関係なくハードウェア・ソフトウェアを創り上げることを愛する“Code is Love”な内容ばかり。
Palmの有名人、あの山田氏が“やってきたこと”!?
特に印象に残ったのは山田達司氏(NTTデータ COEシステム本部、というよりもPalm/PDA関連で知らぬ人はいない“あのひと”)のプレゼンテーションだ。主テーマの「働き方を変えよう-Palmからワークグループまで」では、同氏が最近社内で進めているIT業界のワークスタイルの改善およびその支援ツール(フリーアドレスオフィスにおける円滑なコミュニケーションの実現)を紹介。
そして、「それ以前にどのようなものを創ってきたか」として、PalmのSDKでも公開されていない命令の発見から日本語化、アプリケーションのローカライズ(日本語化)、接続可能なキーボードの発見と、デバイスドライバーやDA(Desk Accesory、Palm用ソフトウェア)の作成と普及などの歴史を語るなど、まさに“コンピューター・カウボーイ”の体現者と言えよう。
学生たちの180ロデオも侮れず!
180ロデオの発表者は学生が中心なのだが、さすがに応募してくる連中も一癖も二癖もある強者ばかり。青木貴司氏(東京大学)は複数の平面写真を組み合わせて3D空間映像を生成する「バーチャルタイムマシン」、武田泰弘氏(中央大学)のダンベルにセンサーを取り付けてトレーニングをTwitterで実況(「マスカラス/お前」という単位を採用)――などなど。
比較的まじめなものからネタに走ったものまで、なんでもあり状態。さすがに180秒はきついのかプレゼン自体はやや掛け足で、それでも時間切れになるものが多かった。もう少しじっくり聞きたいものもあるほど、盛り上がっていた。
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ちなみに冒頭の古川 享氏による基調講演でも、「若手プログラマーたちを応援する」という熱いメッセージが込められていたが、古川氏をはじめとしていまだ現役で活躍している先達らのカウボーイっぷりを見せられただけに、次の世代への期待が否応なく盛り上がる2日間だった。
お詫びと訂正:掲載当初、古川 享氏のお名前を誤って古川 亨氏と記載しておりました。ここに訂正するとともに、お詫びいたします。(2011年6月29日)