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eyeVio譲渡 家電メーカー動画配信の勝機はどこに?

2009年04月22日 06時00分更新

文● 松本 淳

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ネットワーク外部性から生まれるUGCを
誰がコントロールするか、という課題

 言うまでもなく、動画共有サイトは、動画が投稿されるところからすべてが始まる。そこでは「ネットワーク外部性」と呼ばれる力が働く。あるユーザーが投稿サイトにeyeVioを選べば、それを見たいユーザーはやはりeyeVioを利用することになり、投稿動画が増えれば増えるほど、その力は強まり、あるい閾(しきい)値を超えると、一気にその利用度が高まるという仕組みだ。電話やファクスなどの加入者数で説明されることも多い。

 そういった力が働く動画共有サイトで投稿され視聴されるUGC(User Generated Contents)は、商用コンテンツと異なり、意図せず著作権や肖像権を侵害してしまっている場合が多い。

 eyeVioでは、商用映像を並列で扱う関係もあり、投稿動画の有人監視を早い段階から行なっていた。この監視体制はある意味、機能しすぎるほどのものだったらしく、著者の周囲でも、TV画面が後ろに映り込んだ映像をそれに気づかず投稿したところ、あっという間に削除されたという話もあったくらいだ。

 YouTubeも商用映像とUGC的投稿映像との類似性を自動的に検出する「フィンガープリント」と呼ばれる技術を採用しており、商用映像の権利者にその結果を戻した上で、それらの動画を削除するか、PR効果を優先してそのまま残すかなどの選択肢が与えられる。

 大きな違いは、補完事業者でもある権利者に判断のチャンスが与えられているか、あるいは、プラットフォーム事業者であるeyeVio側にその決定権があるかという点だ。

 いくらHD対応や機器との連携を高めても、思い入れのある動画が、意図せず削除されてしまっては、ユーザーの落胆につながる。家電メーカーにとってはこれまで経験値の少ない分野であり、商用映像とUGC的投稿映像をどのようにバランス良く扱うかはまだ模索は続いている段階だ。

個人投稿型の動画共有サイトには可能性も

eyeVioを譲り受けることになったスプラシア。オンライン上で動画を編集するサービスも手がける

 ここまで見てきたように、商用コンテンツとUGC的投稿映像を並列に扱うことはサービス運営の難易度を格段に上げる。もちろん、相乗効果が生まれれば、YouTubeにおける角川コンテンツの展開のような収益を上げることも考えられるが(関連記事)、すべての補完業者やプラットフォーム事業者がその恩恵を受けられるとは限らない。

 これまで一括りに語られることも多かった動画配信サイト、共有サイトは、もう少し細分化して考え、捉えていく必要がある。

 個人投稿型の動画共有サイトをとっても、例えば友人の披露宴の模様や、子供の運動会の映像などを、YouTubeやニコニコ動画にアップロードするという使われ方が一般的ではないのも実情だ。アクセス範囲を制限するにはある程度のITリテラシーがないとまだまだ難しいし、関連動画に思いがけずアダルト系の映像が表示されてしまいビックリするということもあるだろう。

ニコニコ大会議2008での夏野氏

 多くの人に見られることを目的とするニコニコ動画的なものと、家族・友人・親族など限られた人に見せることを目的としたサービス(限定公開型)では自ずと求められる仕様が異なってくるはずだ。

 そう考えていくと、今回eyeVioを引き継ぐことになったスプラシアがどのように自社で展開してきたサービスとの連携を図るのか注目される。家庭用ビデオカメラで撮られた映像のほとんどは、限定公開型となるはずのコンテンツだからである。

 ドワンゴの顧問も務める夏野 剛氏は、昨年夏のニコニコ大会議で、新サービス「ニコニコミュニティ」では監視を行なわない、という旨の発言をして注目を集めた(関連記事)。ニコニコミュニティとは仲間内だけで動画を共有できるサービスだ。限定公開型へのニーズが引き続き高いと見られるeyeVioにとっても、ひとつのヒントとなる発言だろう。

 「Yahoo! JAPANによるGyaO買収」について述べた先の記事では、オフィシャル動画と投稿系動画のそれぞれでビジネスモデルが異なることを指摘した。投稿動画もその目的ごとに分類すると、自ずと仕様とビジネスモデルが異なることが見えてくる。先の記事を少し拡張してみよう。


分類 コンテンツ 公開範囲 サービス例 収益源
オフィシャル系動画 プロが制作 公開 GyaO・第2日本テレビなど マス広告・視聴料課金
投稿系動画 アマチュア・プロシューマ制作 共有(=公開・限定公開) ニコニコ動画・YouTubeなど ニッチ広告・プレミア利用料課金
一般家庭・個人 限定公開 eyeVioなど マス広告・サービス利用料課金

 今のところ、この分野では成功例が少ない国内家電メーカーも、その特徴を掴めば、まだ勝機と商機は残っていると筆者は考える。

著者紹介:松本淳

松本氏

ネットベンチャー・出版社・広告代理店等を経て、現在、東京大学大学院情報学環修士課程在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、デジタル方面の取材・コラム執筆、映像コンテンツのプロデュース支援活動を行なっている。米PMI認定PMP・デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツマネジメント修士。



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