アイコムのブロードバンドルータの新製品「SR-21BB」は、本体内のPCカードスロットに無線LANアダプタを追加することでワイヤレスブロードバンドルータとしても利用できるのが特徴だ。今回は、同時に発売されたIEEE802.11a準拠の無線LANカード「SL-50」が2枚同梱される54Mbpsタイプのワイヤレスブロードバンドルータセット「SR21S52G」を用いて、有線/無線環境でのパフォーマンスを検証してみた。
PCカードスロットを装備し
2つの無線LAN機能に対応可能
WAN側用に10BASE-T/100BASE-TX対応のEthernetポートと、LAN側用に4ポートのスイッチングハブ機能を搭載するSR-21BBは、本体単体では有線ネットワーク用のブロードバンドルータとして利用できる(写真1、2)。さらに、本体に装備するPCカードスロットにオプションの無線LANカードを装着することで、無線LAN環境にも対応できるのが特徴だ。前モデルの「SR-11FB」はIEEE802.11b準拠の無線LAN機能を内蔵していたが、SR-21BBでは無線LANアダプタの脱着が可能なため、IEEE802.11b準拠の「SL-11」と、IEEE802.11a準拠の「SL-50」の2種類の無線LANアダプタを差し換えることで2タイプの無線LANアクセスポイントとして使い分けることができる。これにより、新規に無線ネットワークを導入する場合だけでなく、すでにIEEE802.11bを導入しており今後IEEE802.11aへの変更を考えている場合でも、スムーズな移行が行える。
写真1 SR-21BBの前面には、本体の動作状態や、WAN側とLAN側の有線/無線ネットワークの接続状態を示すLEDを装備する。 | 写真2 SR-21BBはプリンタポートも装備しており、ユーティリティソフトをインストールした端末からネットワーク経由で1台のプリンタを共有することも可能だ。 |
また、無線LANのセキュリティも前モデルより強化されている。MACアドレスフィルタリングによって不特定の無線端末からの接続を制限できるのに加え、通信の秘匿性を高める暗号化に関しては、64/128bitのWEPをサポート、さらにIEEE802.11a使用時には、より強力な暗号アルゴリズムである128/256bitのAES(Advanced Encryption Standard)暗号を選択することも可能となっている。これらにより、不特定のユーザーがネットワークに参加することや、無線の傍受による通信内容の漏洩などを心配することなく、セキュアなワイヤレスネットワークの運用が行える。セキュリティ以外でも、動的にルーティング設定を変更できるRIP1/RIP2や、SNMPによる本体のリモート制御などに対応しており、ホームユースだけでなくビジネスユースでも活用できる製品だ。
写真3 SR-21BBは単体では有線ネットワークのみをサポートするブロードバンドルータだが、本体右側面に備えるPCカードスロットに無線LANアダプタを接続すれば、有線に加えIEEE802.11aあるいはIEEE802.11b対応のワイヤレスブロードバンドルータとしても利用でき、柔軟な運用が可能だ。SL-50を装着した場合、屋内で30mぐらいまでの距離なら速度は低下するものの安定して通信できた。 |
接続形態/条件 | 実行速度 |
---|---|
有線LAN | 約61.2Mbps |
無線LAN(IEEE802.11a) | |
暗号化なし | 約21.1Mbps |
WEP(64bit) | 約20.7Mbps |
WEP(128bit) | 約20.8Mbps |
AES(128bit) | 約6.7Mbps |
AES(256bit) | 約5.9Mbps |
有線ネットワークでのスループットは、これまで編集部で評価したブロードバンドルータの中でも最速であり、同じCPUを採用するマイクロ総合研究所の「NetGenesis SuperOPT50」を大きく上回る非常に優秀な結果だ。FTTH環境で利用してもほとんどストレスを感じることはないだろう。IEEE802.11a環境では無線LANの通信速度がボトルネックとなってしまうが、それでもADSLやCATVによるインターネットアクセスには余裕を持って対応できるパフォーマンスを示した。AES暗号を利用した場合は、SH-4-167MHzを採用しているとはいえ、さすがに大幅にパフォーマンスが低下してしまうが、それだけ強力な暗号化が行われているとも言える。パフォーマンスは低下してもよりセキュアな環境を構築しているというユーザーでも、安心して通信が行えるだろう。
写真4 SR-21BBの本体機能の設定は、Webブラウザを利用して有線/無線ネットワーク経由で行える。設定メニューは項目が細かく分かれており、目的の機能にアクセスしやすい。また、各項目ごとにヘルプが用意されているのも親切だ。DMZや双方向のパケットフィルタ、スタティックルートの設定などが行え、ブロードバンドルータとして機能的な不満は感じない。 |
SR21S52Gの標準価格は6万5800円で、ワイヤレブロードバンドルータのセットとしても高価だが、IEEE802.11aを利用した無線LANのパフォーマンスを考えるなら、それだけの価値はある製品だ。また、SR-21BBは単体でも発売されており(オープンプライス、実売価格2万5000円程度)、当面無線LANを導入する予定はないが、高いパフォーマンスを持つ有線ブロードバンドルータとして利用したいというユーザーはこちらを選ぶといいだろう。
とりあえずIEEE802.11bで無線ネットワークを構築し、やがてIEEE802.11a環境に移行したいと考えているユーザーには、IEEE802.11b準拠の無線LANアダプタSL-11が2枚同梱される11Mbpsタイプのセットパッケージ「SR21S12F」(標準価格4万5800円)も用意されている。FTTHの利用を考えているユーザーはもちろん、ADSLやCATVによるインターネット接続を無線LANで活用しようと考えているユーザーなら、ぜひSR-21BBシリーズの導入を検討してみることをお勧めする。
SR21S52Gの主なスペック | |
製品名 | SR21S52G |
---|---|
WAN側インターフェイス | 10BASE-T/100BASE-TX |
LAN側インターフェイス | 10BASE-T/100BASE-TX、IEEE802.11a、IEEE802.11b(オプション) |
サイズ | 52(W)×144.4(D)×155(H)mm |
重量 | 約500g(無線LANカード装着時) |
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