現在の無線LAN機器の主流は転送速度が最大11Mbpsの「IEEE802.11b」だが、最大54Mbpsと約5倍の高速通信が可能な上位規格「IEEE802.11a」も少しずつ普及が進んでいる。アイ・オー・データ機器の「WN-A54/BBR」と「WN-A54/PCM」も、そんなIEEE802.11a対応無線LAN製品のひとつだ。
実効速度は IEEE802.11bの3倍程度
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写真1 無線LANカード「WN-A54/PCM」は、装着するとアンテナ部分が約3cm程度外側に張り出す形になる。消費電力は560mAhとやや高めだ。 |
本体には10BASE-T/100BASE-TX対応のEthenertポートをWAN側とLAN側に1基ずつ装備する。WN-A54/BBRは、IPマスカレードやDHCPの機能も持っており、有線/無線LAN上にあるPCを相互に接続することができる。
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図1 アクセスポイントの設定画面。基本的な設定はWebブラウザから行う。設定項目はIPアドレスやPPPoE、WEP/SSID/MACアドレスフィルタリングなど最低限必要なもののみに抑えた印象。 |
セキュリティ機能に関しては、64/128bitのWEP機能と最大16台の登録が可能なMACアドレスフィルタリングという無線関係の機能以外は最小限に抑えられており、パケットフィルタリングやポートフォワードなどの機能は用意されていない。そのため、より高いセキュリティ機能を求めるユーザーや、ネットワークゲームなどをプレイするためにIPマスカレードの制約を回避する必要のあるユーザーは、本機をブリッジモードで使用し、別途これらの機能を備えたブロードバンドルータを追加する必要がある。
気になるスループットに関しては、編集部で有線LAN上のPCから無線LAN上のPCへ約300MBのファイルをftp転送した際の実効速度を計測したところ約1.64MB/秒(約13.1Mbps)。理論値の54Mbpsには及ばない結果となったが、過去に編集部で計測したIEEE802.11b対応製品のスループットが、軒並み3.5~4.5Mbps程度となっている(こちらの記事を参照)ことを考えると、本機の導入で2~3倍程度の高速な無線LAN環境が手に入れられることになる。
上記の結果は、アクセスポイントと子機の距離が1m以内(電波強度は「強」)とかなり好条件での計測結果だが、両者の距離が遠ざかるなどして電波状態が悪くなれば、速度にも影響が出る(図2、3)。編集部のテストでは、安定して通信が続けられた距離の限界は約35m。その際には速度も60%程度(1.04Mbps)に落ちた。それ以上離れた状態でも通信自体は行えるが、大きなファイルをやり取りする際に途中で接続が切れる場合があり、実用上は厳しい印象だった。
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図2、3 アダプタ側の設定ユーティリティ。普段はタスクトレイに常駐している。現在の転送速度や電波強度をグラフ表示する「信号ログ」は便利な機能だ。 |
本製品の実売価格はWN-A54/BBRが5万円弱、WN-A54/PCMが2万円弱。IEEE802.11aは、利用する周波数帯が5.2GHz帯のため、2.4GHz帯を利用するIEEE802.11bとの互換性はない。また、法律上屋外での使用が禁止されている点にも注意が必要だ。本機のターゲットは、ADSLより高速なインターネットアクセス環境で、なるべく速度を落とさずに無線LANのメリットを享受したいスピード志向のユーザーなどだろう。
WN-A54/BBRの主なスペック | |
製品名 | WN-A54/BBR |
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WAN側インターフェイス | 10BASE-T/100BASE-TX |
LAN側インターフェイス | 10BASE-T/100BASE-TX、無線(IEEE802.11a) |
サイズ | 233(W)×48(D)×159(H)mm |
重量 | 約1.2kg |
WN-A54/PCMの主なスペック | |
製品名 | WN-A54/PCM |
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消費電力 | 約560mAh |
サイズ | 119(W)×54(D)×10.4(H)mm |
重量 | 約50g |
