ギャルゲーユーザーは、思い思いに好きなキャラクターのイラスト入りプレートを作り、服やカバンに付ける傾向がある。※写真はイメージです。実在するショップやメーカー、人物とは関係ありません |
体験会開始から約20分後、誰も興味を示さないためすることがない僕は、隣のモニタにセットしてあった他社の某レースゲームを店長の目を気にしつつも楽しんでいた。すると駅の方から10人くらいの若者の集団が早足で近づいてくるのが目に入る。「何の集団だろう?」とよく見てみると、彼らは胸にみな同じプレートをつけている。それを見た僕はおもわず「ヒ、ヒロミちゃん?!(仮名)」と、つい大声で叫んでしまいそうになった。そう、彼らは全員、自作のヒロミちゃん(=ゲームの主人公)ワッペンを胸につけているのだ。著作権的な問題を考える間もなく、急いで状況を判断する。「彼らはここに向かっているに違いない。この体験会のために……」
瞬間、身の危険を感じた僕は早々と片付けの準備に入ろうとした。が、背後には店長の素敵な笑顔が……。店内に貼りめぐらされた体験会告知ポスターが脳裏をよぎる。
「だめだ、ここで店長を裏切るわけにはいかない」
覚悟を決めた。すると予想通り彼らは店内に入るや否や、僕の元へやって来たのである。店長の声が響く。
「いらっしゃいませ!!」
……2時間後。販促グッズを全て配り終えて空になった紙袋と引き換えに、僕の心は今まで接したことがなかった“新しい人種(これがニュータイプっていうの?)”を発見した喜びでいっぱいだった。そして自分がまたひとつ成長したことを誇りに思いつつ、神奈川を後にしたのである。以下、その2時間の間に判明した衝撃的な事実をレポートしよう。
“名刺”は、キャラクターのイラストがある以外は案外普通だったりする。もっとも、ギャルイラスト入り名刺を自作している段階で十分スゴいんだが…。※写真はイメージです。実在するショップやメーカー、人物とは関係ありません |
こんな彼らのおかげで、ゲーム業界は成り立っている……。そんな事実を目の当たりにした1日だった。
追伸:結局このゲームは3万本くらい売れたが、上記の彼らの予約本数などを考えると、実際には1万人程度のへヴィーなファンが1人平均3本ずつくらい買っただけではないかと思う。営業報告書にそのことを書いたら、課長は「そんなことないだろう」と笑っていたけど…。
【筆者プロフィール】高田哲弘氏。都内某大学を卒業後、とある中堅ゲーム会社に誤って入社し、営業部に配属されて過酷な日々を過ごす。その2年後には早くも会社の将来に絶望を感じ、就職活動を開始。別のゲーム会社にて採用され、また誤って入社してしまう。そしてそこでも会社の将来に絶望を感じたが、時すでに遅く、会社が倒産するという事態を迎えるハメに。そして現在、なんの因果かまたゲーム業界に近い会社に勤務している。しかしやはり過酷具合は変わらず、現在は長期就職活動中。