出来が悪いといって高をくくっているライバルを、マイクロソフトは何度も痛い目にあわせてきた。WordもExcelもXboxも世代を重ねるうちに製品自身の問題を克服し、ライバルを凌駕する性能・機能を身につけ、いつの間にかライバルは姿を消していった。6月3日にマイクロソフトが公開する新検索サービス「Bing(ビング)」は、MSNサーチ、Live Searchに継ぐ、マイクロソフトの3世代目の検索エンジン。久々に「マイクロソフトらしい」輝きを放つ製品の登場だ。
検索市場を独走するGoogleとパッとしない競合の動き
挑戦を続ける「検索帝国」Googleに、つけ込む隙は見あたらない。つい先日も、サーチウィキやワンダーホイールなど、ライバルに先んじて検索エンジンの新しい姿を見せたばかりだ。調査会社によって異なるが、世界の検索クエリーのおよそ6~7割はGoogleが占めているし、2009年度第1四半期の売り上げは苦しい経済情勢の中、前期比3%減の55億1000万ドル(約5300億円)ながら、純利益は8%伸ばしている。
同業他社の動きはパッとしない。Yahoo! の行方は迷走しているし、「How far is the moon from the Earth?(地球から月までの距離は?)」という質問に「37万4012キロメートル」「23万2400マイル」など、検索ではなく計算で答えてくれる話題の「WolframAlpha(ウルフラムアルファ)」は、奇抜すぎてこのままではメジャーにはなれないだろう。
入力補完やドリルダウン検索を充実させようとしている「cuil(クール)」は、開発者の経歴やテクノロジー、ビジネス構想は立派だが、動きが遅い。鳴り物入りでMSNサーチから衣替えした「Live Search」は、Internet Explorerの標準検索エンジンという位置付けから抜け出せていない。
Googleの成功があまりに目立ち、「検索エンジンはGoogleで決まり」と見ている専門家も多い。「マイクロソフトが普及させたWindowsというプラットフォームを利用し、Webで勝ったのがグーグル。その次に来るのはグーグルが築いたWebインデックスを利用する企業」(国内の検索エンジンの専門家)など、Google勝利を前提に、「その次」が語られている。
ところが、マイクロソフトはまだ諦めていなかった。WordPerfectや一太郎をWordが、Lotus 1-2-3をExcelが、Netscape NavigatorをInternet Explorerが倒したように、ライバルの弱点を徹底的に研究し、よりよい機能を親しみやすいデザインで一般ユーザーに提供すれば勝てる――マイクロソフトは、自らの勝ちパターンを忘れていなかったのだ。
