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CASSIOPEIA l'agenda BE-500

CASSIOPEIA l'agenda BE-500

2002年01月23日 07時07分更新

文● 田中 裕子

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軽快な速度を実現する
l'agendaのハードウェア

 CPUにはMIPS系のVR4131-166MHzが採用されている。CE機のCPUは全般的にStrongARMが主流になりつつあるが、BE-500に搭載されているVR4131は組み込み系チップの中でも処理能力の高さに定評がある。最新のPocket PCに搭載されているStorongARM-206MHzと比較しても性能に遜色はない。また、過去のCE機ではMIPS系プロセッサを搭載した機種が比較的多く、これらのアプリケーションがそのまま利用できるのも大きなメリットである。(※1)

※1 l'agenda BE-500は、OSの構成や後述するメモリシステムの違いなどにより、基本的にl'agendaシリーズ専用のソフトが必要になる。ただし、APIやGUIの構成はPocket PCの旧バージョンである「Palm-size PC」に近いため、Palm-size PC用のアプリケーションに対する互換性が比較的高いとメーカーでは説明している。

従来の「CASSIOPEIA」と「BE-500」のメモリシステムの違い。従来のシステムでは、OSや標準アプリが低速なマスクROMから直接実行されていたが、l'agendaでは読み書きが高速なSDRAMに起動時(アプリの場合は初回実行時:メモリが不足した場合は古いタスクから切られる)にロードすることでパフォーマンスの向上を狙っている。また、ユーザーデータはフラッシュメモリに格納されるため、バッテリが切れてもデータが消失しないというメリットもある(図中のFlashをHDDに置き換えると、l'agendaがPDAよりもPCに近いシステムを取っていることが分かる)。
 内蔵メモリはSDRAM16MB+フラッシュメモリが16MBという構成だ。BE-500では「LoMSシステム」というほかのWindows CEマシンとは異なるメモリローディングシステムが採用されている(図参照)。これは、フラッシュメモリをOS/アプリ/ユーザーデータの記録領域、SDRAMをシステム領域と完全に切り分け、PCと同じように起動時にOSをフラッシュメモリからSDRAMに読み込んで(アプリケーションの場合は初回実行時)高速動作させる仕組みだ。

 この方式のメリットは、OSを含むすべてのプログラムがフラッシュメモリ上にあるためソフトの追加やアップグレードが簡単に行え、マスクROMより高速なSDRAM上でプログラムを実行させられる点だ。また、ユーザーが追加したデータやソフトは、すべてフラッシュメモリ上に記録されるため、バッテリ切れで本体がハードウェアリセットされてもデータは消失しない。意識的にバックアップをとらなくてもデータが保護されることは、情報管理目的で使用するPDAでは非常に心強い。

 表示部には解像度240×320ドット/3万色表示に対応した透過型STNカラー液晶が採用されている。STN液晶は最新のPocket PCの搭載するTFT液晶に比べて、反応速度や視認性が劣るが、PIMや通信が主目的なら、特に問題はない。



カシオの持ち味が生かされた
完成度の高いアプリケーション

 Pocket PCはPocket Internet Explorer/Word/Excelなど標準アプリの共通化も図られているが、BE-500では搭載するソフトもカシオオリジナルのものになっている。標準アプリケーションには「スケジュール」「住所録」「ToDo」「メモ(テキストメモと手書きメモ)」といったPIMソフトや、「メール」「ブラウザ」などの通信ソフトがある。いずれも直感的に操作でき、しばらく触っているだけで比較的すぐに操作が覚えられる。

 文字入力は、手書き入力かソフトキーボードから行う。手書き入力は、文字を書いてから認識するまでの反応時間が短く非常になめらかで、紙に文字を書いている感覚に近い書き心地だ。文字をうまく認識させるためには多少練習が必要だが、文字を入力エリアいっぱいに大きめに書く、「っ」などの小文字は入力エリアの中央に小さめに書く、といった認識率を高めるコツを覚えると、快適に入力できるようになる。筆者も、日本語は手書きのひらがな入力から漢字変換(筆者の筆跡では漢字の認識があまりうまくいかなかったため)、英数文字はソフトキーボードから入力(手書きより快適だったため)、変換中の文字の削除と確定は本体下部にある「ESC」「OK」のハードボタンで操作するという方法で、短時間触っているだけでも入力がかなりスムーズに行えるようになった。

 とにかく文字を書いたときの反応が速いので、自分の文字の書き方の癖を把握して認識率を上げるコツさえ覚えれば、Palmデバイスで採用されているGraffiti入力システムより速く文字入力を習得できるだろう。手書きメモも、まるで紙の手帳にメモを取っているような感覚で使えるところがいい。

 メールは複数のアカウントが設定でき、それぞれのアカウントに対して通信に使うサーバセットを指定することが可能だ。最近はセキュリティ強化のためにPOP認証した後にのみSMTPサーバーにアクセスできるような仕様を採用しているプロバイダが多いが、BE-500のメールソフトはメール送信前のPOP認証も自動的に行うように設定できる。複数のメールアカウントを設定した場合、それぞれのアカウントに来たメールは、メールソフトの中で独立したメールボックスに分類保存され、「OK」「スクロール」「ESC」の各ハードボタンを使って片手だけで読むことができる。ブラウザは、フレーム表示に対応しており、1つのフレームだけを全画面表示することもできる。画像の表示もPC上で見ているクオリティに近い(Palm用ブラウザのように画像がサーバで圧縮され劣化してしまうことがない)。使い勝手もパソコンのブラウザと同じような感じだ。

安価でも妥協のない機能

 Pocket PCと比較すると、メモリ容量が少ない(Pocket PC 2002では64MBが主流)、STN方式のカラー液晶を採用しているなど、低価格化のため削られた機能は多いが、操作性はなかなかよく、初めて使用する人でもすぐになじめるだろう。特に、ハードウェアキーや各アプリケーションのインターフェイスは使いやすく、よく考えらたものだと感じる。

 付属のCD-ROMには、独自形式(CFM形式)の動画再生やJPEG/GIF/BMP/PNG形式の静止画表示に対応した「動画再生」、MP3形式に対応した「音楽再生」、などのマルチメディア系ソフトも収録されているので、これらの機能を楽しみたい人は付属のCD-ROMから使いたいソフトをインストールすればよい。
 また、CFカードにインストールしたアプリも、本体にインストールしたアプリと同様にランチャー画面から直接起動できる。マイクロドライブに対応するアップデータも公開されているので、メモリ容量に関しては問題ないだろう。

本体との接続はUSBに対応。PCカードアダプタや追加バッテリを背負った状態でも本体をおけるように、背面を固定するパーツが移動する仕組みになっている。
 パソコンとの同期はMicrosoftの「ActiveSync」ではなく、専用の接続ソフトを使用する。Windows用PIMソフト「Outlook」とのデータシンクロもこの接続ソフトを介して行える。さらに同梱の「Quick View Plus」をインストールすれば、l'agenda上でMicrosoft Word/Excel/Power Pointのファイルを閲覧することも可能だ。動画や音楽、画像データなどの転送も、この接続ソフトを使って行う(これらの再生ソフトをCFカードにインストールした場合は、CFカードの指定のフォルダ内にデータをコピーしてもよい)。

 カラー液晶搭載でPIMソフトの使い勝手がよく、標準で通信に必要なハード&ソフトが備わっていることを考慮すると、実売で3万円を切る価格は、低価格化が進むPalmデバイスと比較してもなかなかいい勝負だ。よけいな機能はいらない、手帳代わりに使えて通信もできるPDAが欲しいというニーズにはベストマッチする。また、必要に応じてPCカードスロットを追加したり、データをCFやマイクロドライブに保存して、大容量の動画/音楽ファイルを持ち運ぶといった、拡張が簡単にできる懐の深さもある。l'agenda BE-500は単にPDA初心者のエントリモデルとしてだけでなく、幅広いユーザー層に受け入れられるマシンだ。


CASSIOPEIA l'agenda BE-500の主なスペック
製品名 CASSIOPEIA l'agenda BE-500
CPU VR4131-166MHz
メモリ 16MB(SDRAM)+16MB(フラッシュ)
表示 3.2インチ透過型カラーSTN液晶(240×320ドット/3万色)
スロット CF(TypeII)×1
電源 内蔵リチウムイオン充電池
バッテリ駆動時間 6時間(非通信時)/約1週間(通常使用時)
本体サイズ 76(W)×121(D)×17.9(H)mm
重量 158g(本体のみ)/170g(フリップカバー含む)

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