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「あくまでも中立的な調査です」──総務省の「セキュアOSに関する調査研究」担当者インタビュー

2002年12月05日 08時52分更新

文● 編集部

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総務省は、「セキュアOSに関する調査研究」費用5000万円を盛り込んだ来年度概算要求を行なっている。この「セキュアOS」については、以前河野太郎氏へのインタビューでもご紹介したが、調査研究を行なう組織の規模や具体的な調査内容などについて、実務を担当している総務省 情報通信政策局 情報流通振興課の河内達哉氏に話を聞いた。

総務省 情報通信政策局 情報流通振興課の河内達哉氏
総務省 情報通信政策局 情報流通振興課の河内達哉氏。新聞社など、ほかのメディアからの取材も多いという。マイクロソフトからも、今回の調査研究についての問い合わせを受けたとのこと。「河野議員が聞いたのとは違うと思いますが……。あちらには“Shared Source”の取り組みを説明してもらったりしました」という。

自民党「e-Japan重点計画特命委員会」の申し入れがきっかけ

河内氏によれば、今回「セキュアOSに関する調査研究」の背景となったのは、

  • 自民党「e-Japan重点計画特命委員会」の申し入れ
  • 海外のオープンソースソフトウェア導入の動き

であるという。自民党「e-Japan重点計画特命委員会」は8月1日に、「電子政府推進に関する申し入れ」を行なっている。このなかで「セキュリティ対策強化の重要性を考慮し、オープンソースOSの開発・導入を推進すること」が挙げられている。また、中国やドイツなど、各国の政府機関でオープンソースのソフトウェアを導入する事例があることなどが直接の背景だという。「海外事例の蓄積を待たずに日本で先行して議論することにはならなかったのか」と質問すると、「この件に関して、たまたま日本の役人の対応が遅かったという批判があるのならば、甘んじて受ける」(河内氏)との回答を得られた。

省庁再編が行なわれる以前、旧郵政省時代にも、セキュリティをテーマにした「情報通信に係るセキュリティ保護に関する検討会」が設けられ、平成12年11月付けで報告書を出している。しかし、今回の調査研究はあくまでOSを対象としたものであり、関係はないという。また、6月18日に首相官邸のIT戦略本部が発表した「e-Japan重点計画─2002」でも、特別に項目が用意されているわけではなく、直接的な関係はないそうだ。

調査研究会の規模は?

来年度予算が成立し、正式に「セキュアOSに関する調査研究」に対する予算が認められた場合、具体的にはどの程度の規模で調査研究を行なうことになるのだろうか。

河内氏によると、一般的に行政府が行なう調査研究会は15人から35人程度の規模になることが多いといい、今回の調査研究会のメンバーについてもそのくらいの人数になるだろうとのことだ。構成メンバーについては、学識経験者のほかに、ハードウェアやソフトウェアのベンダー、SI企業などから募るようだ。なお、河内氏が特に強調していたのは、あくまでも中立的な調査を行なうという点だ。そのため、必ずしもオープンソースに関わる開発者だけでなく、非オープンソースのソフトウェア開発者もメンバーに加えられれる。「当然、Microsoftさんにはお声がけする」(河内氏)ことになる。

何を調査するのか

河内氏によれば、この調査研究では、オープンソースのOSと非オープンソースのOSについて、メリットとデメリットを中立的に評価するのだという。具体的には、先に紹介した調査研究会を実施し、公的部門でのオープンソースOS導入事例や実態の調査、セキュリティ侵害事例のOSに着目した分析と評価、公的部門へのオープンソースOS導入に伴う課題の検討を行なうとしている。

「たとえばセキュリティ面や運用面、コスト面などさまざまな観点から、メリット、デメリットについて中立的に評価をする」(河内氏)ことが今回の調査研究の目的であり、従って、「最終的なアウトプットのスタイルとしては、あくまでメリット、デメリットの論点整理のようなものになります。どっちがいい、どっちが悪いというような形のものは、我々としては出しようもないし出すべきではない」(河内氏)と考えているという。

これまでは、各システムについて、問題があった場合には個別に“監査”を行ない、問題の箇所にパッチを当てるなどの対応がなされていた。そのため、霞ヶ関で利用しているシステム全体に関する調査といったことは行なわれていない。河内氏自身、「恥ずかしい話ですが、霞ヶ関で現在どれだけのサーバが稼働していて、その構成がどうかといった正確な数字を誰も持っていないのです。ほとんどWindowsらしい、という話をちらっと聞いた程度です」(河内氏)という。今回の調査研究が、政府全体のシステムに対する最初の本格的な調査となるようだ。

なお、調査結果である報告書は、いずれ何らかの形で一般にも公開する予定だといい、政府関係者だけでなく、民間でも参照することが可能になるそうだ。


実際に調査研究が始まるのは来年度予算が正式に成立したあとになるため、現状ではこれ以上のことは決まっていないようだ。なお、今後の予定については、河内氏によれば、来年度いっぱいで一定の調査報告書を出すが、来年度以降も何らかの形で継続されることは「当然あり得る」とのことだ。

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