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ギャルゲーと営業と私

2002年01月29日 19時54分更新

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 すでに読者の皆様もお気づきとは思うが、僕のいたゲーム会社はかなりハイレベルなダメダメカンパニーだった。しかし、規模としては中堅どころであったため、それなりに色々な種類のソフトを出していた。売れなかったけど。レース、スポーツ、RPGもどき、アクションアドベンチャー、シミュレーションなど何でもアリだった。売れなかったけど…。

 しかし僕が入社した当時、まだラインナップにないジャンルの商品があった。それは……、

ギャルゲー
※写真はイメージです。実在するショップやメーカーとは関係ありません

ギャルゲー

 そう、わが社にはまだギャルゲーと呼ばれるジャンルの製品がなかったのだ。またそれは、ゲームについて詳しいわけでもないのにゲーム会社へ入社してしまった僕にとって、あまりにも謎の多い、そして敷居の高いジャンルであった。

そこで今回は、そんな僕の甘酸っぱい「ギャルゲー営業初体験物語」をお送りしよう。



新ジャンルを開拓せよ!

 当時、僕はアセっていた。なんといっても我社初めてのギャルゲーである。業績不振の我社にとって、新ジャンルの開拓は非常に大きな意味を持つに違いない(後から考えると、ただの苦し紛れだったような気もするが……)。だから僕は頑張った。あまり好きではないギャルゲーに慣れるため毎日最低でも10分間は2次元の美少女達と語り合うようにし、もちろん「萌えー」という単語を使う練習も欠かしていなかった。しかしその努力の甲斐も空しく、一向にギャルゲー経験値の上昇しないなか、営業活動は始まってしまった。

店頭体験会
※写真はイメージです。実在するショップやメーカーとは関係ありません

 わが社初となるギャルゲーソフトの発売1カ月ほど前、とある夏の土曜日。僕は神奈川の小さなゲームソフトショップにいた。そう、新作の発売前には恒例の「店頭体験会」開催のためだ。店頭体験会とは読んで字の如く、ただ単に店頭で新作ソフトを展示して体験してもらうだけの会だ。一見どうでもいいようなイベントなのだが、ショップの店長さんとの友好関係を築くためには欠かせないもので、僕の貴重な休日はこういったイベントによって次々と潰されていくのだった。

 その日も僕は、うだるような暑さのなか、いつものように左手には業務用青色プレイステーションの入ったバッグ、右手には販促グッズのたっぷり入った紙袋を引っさげて店に到着した。ちなみにこの青色プレイステーションは開発者/ソフトハウス向けの本体で、市販品にはない機能がついている、当然一般には流通してないモノ。秋葉原などではかなり高値で売れたこともあったらしい(もちろん僕は売り捌いたりしていないが、ネットオークションに出品された時には僕の同僚に疑いがかかっていた……)。

 さて、体験会のほうは事前のホームページでの告知も万全! さらには店内にも体験会を開催する旨の手作りポスターがデカデカと貼ってある。「店長、ありがとう!!」、そんな思いで胸一杯になりながら、まだ30歳前後なのにも関わらず、遺伝かはたまた経営難が原因か、すでに頭部の毛髪占有面積が70%程に減少している店長に微笑みかけた。これまで何度となく彼に新作ゲームを紹介したが、今回ほど彼が協力的なのは初めてだった。何を隠そう、この店長は大のギャルゲーマニアだった。今日の彼の笑顔は、僕が見た中で最も光り輝いていた(頭も)。



店頭体験会
※写真はイメージです。実在するショップやメーカーとは関係ありません

 かくして、店内のモニターにプレステをセットし、営業7つ道具の中からポスター、POP、チラシを取り出し準備は万端! さあ、盛大に体験会のスタートだ!!

 とはいえ、お客さんは店内に2~3名。しかもこちらには全く興味を示さない。ま、これは地方の小型店ならいつものことなので全く問題なし。体験会を実施しても客がいなくてはどうしようもなく、しょうがないので自社のゲームを「自ら体験」したりしてる間に体験会が終了する、なんてことも珍しくはない。

 しかし今日は僕の人生でもはじめての「ギャルゲー体験会」。ここからがいつもと違ったのである。



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