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オンキヨー、インテルのViivに対応した同社初のパソコン『HDC-7』を発表

2006年04月07日 12時00分更新

文● 編集部 小林久

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オンキヨー(株)は7日、米インテル社の“Viiv”プラットフォームに対応した“HD(High Density)メディア・コンピュータ”『HDC-7』を発表した。価格はオープンプライスで5月25日に発売する予定。予想実売価格は25万円前後。月産台数は500台。

HDC-7
HDC-7

HDC-7のプロトタイプは今年1月に米国ネバダ州ラスベガスで開催された“2006 International CES”の会場でも展示されていたが、国内向けの製品は同社のAVアンプと親和性の高いシャンパンゴールドを採用している(米国仕様ではブラック)。筐体はアルミ合金製で、一見パソコンには見えない。従来のパソコンとは一線を画す“オーディオメーカーとしての音質”をセールスポイントとする。「(ハイエンドのAV製品にのみ使用される)“Integra”のロゴを使用してもいいぐらいのクオリティー」とAVC事業本部国内営業戦略部参事の大林忠信(おおばやし ただのぶ)氏は話す。

専用サウンドカード チューナーカード 背面
専用開発したサウンドカードチューナーカードはViXS製のMPEGエンコーダーを搭載背面から見てもAV機器そのもの

本体には『SE-150PCI』をカスタマイズした専用サウンドカードを装備。同軸と光のデジタルオーディオ出力に加え、7.1ch対応のアナログ出力、“VLSC(Vector Linear Shaping Circuitry)回路”を経由する“スペシャル2ch”出力も装備する。VLSCはデジタル信号のパルス性ノイズを低減するオンキヨーの独自技術である。また、AV製品を含めたコンシューマー機器として初めて“ドルビーマスタースタジオ”のロゴも取得。ドルビーヘッドホンへの対応や、2chの音源をマルチチャンネル(アナログ7.1ch/デジタル5.1ch)に変換して出力することも可能になっている。なお、7.1ch出力時にVLSCの機能は利用できない。これはViivの規定の中に、インテルの“HD Audio”規格を満たさなければならないという決まりがあるためだという。

HDC-7はオンキヨー初のパソコンで、カスタム仕様のマザーボードの設計を含め、自社で開発を行なった。AVメーカーのオンキヨーがパソコン市場に参入する理由として大林氏は以下のように話す。

[大林] オンキヨーはサウンドカードを初めとしたパソコン周辺機器の開発には以前から注力しており、あるレベルにまで達したという自負がある。一方で、“iTMS”(iTunes Music Store)に代表される、デジタルコンテンツ配信の市場が急速に立ち上がりつつあり、権利者の理解も進む中、今後は音楽だけではなく映像にもその範囲は広がっていきそうだ。オンキヨーはこれまで“誰もが使える”専用端末の開発を行なってきたが、DRMやフォーマットが急激に変化するデジタルコンテンツ配信には対応しきれない部分がある。このような現状に最も柔軟に対応できるのは汎用性の高いパソコンである。Viivに関しては、昨年インテルから提案を受けたものだが、これは「パソコンをやらざるを得ない」と考えていたオンキヨーの思惑と一致した。
振動対策1 振動対策2
音質対策の1例。共振を防ぐため緩衝材を敷き詰めているほか(左)、テープで振動を抑える工夫も行なっている(右)

オンキヨーでは“中身はPCだが、考え方の基本はAV機器”という姿勢でHDC-7の開発に当たったという。外観の仕上げもオーディオや家電メーカーならではのものとし、ホームシアターやリビングとも調和するようにした。また、音質を低下させる空冷ファンや光学ドライブの振動を防ぐために本体シャーシーに防振材の追加やテープ貼付などの工夫を施したほか、騒音レベルもDVD再生時で25dBに抑えた。ノイズの少なさを示すS/N比はステレオ出力時に110dB(IHF-A測定基準)。DVD Audioの再生に標準で対応するほか、パソコンとしては珍しいFMチューナーも内蔵している。

ロゴ
ドルビーマスタースタジオロゴを取得。フロントの目立つ位置にViivロゴが貼られているが、今後AV機器ライクな製品が増えてくることを考えてくると、インテルには、製品の外観に調和したロゴの取り扱いなどにも多少気をつかってほしいという気もする

テレビチューナーはアナログ地上波のダブルチューナーを装備。カナダViXS Systems社製のMPEG-2エンコーダーを搭載している。ただし、本体にはHDMI端子はなく、映像出力はVGA端子(ミニD-Sub 15ピン)、D4端子、DVI-D端子などを経由することになる。Blu-ray Discなどの次世代DVDドライブも搭載していない。この点に関して、生産技術本部第1技術部NT課の青木才受(あおきさとし)氏は「テレビは凝っているが、しかしサウンドはちょっともの足りない製品が多い」と、市場によくある“テレビパソコン”とは異なるカテゴリーを狙った製品であることを示唆した。青木氏は「(HDC-7を)汎用機が特徴を持ってきたことのひとつの形としてとらえてほしい」と話す。

オンキヨーは、無線LANや有線LANを経由してマルチメディアコンテンツをやりとりする“Net-Tune”対応の周辺機器を市場投入してきたほか、“e-onkyo music store”という音楽配信サービスも昨年開始した。e-onkyo music storeでは、CDを上回る24bit/96kHzの楽曲配信が行なわれている。Viivを提唱するインテルも自社のサイト内でViivマシン用のページを設け、Viivマシン専用の動画配信などを展開している。

オンキヨーでは、Windows XP Media Center Editionの10フィートGUIを利用して、これらのコンテンツを利用できる新しいタイプのプレーヤーを作りたいという意図を持っているようだ。HDC-7は量販店のパソコンコーナーで販売される予定だが、同社の単品コンポーネントと組み合わせた試聴スペースも用意していくという。月産500台ということもあり、ニッチ市場を狙ったものになるが、リビングパソコンとしての提案に加え、パソコンでも音質にこだわるマニア層への訴求も進めていく考えだ。

振動対策1 振動対策2
オンキヨーの試聴室で、実際に音を聞くこともできた。2chのオーディオの再生はプリメインアンプの『A-977』と『D-312E』。映像コンテンツの再生はマルチチャンネルコントロールアンプの『RDC-7.1』と7.1chパワーアンプの『RDA-7.1』を『D-302E』とサブウーファを組み合わせた。ステレオ再生はアナログ接続、マルチチャンネル再生はデジタル接続で行なった。ステレオ再生の品質は、A-977より上のクラスの製品と組み合わせても十分なものだという

大林氏は「これまで音にこだわるためには、自作するしかなかったが、ここまで徹底したパソコンは作ることは難しかったはず」とコメント。音響メーカーのノウハウをつぎ込んだ新しいタイプのパソコンの完成に自信を示した。

HDC-7の主な仕様

HDメディアコンピュータ HDC-7
Pentium D 820-2.8GHz、1GB(PC2-4200)、約400GB HDD
DVD+R DL対応スーパーマルチドライブ、インテル945G Express
地上アナログチューナー×2、FMチューナー
IEEE 1394×3(4ピン×1、6ピン×2)、USB 2.0×4、メモリーカードスロット
10/100BASE-TX、シリアル(リモートコントロール用)、RI端子×2(システム連動用)
本体サイズ:幅435×奥行き413×高さ116mm、重量:約9.8kg
Windows XP Media Center Edition 2005
トラックマウス付き赤外線ワイヤレスキーボード、赤外線リモコン付属
市場想定価格:25万円前後、5月25日出荷予定

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