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Linux Conference 2002レポート

2002年09月27日 06時17分更新

文● 編集部

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今回のLinux Conferenceでは、ソフトウェアのライセンスや商標といった権利関係についてのセッションも行なわれた。

重要なのは「コピーレフト」

GNU.orgのウェブマスターとしてGPLやLGPL、GNU FDLの翻訳などでも知られる、Debian official developerの八田真行氏は、GUN GPLに実装されている「コピーレフト」という概念について改めて紹介している。

Debian official developer 八田真行氏Debian official developer 八田真行氏

八田氏は「コピーレフト」と呼ばれるようになった概念のポイントとして、以下の5点を挙げた。

  • パブリックドメインではない。著作人格権を放棄するものではない。
  • 改変と再配布は自由である。複製権、頒布権としての「コピーライト」は否定される。
  • 再配布の際により強い制限をすることは許されない。
  • 「独占的」な著作物という概念とは対立するものである。
  • 改変と再配布が自由であることが保障され続ける。

また、BSDライセンスなど、「コピーレフト」ではない「フリーソフトウェア」というものもあり、同じようにGNU GPLも「コピーレフト」を実装したライセンスに過ぎず、本当に重要なのは「コピーレフト」という抽象化、一般化された概念であるとした。

そのうえで、「コピーレフト」をソフトウェア以外の分野に適応する可能性についても触れ、「OpenCreation Public Licence」のような試みが成功するためには、GNUプロジェクトでいうEmacsやGCC、Linuxのようなキラーコンテンツが現われない限り普及は困難ではないかと語った。また、「コピーレフト」の今後についても、持続可能なモデルの提示が必要ではないかと問題提起した。

『Linux』の商標権

日本Linux協会でLinux商標調査を行なった、日本Linux協会理事の姉崎章博氏は、商標登録審査の概要と『Linux』の商標権についての調査結果を報告した。

日本Linux協会理事 姉崎章博氏日本Linux協会理事 姉崎章博氏

そもそも商標が登録されるまでには、特許庁への商標登録の出願、審査があり、問題がなければそこで登録がなされる。審査が拒絶された場合には意見書や補正書を提出して再び審査を受けることができるが、それでも認可されない場合、特許庁の審判部で審理を受けることになる。これは地方裁判所レベルの組織で、ここで拒絶審査がなされた場合には高等裁判所、最高裁判所まで判断が持ち越されることになる。また、一度登録されたものについても異議申し立てがあれば審判部による審理が行なわれ、取り消しになることもある。

『Linux』の商標については、ソフトウェア以外の分野ですでに商標登録されているものが複数ある。そのうち、1999年に一度認定された、紙類、印刷物などを対象にした商標は、(株)アスキーが無効審判を請求し、東京高裁の判決で印刷物については無効と判断されている。この判決では、OSである『Linux』の名称がすでに浸透していたことなどが理由としてあげられている。一方、Linus Torvalds氏自身は日本でも『Linux』の商標登録を申請しているが、一度拒絶されている。Torvalds氏は審判請求を行なっているが、2年近く経過した現在でも判断は下されていない。

現在のところ、ディストリビューションなどには「Linuxは、米国およびそのほかの国におけるLinus Torvalds氏の登録商標または商標です」といった商標表示が行なわれているが、『Linux』という名称の使用に関しては、日本では法的に保護されていないのが実情だ。第3者が不正に商標登録を行なった場合の対策として、商標法第4条1項7号や15号、同法第3条1項2号などを根拠に、特許庁に対する「情報提供」を行なうといった方法が紹介された。


『Linux Conference 2002』では、ほかにもエンタープライズ向けの機能やネットワーク関係、印刷環境、国際化といった旬の話題が提供されていた。今年は特に、『LinuxWorld Conference & Demo』を行なってきたIDGジャパン(株)の協力などもあり、展示ブース「.org Village」が設けられるなど、非常に盛りだくさんの内容となった。そのため参加した人でもすべてを見て回るのは困難だったのではないだろうか。なお、各論文や発表資料については現在公開に向けた準備が行なわれているとのことだ。

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