デュアルコアOpteronの最上位品『デュアルコアOpteron 875』 | 日本AMD 代表取締役社長の堺和夫氏 |
日本エイ・エム・ディ(株)(以下AMD)は22日、東京都内にて新製品説明会を開催し、同社初のデュアルコアCPU“デュアルコア AMD Opteronプロセッサ”と“AMD Athlon 64 X2(アスロン ロクヨン エックスツー)デュアルコア・プロセッサ”を発表した。発表会後の別会場では、デュアルコアOpteronを搭載するメーカー各社の新製品が展示され、本格的なデュアルコアCPU時代の到来を告げた。なお両CPU自体の仕様や価格については、こちらの記事を参照のこと。
発表会の開かれた22日は、同社初の64bit CPU“Opteron”シリーズが発表されてから、ちょうど2周年に当たる。オープニングスピーチで壇上に上がった同社代表取締役社長の堺和夫氏は、「当初から2周年には、ぜひデュアルコア製品を発表しようと考えていた」と語り始め、「AMDのデュアルコアは“真性”のデュアルコアプロセッサー。デュアルダイでもデュアルCPUでもない」として、デュアルコアCPU実現のために異なるアプローチを取ったライバルの米インテル社を皮肉り、AMD64アーキテクチャーは設計の最初からマルチコアを考慮していたと、設計思想の優秀さをアピールした。またグローバル企業2000社のトップ100社のうち、約55%がAMD64ベースのシステムを導入したとして、過去にAMDが苦手と言われたサーバー&ワークステーション分野での好調をアピールした。
AMD64ベースのシステムを導入した国際的企業/研究期間の例。苦手と言われたエンタープライズ分野にもAMDのCPUはしっかりと根付いた |
米AMD社 グローバル・エンタープライズ/マーケティング&事業開発ディレクターのブルース・ショー氏 |
続いて米AMD(Advanced Micro Devices)社 グローバル・エンタープライズ/マーケティング&事業開発ディレクターのブルース・ショー(Bruce R. Shaw)氏により、デュアルコアOpteronとAthlon 64 X2の特徴についての説明が行なわれた。詳細については先の製品発表の記事を参照していただくとして、ショー氏が強調した同社のデュアルコアCPUの利点は以下の3点に集約される。
- デュアルコア化によるパフォーマンス向上
- デュアルコアOpteron 275の場合、シングルコアの既存のOpteron 252(シングルコアの最高性能品)を約70%も上回る性能を発揮。
- 既存のシステムとの互換性
- デュアルコアOpteronは940ピン、Athlon 64 X2は939ピンの既存ソケットに装着可能。熱設計時消費電力(TDP)も既存CPUと同等(95W)に収められているので、マザーボードのBIOSをアップグレードすれば、既存システム(マザーボード、電源、ヒートシンク、OS)にそのまま装着して使用できる。これによりデュアルコアCPUシステムへの移行コストを低減。
- 消費電力あたりのパフォーマンス
- 性能が向上しているにも関わらず、TDPは同等の水準に抑えられているため、消費電力や発熱を増やすことなく、コンピューターの能力を増強できる。特にデータセンターや大規模なクラスターシステムなどでは重要な要素。
ショー氏が示したデュアルコアOpteronとシングルコアOpteronのパフォーマンス比較の例。デュアルコア版は約1.7~1.87倍の性能向上を示している |
デュアルコアOpteronに遅れて、6月に製品出荷が行なわれる予定のAthlon 64 X2については、その利点についてショー氏は「ホーム・コンシューマーユーザーには、よりリッチなマルチメディア体験を提供する」と、特にデジタルコンテンツの体験を向上させるとアピールした。また同社のデスクトップ向けCPU(Athlon 64/X2/FX、Sempron)の住み分けについて、最も高クロック動作が可能なAthlon 64 FXは、シングルスレッドのゲームを最高性能で動作させられるとして、ハイエンドゲーマー向け“ゲーム・セグメント”に、Athlon 64 X2はより幅広い用途での性能を求めるパワーユーザー向け、Athlon 64は一般的な個人・法人ユーザー向けと定義した。もっとも現実にはモダンな3Dゲームは、複数スレッドを利用して動作していることが多く(ゲーム本体以外にもOSのサービスやデバイスドライバーも動作する)、クロック周波数に大きく依存した設計でなければ、Athlon 64 X2も3Dゲームで優れた性能を発揮できると予想される。
発表会にはゲストとして、ソフトウェアベンダー側からの講演も行なわれた。ゲストとして登壇したマイクロソフト(株)業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部長の鈴木和洋氏は、5月中旬以降に登場予定の64bit版OS“Windows x64ファミリー”への取り組みを説明した。鈴木氏はWindows Server 2003の各エディション(Standard、Enterprise、Datacenter)とWindows XPの64bit版(Professional x64 Edition)について、32bitアプリケーションと64bitアプリケーションの共存が可能なうえ、32bitアプリケーションのパフォーマンスも改善されるとして、64bit環境へのスムーズな移行を可能にするとした。鈴木氏によれば、独SAP社のERPソフトウェアの64bit版では、+17%のユーザー数を同時処理可能になったなど、64bit OSとアプリケーションのパフォーマンスの良さをアピールした。
マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部長の鈴木和洋氏 |
64bit版が提供されるWindows Server 2003とWindows XP Professionalの一覧。Windows XPの64bit版では、2プロセッサー/128GBメモリーまでサポートされる | 64bit版の特徴と、パフォーマンス向上の例(右下表) |
また鈴木氏はマイクロソフトのソフトウェアは、CPU内に含まれるCPUコア数に関わらず、1つのCPUパッケージ(ソケットと表現)ならば1プロセッサーと見なすと表明。マルチコアCPUになったからといって、ソフトウェアライセンス数も倍必要になることはないとして、マルチコアCPUの普及を援護する姿勢を示した。
またこのほかにも、(株)大塚商会の子会社でソフトウェア開発会社の(株)OSK 専務取締役の田中努氏から、同社の企業向けビジネスポータルソフト『EasyPortal』でのパフォーマンス向上の例が紹介された。シングルコアOpteron/Windows Server 2003 32bit版と、デュアルコアOpteron/Windows Server 2003 64bit版での検索処理速度比較では、22.34秒かかっていた処理が9.68秒まで短縮されるなど、パフォーマンスが大きく向上していることを示した。
OSKの『EasyPortal』がデュアルコア+64bit OSで優れたパフォーマンスを示したとする比較表 |