マイクロソフト(株)と日本ヒューレット・パッカード(株)は4日、ミッションクリティカルシステムの分野において、.NET対応プラットフォームと32bit/64bitのIAサーバーの組み合わせによる包括的な協業を日本市場で行なっていくことを発表した。またこの日、両者協業による新たなサポートセンター“ジョイント・ミッション・クリティカル・サポート・センター”が設立された。
日本におけるマイクロソフトと日本HPの協業の内容と流れ。市場開拓・営業活動から保守・運用サービスにまでおよぶ |
今回の発表は、2002年9月23日に発表された米マイクロソフト社と米ヒューレット・パッカード社の全世界的な協業体制に基づくもの。両社米国本社の発表では、
- 両社で5000万ドル(約600億円)超の投資を行なう
- 両社共通のビジネスゴールを設定する
- 選任チームを両社で編成する
- HP内の3000名を対象に.NETプラットフォームのトレーニングを実施する
といった内容が盛り込まれている。
日本市場においては、世界水準から見て依然高いとしているメインフレームなどが主流とっているミッションクリティカルシステムの分野への進出に特に注力し、マイクロソフトの“Windows Server System”や“Microtosoft Office System”、“Visual Studio .NET”シリーズなどの.NETプラットフォームと、日本HPの“HP ProLiant”“HP Integrity”といった32bitおよび64bitのIAサーバー製品、システム構築やサポートサービスとを融合し、ビジネスの変化に即応するシステムの機動性とコストの削減とを提供し、メインフレームからWindowsプラットフォームベースのIAサーバーへのシステム移行を推進するとしている。
ミッションクリティカルシステム分野における両社の共同支援体制 |
両社は協業分野を大きく“ITインフラ”“ビジネスソリューション”の2つにわけ、両分野で合計11のソリューションをターゲットとしてビジネス展開を行なうという。現段階で特に注力する分野は、
- Windows NT 4.0マイグレーション
- 『Windows NT 4.0』から『Windows Server 2003』への移行促進
- Windowsネットワークコンソリデーション
- Windowsネットワークの統合促進、“Active Directory”の導入促進
- コラボレーション&コミュニケーション
- “SharePoint”関連製品およびExchangeサーバーの導入促進
- エンタープライズポータル
- 『Windows Server 2003』と“SharePoint”による企業内ポータル設立の促進
- .NET対応基幹アプリケーション
- 各業種の基幹業務アプリの.NET化を推進
の5分野。
“ジョイント・ミッション・クリティカル・サポート・センター”の体制概念図。センターは日本HP内に設置されるが、両社のエンジニアが常駐する体制が取られる |
この日設立された“ジョイント・ミッション・クリティカル・サポート・センター”は、Windowsベースのミッションクリティカルシステムの安定稼動を日本HPとマイクロソフトの両社が支援するサポートサービスで、日本HPの荻窪事業所内に開設された。現在の人員は10名で(9月をめどに50名体制で本格稼働予定)、日本HPおよびマイクロソフトのエンジニアで構成される。障害対応だけでなく、システムの稼働状況をリモートで監視し、障害発生やパフォーマンス低下を未然に防ぐ、“プロアクティブサポート”(予防保全サポート)に重点を置くものだという。このサポートセンターは、マイクロソフトのサポートエンジニアが他社のサポートセンターに常駐する日本で初めてのケースで、日本HPのエンジニアを米マイクロソフトのサポート部門に派遣する予定もあり、両社間の人材交流を図りその成果をサポートに活かしていくという。
具体的なサポートメニューは
- “サポートプラス”“サポートプラス24”
- システムの可用性を高めるハードおよびソフトの総合的なサービス。“サポートプラス24”は24時間/365日対応。
- “プロアクティブ24”
- 使用ハードおよびソフトの総合的な監視を行なう。エンジニアによるシステム運用と技術に対する支援を行ない、予防保全サービスとして提供される。24時間/365日対応。
- “クリティカルサービス”
- アカウントサポートチームを結成し、予防保全サービスを提供
の3通り。これらのサポートサービスは、通常の日本HPのサポートメニューとは別契約にて提供される。
今回の記者会見に出席した両者の首脳陣。左から日本HP・HPサービス事業統括副社長の河合 聰氏、日本HP・代表取締役社長の樋口泰行氏、マイクロソフト・代表取締役社長のマイケル・ローディング氏、マイクロソフト・エンタープライズビジネス担当取締役の平井康文氏 |
この日の発表にあわせ、マイクロソフトと日本HPは都内にて記者発表会を開催し、両社社長および担当取締役が協業の背景と協業の詳細の説明を行なった。
マイクロソフトの代表取締役社長兼米マイクロソフト・バイスプレジデントであるマイケル・ローディング(Michael Rawding)氏は、前述した2002年9月の全世界におけるマイクロソフトとHPの協業体制確立についてや、それを受けて米国で実際に行なわれた両社協業による主な導入事例を紹介。代表的な例として、複数のサーバーに分散していた機能を1つのサーバーに統合し、空いたサーバーに別の業務システムを導入した時計製造大手の米タイメックス社、“.NET Webサービス”を利用したモバイル環境(端末にはHPの“Pocket PC”を使用)向けの業務アプリケーションを導入した食料流通大手の米ゼネラル・ミルズ(General Mills)社を取り上げた。また、今回の協業については「両社共通の強みを日本市場で活かしたい」と述べている。
一方、日本HPの代表取締役社長の樋口泰行氏は、「(グローバルスタンダードを目標として掲げるHPにとって)マイクロソフトはほかに考えられないパートナーであり、相互補完的な関係のパートナー」と述べた。実際の取り組みとしては、前述のサポートセンター開設のほか、IAサーバー製品、ストレージ製品に対する積極的かつ継続的な投資や、“マイクロソフト認定ソリューションデベロッパー(MCSD)”資格取得や“.NETアーキテクト”育成を中心としたエンジニア教育、システム検証/構築/カスタマーサポートを支援するファシリティーの充実といった施政を行なうとした。また、質疑応答の中でHPのWindowsプラットフォーム以外のサーバー製品に関する事業との比重についての質問に答え、特にどれかひとつのプラットフォームだけに特化をすることはないとしつつ、3年後をめどにHP-UXプラットフォームとWindowsプラットフォームの取り扱い比率が同水準になるよう、Windowsプラットフォームでのビジネスを拡大していくと述べた。