夏といえば、スポーツやバラエティ、ドラマなど、さまざまジャンルの特別番組が数多く放送されるシーズンだ。特別番組は再放送される可能性が少ないだけに、興味のあるものについてはしっかり録画しておきたい。ただ、EPG(電子番組表)があったとしても、大量の番組の録画予約はなかなか骨の折れる作業だ。また、本当は興味のある番組なのに数ある情報の中に埋もれてしまい、ノーマークだった……なんてこともあるだろう。
そこでさまざまな番組を逃さず確実に観る方法として、各放送局で放送されているTV番組を漏らさず録画する“まるごとTVサーバ”を構築してはいかがだろうか。
最近では2番組同時録画が可能な「Wチューナカード」が人気で、製品によってはさらに複数番組の録画に対応可能なものも存在している。例えばPCIスロットに3枚のWチューナカードを接続することで6番組同時録画も可能な製品もある。
であれば、複数のTVチューナひとつに対して放送局1局を割り当て、すべてのTVチューナにおいて放送の開始から終了まで録画処理を実行するとどうだろう。これならすべての番組をHDDに保存できるので、録画のし忘れなど一切気にすることなくTV番組を存分に視聴できる。
1週間分溜めるなら
MPEG-4で保存
このサーバの作成におけるポイントは、TVチューナカードの選択だ。チューナカードは、先に述べたように放送局1局あたり1つのチューナを割り当てる都合上、複数枚差し対応であることが重要となる。PCに搭載できるTVチューナの数は、メーカー・製品によって異なるが、だいたい最大で6チューナまでとなっている。東京のようにNHK・民放のキー局、ローカル局とある地域ではチューナの数が足りないために“まるごと”とはいかないが、それでも主な局はカバーできる。映像を複数ストリーム同時に扱う関係上、高速・大容量のストレージも必要だ。ビデオビットレートが6Mbps(CBR)の映像を1時間録画すると、そのデータサイズは約2.7GB。仮に1日録画したら、そのサイズは約63.8GBにもなる。6チューナ構成であればこれが6倍になるので、そのサイズは1日で383GBにもなってしまう。これを踏まえると、少なく見積もっても500GB以上、データを3日間保存することを考えたら1TBオーバーのHDDユニットが必要だ(コラム参照)。
つまり、このままだとあまり現実的ではないわけだが、PCのメリットとして、より使用容量が少なく済むMPEG-4での記録ができる点がある。例えばビデオビットレート1.5MbpsのMPEG-4で保存すると、1時間のファイルサイズは683MB。6番組あわせても4.1GBでDVD1枚に収まる。またHDDが1TBあれば、1週間分(687.7GB)は余裕で収まるので、あとで番組をチェックして、残す番組と消す番組を選べるのだ。
最後にCPUパワーはかなり必要だ。次ページ以降で最新のWチューナカードについて紹介するが、ここで紹介する製品すべてがMPEG-2のハードウェアエンコーダを搭載している。MPEG-2で録画する分にはそれほどマシンパワーは必要ないが、MPEG-4に変換(トランスコード)する場合は相応にCPUに負荷がかかる。それを最大6チューナ分こなすとなると、デュアルコアCPUを導入するか、もしくはトランスコードのみ別マシンに作業させる必要があるだろう。
6番組録画時のHDD消費量
ビデオ | フォーマット | MPEG-2 | MPEG-4 | ||
---|---|---|---|---|---|
ビットレート | 8Mbps(CBR) | 6Mbps(CBR) | 3Mbps | 1.5Mbps | |
オーディオ | フォーマット | MPEG-1 LayerII | MPEG-1 LayerIII | ||
ビットレート | 256kbps | 128kbps | |||
時間 | 1時間 | 21.1GB | 16GB | 7.9GB | 4.1GB |
1日 | 505.8GB | 383.2GB | 188.7GB | 98.2GB | |
1週間 | 3540.4GB | 2686.8GB | 1321.2GB | 687.7GB |
6チューナ同時に録画した場合に消費されるHDDスペースはこのとおり。最近1TBオーバーのHDDボックスが注目を集めているが、MPEG-2で録画し続けた場合、1TB以下では2日間しか録り溜められない計算になる。