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eyeVio譲渡 家電メーカー動画配信の勝機はどこに?

2009年04月22日 06時00分更新

文● 松本 淳

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正式オープンからわずか2年での譲渡

運営会社変更のお知らせ。会員登録情報もスプラシアに移行される

 4月15日、ソニーは動画共有サイト「eyeVio(アイビオ)」を、オンライン動画編集サイトを運営するスプラシアに譲渡すると発表した。2007年4月に正式オープンしたeyeVioはいち早くJASRACと楽曲使用についての契約を締結し、有人監視体制もとるなど、著作権に配慮する姿勢を示し、いわば「安心・安全」な動画共有サイトを目指していたと言える。

 ソニーらしくHD動画に対応し、同社製品との連携も強化。公式コンテンツも意欲的に調達し、機能面でみても当初YouTubeに引けを取るところは少なかった。本来であれば、ソニーユーザーを中心としたマーケットを囲い込み、優位性を発揮できたはずのeyeVio。それがなぜ撤退を余儀なくされたのかを考えると、「家電メーカー」の動画配信ビジネス、ひいてはネットサービスというプラットフォーム型のビジネスで、メーカーが向き合うことになる壁が見えてくる。


和製iPod+iTunes型ビジネスが出てこない構図

 eyeVioに与えられた役割のひとつは、やはりソニー製品との連携を高め、使い勝手を高めることで、結果的にユーザーをまず囲い込むことにあったと考えられる。それに成功しているiPod・iPhoneを擁するAppleに比べ、日本の家電メーカーからネットワーク対応製品やサービスのスマッシュヒットが出てこないのは何故だろう? よく指摘されるこの課題を考える機会として、eyeVioを取り上げてみたい。

 「プラットフォーム・リーダーシップ」という理論がある。アナベル・ガワー氏とマイケル・A. クスマノ氏がまとめた、「プラットフォーム」という考え方の原点とも言える理論だ。詳細はアカデミックな話になってしまうので省くが、簡単にまとめてしまうと、プラットフォーム事業者が、そのプラットフォームを成立させる補完事業者をどのように優遇し、あるいは自社が持つ機能と切り分けるのか、いくつかのケースに基づいて解説されている。

 商用映像を扱う動画共有サイトも、典型的なプラットフォーム型のサービスだ。eyeVioを運営するソニーがプラットフォーム事業者、そこに商用コンテンツを提供する権利者が補完事業者という位置づけになる。

eyeVio

ソニー製品だけでなく、TMPGEncなど様々なプラットフォームとの連携にも積極的だった

 プラットフォーム型のビジネスを成立させるには、時には利害が対立する補完事業者との向き合い方が、その成否を分ける一つの要素になる。例えば、iTunes Storeを巡っては、楽曲の収益配分を巡ってAppleと音楽事業者が対立することも珍しくない。AppleはiPodのシェアという後ろ盾と、iTunesという優れたプラットフォームを武器に、音楽事業者と交渉ができる。

 その結果、強いコンテンツを大量にラインナップし、安価にユーザーに提供することを可能にしている。ハードウェアとしてのiPod以上にソフトウェアプラットフォームであるiTunesの持つ重要性は高い。

 それに対して、日本の家電メーカーがハードウェアにバンドルするソフトウェアや連携するWebサービスは、まだおまけ的な位置づけに留まることが多い。コンテンツとハードウェアのビジネスの流れ(商流)が分離されているDVDレコーダーのような既存のモデルに対し、その2つがWebを介して密接につながるモデルでは、この力関係の理解と、プラットフォームへの絶え間ないフィードバック(改良)が欠かせない。

 国内陣営はネットワーク連携型の商品には不可欠な、映像や音楽などの商用コンテンツの調達に苦労しており、また、たとえ調達できても厳しい条件での提供となり、ラインナップや価格競争力で魅力が薄くなるという悪循環に陥っているようにも見える。

 実はこの構図は、先の「プラットフォーム・リーダーシップ」でも、iモードの海外展開を題材に指摘されている。海外進出したばかりのiモードが十分にキラーコンテンツを集められない可能性に言及しており、それは現実のものとなった。

 しかし、eyeVioは先に挙げたように、ハードウェア連携やHD対応などの機能面はもちろん、著作権保護や監視体制などの運営面でも、相当意欲的なサービスだった。集客力のある商用コンテンツの調達に仮に苦労があったとしても、一般のユーザーにはもう少し支持されてもよかったはずだ。それなのに、なぜ、ソニー配下でサービスを維持できるレベルまで利用度を上げることに繋がらなかったのだろうか? そこには別の要因があると言えそうだ。

次ページに続く


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