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Google負けた?MS新検索サービスBingの「本気度」 (2/2)

2009年06月01日 14時00分更新

文●中野克平/Web Professional編集部

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Googleの弱点は「使いにくさ」

 マイクロソフトが見るところ、Googleの弱点は「使いにくさ」だ。オフィス製品を改善するときのように、Live Searchユーザーの使い方を調べ、「期待する検索結果を得られるのは4回に1回」と見いだした。Googleのつけ込む隙をついに見つけたBing(開発コードKumo)の担当者は、勝利を予感してニヤリとしたに違いない。

Bing

マイクロソフトによれば検索エンジンに対するユーザーの満足度はまだ十分ではないという。多くのユーザーは検索ワードを追加して目的の結果を得ている(マイクロソフトのプレス向け説明資料より)


 キーワードの意味まではあまり考慮しないのがGoogleの弱点だ。たとえば、北海道に旅行に行こうとして「北海道」を検索すると、ユーザーの期待とは関係なく、「北海道」を含むWebページがGoogleの評価した順に並ぶ。ユーザーはこれでは目的が達成できないので、「北海道 観光」「札幌 ホテル」など、望み通りの検索結果が表示されるまで検索要求語を入力し直す。Googleもこの弱点が分かっているから、しばしば入力され直す検索語を選択肢として表示するワンダーホイールのような機能を追加したはずだ。

 マイクロソフトの資料によると、ユーザーが1回の検索に費やす時間は30分以上が46%、その間、新しい検索要求語が入力される割合が51%、同じ検索要求語が繰り返し入力される割合が49%だという。

Bingの画面

Live Searchでは、1回のセッションで30分以上かかる場合が46%あり、その間、同じ検索語を繰り返し入力する場合が19%、部分的に同じ検索語を繰り返し入力する場合が30%あったという(マイクロソフトのプレス向け説明資料より)


 マイクロソフトが見いだしたGoogle型検索の問題の正体は、PageRankに代表される検索アルゴリズムだ。ユーザーが入力するキーワードは千差万別とはいえ、ある種のパターンに分類できる。たとえば、「地名」を入力したユーザーが期待している結果は、ホテルや地図、天気、レストランなどの地域情報だ。地域名がユーザーの現所在地と同じなら、天気、レストランを期待しているだろうし、現所在地と異なれば、ホテルや空港の方が期待されているだろう。

 また、「商品名」を入力したユーザーが期待している結果は、発売前であればスペックの詳細が分かる公式情報だろうし、発売後であれば価格や使い勝手を知るためのレビュー記事だろう。キーワードを文字の羅列と見るのではなく、地名なのか商品名なのか人物名なのかという品詞と、ユーザーがどのような意図で検索しているのかの状況を組み合わせれば、検索結果の精度を格段に高められるはずだ。

 マイクロソフトがBingを「検索エンジン」と呼ばず、「次世代検索サービス」「意志決定エンジン(Decision Engine)」と呼ぶのは、ユーザーの期待した検索結果に、Googleよりも早く到達でき、製品の購入や週末の過ごし方、観光、医療機関や治療方法の選択といった「意志決定」にGoogleよりも役立つと考えているからだろう。また、Googleが検索結果を表示して、ユーザーを他のWebサイトに送り込もうとしているのに対し、Bingは検索結果だけでユーザーの期待が満たせるように工夫されている。

 たとえば、デジタルカメラの製品名を入力すると、「センチメントエクストラクション(Sentiment Extraction:評判検出)」という機能が働き、販売サイトだけではなく、評価記事やブロガーのレビュー記事が別枠で表示される。

Bingの画面

ニューヨークの寿司店を検索すると、センチメントエクストラクション機能により、評判情報が表示される


 ホテルを検索すると、「レートキー(Rate Key:等級キー)」という機能が働き、所在地にある複数のホテルの候補、価格、設備を比較した格付けが鍵として表示される。

Bingの画面

ホテルを検索するとレートキー機能により、周辺のホテルが写真や評価情報とともに表示される


 駅や空港名を入力すると、「プライスプレディクター(Price Predictor:価格予測)」という機能が働き、チケットを最安値で購入するのに最適な時期が提示される。

Bingの画面

Bing travelでチケットを検索すると2008年に買収したFarecastの技術により、航空運賃やホテル宿泊費の「買い時」が表示される


 ライバルにない高度な機能をこれでもか、と繰り出すマイクロソフトの製品発表は久しぶりだ。後追いが続いたWeb分野で、マイクロソフトらしい製品がやっと登場し、Googleもうかうかしていられないだろう。

 ただ、残念なことに、センチメントエクストラクションもレートキーもプライスプレディクターも、高度な自然言語処理とともに、関係業界との調整作業が欠かせない。いずれも当分の間は米国版のみの提供で、日本版Bing(Bing.jp)はLiveサーチの外見が変わるだけだという。

 購入時のアフィリエイト報酬がユーザー自身に還元されるBing cashbackも、ベータ版扱いの日本では展開されない。これでは、Yahoo!対Googleという日本の検索エンジン市場の構図はしばらく変わらないだろう。マイクロソフトのWeb対応はまだまだ始動したばかりのようだ。

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