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DNS技術者のための“DNS DAY”が開催

2005年12月07日 17時45分更新

文● 編集部

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パシフィコ横浜で開催されているインターネットの基盤技術や最新動向を学ぶ技術者向けのイベント“Internet Week 2005”では6日、DNS(Domain Name System)関係者を対象にした“DNS DAY ~ 安全なドメイン管理 ~”を開催した。このカンファレンスは、Internet Weekの主催者でもある(社)日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)によるもの。DNSはインターネットにおける重要な基盤技術のひとつで、その利用範囲も年々広がっている。今年は、安全な運用を行なうための話題を中心に据え、(株)パワードコムの石田慶樹氏の司会により発表が行なわれた。

石田氏
パワードコムの石田氏

■ DNS運用レポート

プログラムの前半“DNS運用レポート”は、(株)日本レジストリサービス(JPRS)の白井出氏による“JP DNSレポート”で始まった。この中で白井氏は、JPドメイン名は順調に増加していることや総DNSクエリー(問合せ)数も同様に増えていること、クエリーの分析などについて説明を行なった。全体として見れば、傾向は去年と変わらないこと、JP DNSを支えているDNSサーバーのうちのひとつ“c.dns.jp”がサービスを停止したことはあったが、JP DNS的には平穏な一年であったとしている。

白井氏
JPRSの白井氏

続いての発表は、WIDEプロジェクトの加藤朗氏による“Root DNSサーバ”報告。この中で加藤氏は、ルートDNSサーバーにおいてIP Anycastの実装が増えていることや、IPv6の進捗などに関して説明を行なった。

加藤氏
WIDEプロジェクトの加藤氏

次の“DNS最新動向”では、(株)インターネットイニシアティブ(IIJ)の小林直氏による“SPAM対策”と、JPNICの小山祐司氏による“DNSQCレポート”の発表が行なわれた。

小林氏
IIJの小林氏

IIJの小林氏のスパムメール対策は、スパムメール対策がなぜ必要かという説明をしたうえで、DNSのリソースレコードをどう書けばいいかといったことを解説した。現状のスパムメール対策の有効性には限界があるが、少なくともドメイン名の詐称を防ぐことはできる。結果として、スパムメールを出しにくくしたり、自ドメインを語った大量のスパムメールが出て加害者として誤認されることは避けられる、また、全体として対応が進めば未対応の場合にメールが送りにくくなることが予想されるため、これから対応がどんどん進む分野だと思われる。

小山氏
JPNICの小山氏

JPNICの小山氏の発表は、DNSの健全化を目的としたDNSQC活動の一環として実施した逆引きDNSサーバーのlameチェックに関する報告である。lameとは、DNS的には「ドメイン名を管理する役割を持つ権威DNSサーバーが適切に設定(運用)されていない状態」と定義され、改善が求められているもののひとつである。この中で、JPNICが管理している約7万件の逆引きDNSの内容を調べたところ、約2割に相当するものがlameと判定されたことなどが報告された。



■ 安全なドメイン管理

プログラム後半の“安全なドメイン管理”では、今年起こったドメイン名乗っ取り問題などの事例を受けた形で、不適切なドメイン名管理がどれだけ危険であるかという話題を中心に進められた。

最初に発表を行なったのはJPRSの米谷嘉朗氏。“不適切なドメイン名管理が招く脅威”と題して、ドメイン名の乗っ取りが起きる仕組みから、実際の事例を一部紹介し、JPドメイン名におけるこれまでの取り組みなどが紹介された。基本的にドメイン名の管理はドメイン名登録者の責任であるが、“レジストリ”としてできることはきちんと検討していくということも示されている。具体的には、情報提供、注意喚起、実態調査、危険性解消の働きかけなどを積極的に実施していく予定としている。また同時に、JPドメイン名の規則を一部改訂し、来年の1月から存在しないJPドメイン名のDNSサーバーへの委任削除を実施する予定であることも同時に報告された。

米谷氏
JPRSの米谷氏

続くJPNICの小山氏は、“レジストリとしてのLameチェックの重要性”と題して、lameについての具体的な解説を追加し、IRIの動きを紹介した。RIR(Regional Internet Registry)とは、特定地域内のIPアドレスの割り当て業務を行なう地域インターネットレジストリであり大きな影響力を持つ。JPNICとしては、今後の方針としてRIRの方針に同調していきたいことを発表している。これに関係して、JPNICとして定期的にlameチェックを行ない、lameがあった場合にはWhoisに“Lame”マークを表示して、当該DNSサーバーへの逆引き委任を一時停止することなどを検討していることなどが伝えられた。



■ パネルディスカッション

DNS DAY最後のプログラムは、有限責任中間法人 JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)の鎌田敬介氏、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(株)の吉村知夏氏、JPRSの米谷嘉朗氏、JPNICの小山祐司氏の4名によるパネルディスカッション。この中で各氏は、次の発表を行なった。
JPCERT/CCの鎌田氏は、“JPCERT/CCの国際連携について”という題で国際的なインシデント対応がどのように行なわれているかを説明した。
NTT Comの吉村氏は、“OCN Lameクエリの現状など”と題して、OCNでの現状や対応などに関する説明を行なった。
JPRSの米谷氏は、“ドメイン名の更新を忘れると”という題でドメイン名の更新を忘れたことでどのような問題が起こったかを実例を紹介しながら説明した。
JPNICの小山氏は、“Whois登録の正確性”という題で、Whoisの目的やその内容を正確に維持する必要性を説明した。

パネルディスカッションの模様
パネルディスカッションの模様

その後の質疑応答では、Whoisの記載項目で活発な意見交換が行なわれたり、毎年話題になるlame問題については来年あたりでBoF(Birds Of a Feather)を開催してはどうかといった提案が行なわれるなど有意義な形で終了した。

インターネットの基盤を支える技術としてのDNSは今後ますます重要になる。今後も引き続き注目していくべきだろう。

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