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【年末特別企画】バスで“コミケ”は当たり前! キミは“同人バス”に乗ったことがあるか!!

2006年12月31日 05時58分更新

文● 藤山 哲人

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早い!安い!静か!
定期運行深夜バスより快適な同人バスだった!

 栃木県の下館から茂木を結ぶ真岡鐵道は、SLの運行でも有名。そのほぼ中間にある真岡駅から「ありあけ号」は出発する。途中停車駅は、宇都宮、雀宮、石橋、自治医大、小金井、小山、秋葉原の順だ。秋葉原からは「けよりな号」と名前を変え、秋葉原(新橋)→ビックサイト間を1500円で利用できる(栃木県内乗車の場合は、いずれの駅からでもビッグサイトまで2500円)。

22時15分 真岡駅入線(?) 。 ルポ当日は、コミケ2日目と来場者数が少ない日のため、中型バス(定員39名)がアサイン。初日と最終日は、大型2階建てバス(定員60名)となる。定刻の22時30分に乗客4名のを乗せて出発
23時10分 宇都宮駅着。ここ宇都宮では、男女合わせて7名をピックアップ。車内は、記者を含めてオタ話で盛り上がりはじめる。定刻23時30分に発車

 「ありあけ号」は、予約の料金前払い制を採用している。各駅では、名前確認が行なわれての乗車となる。発車時刻に遅れた場合は、放置プレイなので注意。
 大半の乗客は、宇都宮からの乗車になるのだが、なぜほぼ回送状態の4人(当日)で真岡→宇都宮間を運行しているのかをサークル主催者の木村氏に訊ねてみた。すると、

「私ん家の近くだからですよ」

 ん~。ノッケから実に同人指向な回答が! 確かに趣味で運行しているのだから、自宅近所から出発するのがベストではある……。
 車内は全席禁煙でトイレなしだが、途中駅では余裕をみた停車時間となっているため、駅前のトイレに行ったり、タバコを一服したりできるので安心だ。

0時20分 小山駅着。この日は雀宮、石橋、自治医大、小金井からの乗客がいないため通過し、直行で小山に向った。ここではトイレとコンビニ買出し休憩が40分。眠い人は、休憩時間中にスリープモードへ移行している。定刻の1時ちょうどに発車バスのツアー名は「夜明け前より有明な」。先日までTVアニメも放映されていたある有名美少女ゲーからのパクリだ(笑)。アキバからの「けよりな号」は、美少女ゲー独自のタイトル符号圧縮により出力されるもの

 この同人バスだが、ツアー名の札が思いっきり観光バスフォーマットになっている通り、運行は正式なバス会社が行なっている。よってバス会社のドライバーと添乗員が同乗。つまり、みんなでお金を出し合ってバスをチャーターしている「貸切バス」扱いなのだ。サークルは、いわば合宿の幹事のようなもので、みんなから旅費を集めて、それをバス会社に支払うという形態。あくまで幹事役のサークルなので旅行代理店でもない。となると旅行業法の適応範囲外なので、法律的にはホワイトゾーンだ。唯一の問題点は、サークルに対してツアーの催行責任を問えないという点だが、このサークルに限っては「無い」と断言してもいいだろう。なにせいちばん催行したいのは、サークルのスタッフなのだから。
 しかも国土交通省、港湾管理局、警察などの認可は、バス会社任せではなく自分達でするという徹底ぶり。趣味だからと言ってしまえば、それまでなのだが本格的にバスを運行するのが楽しいらしい。また料金を見てもかなり低価格だ。前出の木村氏いわく、ほぼ原価割れという。どうやら赤字になったぶんは、自分達がバスを運行したという趣味にかけたお金と考えているようだ。「趣味のパチンコなら、多少すってしまっても諦めがつく」というアノ感覚らしい。
 その趣味っぷりは、車内でもすぐ見てわかる。車内放送は、運行したいサークルスタッフがマイクを話さない。バス会社の添乗員は、本当に添え者。それだけでなく、ドライバーに細かに道を指示しているスタッフは、服装が同志なだけで、心は従業員なのかも!?

搭乗するともらえる記念乗車証。オリジナルキャラクタが何人かいて、コミケごとにデザインを替えているという凝りよう2時9分 国道4号南下中。小山を出ると消灯し仮眠タイム。コミケ参加者というのは、とてもマナーが正しく車内は静まり返る。国道4号線をひた走るが、道路の状態もよく、車内の機密性も高いため静かで快適だ。高速深夜バスの辛さは、まったくない
上野付近で自動車3台による事故で車線の絞込みがあるもの、難なく渋滞をクリア。すぐそこは秋葉原だ2時50分 秋葉原駅着。ここからバスは「けよりな号」として運行される。アキバのインターネットカフェなどで仮眠を取った10名ほどが乗車して、車内はほぼ8割がた満席の30名程度。30分の時間調整の後、3時20分定刻発車

 コミケ会場は「徹夜はもちろん4時半以前に並んではならない」という掟がある(開場は10時)。しかし、ゆりかもめなどの交通機関が会場に到着するのは5時半。「けよりな号」は、この1時間だけ運転されるアキバ(新橋)→会場のバスなのだ。
 電車の始発が到着するとほぼ10分おきに、数百人のマニアが列をなす。それゆえ4時半から並べば、何千人もの行列をブッちぎれるわけだ。こういった事情もあり、各ツアーバスがこの時間帯に集中して到着するようになっている。まさに1分1秒を争うことになるため「けよりな号」「アキバエクスプレス号」は、信号のつながりや数、大型バスが通行できる裏道を実際に何度も走行してデータ収集。それを元に最速ルートをはじき出しているという。その結果が、ほぼ安定して15分ほどでアキバ→会場を結ぶという結果につながっているのだ。この努力は、やっぱり趣味なのか?乗客へのサービス精神なのかは不明である。

アキバを発車し新橋に向かう「けよりな号」。新橋駅で最後の乗客を乗せ4時10分に発車する
4時29分 終着駅ビッグサイトのロータリーに到着。1分間の車内待機の後、4時半ピッタリに一斉に降車が始まる。後ろの車両は、名鉄観光のツアーバス。「けよりな号」は再び新橋駅まで回送され、5時10分発の車両として運行。この車両は、始発も動き出している時間帯のため料金は500円となる
5時25分 最終「けよりな号」会場に到着。ここでも約20名の乗客を輸送。ビッグサイトは、まさに「夜明け前より瑠璃色な」な空だ。「夜明け前より有明な」ツアーの終了となる

 コミケ当日のゆりかもめや大江戸線に乗車したことのある同志であれば、恐らく次回の夏のコミケから利用してみたくなるだろう。だだいかんせん同人サークルなので、夏に「必ず」運行される保証がない。半年後の祭りのためにも、アキバエクスプレスを運営しているサークル「魔導鉄道 磨来本線」にアクセスして欲しい。

【取材協力】
魔導鉄道 磨来本線
有限会社弘伸

【問い合わせ先】

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