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【特別企画】商工会の記帳システム『ネットde記帳』

2003年12月22日 18時45分更新

文● Linux magazine編集部

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■低コストで、使いやすいシステム

 全国連としては、まず従来のPCにインストールして使う記帳システムの見直しから入った。PC上で使うソフトウェアは、どうしてもOSベンダーのバージョンアップに対応する必要がある。PCベースの記帳システムを使用していた1995年から2001年の間に、PC用OSであるWindowsは4回のバージョンアップがあった。バージョンが変わるたびに、ソフトウェアの動作確認と対応が必要だったのである。

 なるべくOSに依存しない記帳システムとして、ソフトウェアはサーバ上で稼動させて、各商工会の記帳業務はWebブラウザを用いて行う、ASP形態の記帳システム「ネットde記帳」の採用を、全国連が主催する「標準システム検討委員会」で決定した。ASP化によって、システムのメンテナンスの手間はサーバだけで済むからだ。

ネットde記帳の入力画面
【画面1】ネットde記帳の入力画面。ネットde記帳は、ASP形式で提供される記帳システム。Webブラウザから入力するため、OS依存の問題はない。メンテナンスはサーバだけで済むためコストが抑えられる

 導入した「ネットde記帳」は、アプリケーションサーバにWebSphereを採用し、データベースはDB2を用いており、Windows版とLinux版がある。開発を担当したビジネスオンラインは、従来はWindowsベースでの開発を主にしていた企業で、今回、全国連からの依頼により、初めてLinuxで開発したという。

 Linux版のシステムは、第1弾として福島県商工会連合会に導入され、福島県連に参加する2400の事業者がこの記帳システムの恩恵を受けている。全体として3500ユーザー程度までサポートできるシステムとして設計されている。クラスタリング構成のWebアプリケーションサーバ3台と、冗長構成をとるデータベース2台からなるシステムだ。

 現在は、記帳業務は商工会が代行しているが、ASP形式であるため、入力作業業務を小規模事業者・会員に引き継ぐことも簡単にできる。小規模事業者への記帳入力の教育・指導により事業者が直接記帳入力できるようになれば、商工会側の人的資源を集中して、集めたデータの分析や経営指導に向けることも可能になる。

商工会の記帳システム
【図1】商工会の記帳システム。従来の記帳システムは、PCにインストールしたソフトウェアを用いていた。今後ネットde記帳によるオンライン入力に変われば、PCさえあればOSには関係なく入力できる。現在記帳入力は商工会が代行しているが、将来的には会員が直接入力する方向で検討している

■オープンソースのメリット

 今回「ネットde記帳」を開発した、ビジネスオンライン社の藤井博之取締役は、Windows版もLinux版も価格は変わらないという。確かに、オープンソースだろうと、プロプラエタリなソフトウェアだろうと、開発費の大部分が人件費であることを考えれば、価格が同じというのもうなずける。

 異なるのは、LinuxはOSのバージョンアップの影響を受けにくい点にある。Windowsでは、OSサポートを打ち切られたら、その後は保守できない。Linuxの場合は、技術さえあればひとつのバージョンを使い続けられる。システムを大きな技術的変更なしに長期間使える場合、安定化によるサポートコストの減少というメリットも見込める。

 商用OSでは、OSベンダーの収益構造に依存してバージョンアップが進むため、このようなシステムの安定化を待てない。
 全国連では、今回福島県連で導入したネットde記帳を、全国的に展開していきたいと抱負を語っている。

 小規模事業者への記帳入力の教育は、言うのはたやすいが、実際に行うとなるとひと筋縄ではいかない問題でもある。しかし、長く安定して使えるシステムは長期の事業者教育という面でも有効なのである。

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