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ギャルゲーと営業と私

2002年01月29日 19時54分更新

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プレート
ギャルゲーユーザーは、思い思いに好きなキャラクターのイラスト入りプレートを作り、服やカバンに付ける傾向がある。※写真はイメージです。実在するショップやメーカー、人物とは関係ありません

 体験会開始から約20分後、誰も興味を示さないためすることがない僕は、隣のモニタにセットしてあった他社の某レースゲームを店長の目を気にしつつも楽しんでいた。すると駅の方から10人くらいの若者の集団が早足で近づいてくるのが目に入る。「何の集団だろう?」とよく見てみると、彼らは胸にみな同じプレートをつけている。それを見た僕はおもわず「ヒ、ヒロミちゃん?!(仮名)」と、つい大声で叫んでしまいそうになった。そう、彼らは全員、自作のヒロミちゃん(=ゲームの主人公)ワッペンを胸につけているのだ。著作権的な問題を考える間もなく、急いで状況を判断する。「彼らはここに向かっているに違いない。この体験会のために……」

 瞬間、身の危険を感じた僕は早々と片付けの準備に入ろうとした。が、背後には店長の素敵な笑顔が……。店内に貼りめぐらされた体験会告知ポスターが脳裏をよぎる。

「だめだ、ここで店長を裏切るわけにはいかない」

 覚悟を決めた。すると予想通り彼らは店内に入るや否や、僕の元へやって来たのである。店長の声が響く。

「いらっしゃいませ!!」

 ……2時間後。販促グッズを全て配り終えて空になった紙袋と引き換えに、僕の心は今まで接したことがなかった“新しい人種(これがニュータイプっていうの?)”を発見した喜びでいっぱいだった。そして自分がまたひとつ成長したことを誇りに思いつつ、神奈川を後にしたのである。以下、その2時間の間に判明した衝撃的な事実をレポートしよう。

  • メンバーは当時11名。だが、サッカーチームはどうやっても組めそうにない。名前は忘れたが、ちょっとカッコイイ感じの名前のサークルで、わが社のゲームの普及のために日夜活動しているとのことだった。アリガタイ話である。
  • ただのワッペンに見えた「ヒロミちゃんプレート」だが、よく見ると名刺になっていた。会員ナンバーや本人の名前が印刷されていたが、どうやらみんな自宅から付けてきたようだ……。個人的には、せめて駅前からにして欲しかった。
  • メンバーのうち、3人は静岡から新幹線で、1人は広島から飛行機で、このためだけにやってきた行動力溢れるナイスガイである。
  • 彼らの平均ソフト予約数は5~6本。最も多い人では12本。それでも「今回は5800円(ごっぱち)だからきつくないッスよ。いつもは6800円(ろっぱち)とか7800円(ななぱち)ですから!」と平然と言ってのけていた。
  • ヒロミちゃん(仮名)たちがゲームの中の2次元世界だけに存在するギャルだということは頭で理解はしている。が、やっぱり彼女たちとの結婚も視野には入れているらしい。
  • 登場人物の誕生日に、うちの会社に対してバースデーカードを送ってきたのはメンバーの中の24歳の自衛官だった。ちなみにそのカードは会社のシュレッ(以下自粛)。
  • 日本語をあまり上手に使いこなせない人もいるが、基本的には温厚で友好的な性格の人が多い。しかし僕にとってはニガテな人たちだ。


  • 名刺“名刺”は、キャラクターのイラストがある以外は案外普通だったりする。もっとも、ギャルイラスト入り名刺を自作している段階で十分スゴいんだが…。※写真はイメージです。実在するショップやメーカー、人物とは関係ありません

     こんな彼らのおかげで、ゲーム業界は成り立っている……。そんな事実を目の当たりにした1日だった。

    追伸:結局このゲームは3万本くらい売れたが、上記の彼らの予約本数などを考えると、実際には1万人程度のへヴィーなファンが1人平均3本ずつくらい買っただけではないかと思う。営業報告書にそのことを書いたら、課長は「そんなことないだろう」と笑っていたけど…。

    ここに書いたことは、あくまでも僕の体験がもとになっています。すべてのゲーム会社に当てはまるわけではありません。

    【筆者プロフィール】高田哲弘氏。都内某大学を卒業後、とある中堅ゲーム会社に誤って入社し、営業部に配属されて過酷な日々を過ごす。その2年後には早くも会社の将来に絶望を感じ、就職活動を開始。別のゲーム会社にて採用され、また誤って入社してしまう。そしてそこでも会社の将来に絶望を感じたが、時すでに遅く、会社が倒産するという事態を迎えるハメに。そして現在、なんの因果かまたゲーム業界に近い会社に勤務している。しかしやはり過酷具合は変わらず、現在は長期就職活動中。

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