コンパックコンピュータ(株)は22日、都内で記者発表会を開催し、同社のIAサーバー『Compaq ProLiant(プロライアント)』で使用しているHDDを抜いて本体のHDDベイに差し込むだけでSAN(Storage Area Network)環境に移行できるストレージ製品『StorageWorks by Compaq Modular SAN Array 1000』を発表した。2月上旬に出荷開始で、価格は180万円。
『StorageWorks by Compaq Modular SAN Array 1000』これはMSA ファブリックスイッチ6オプションキットを装着して冗長構成にした状態 |
MSA1000の前面パネルの機能 |
MSA1000の背面パネルの機能説明 |
StorageWorks by Compaq Modular SAN Array 1000(以下MSA1000)は、高さ4U(約178mm)のラックマウントタイプ筐体に、RAIDコントローラー(RAID ADG(※1)対応)、毎秒2Gbitの転送速度を持つファイバーチャネルスイッチ(6ポート)を内蔵する。MSA1000の1台あたり最大14台のHDD(Ultra3 SCSI)を収納可能(72GBのHDDを使用した場合約1TB)で、2台のHDDエンクロージャーを追加して、最大42台(約3TB)まで拡張できる。当初サポートするOSはWindows 2000とWindows NT 4.0のWindows系のみだが、Compaq Tru64 UNIX、OpenVMS、さらにSolarisなど他社の主要なUNIXと接続可能にするとしている。なお、Windows 2000/NTサーバーであれば、ProLiant以外の他社製IAサーバーとも接続できる。
※1 RAID ADG(Advanced Data Guarding):コンパックが開発した、大規模ディスクアレー向きのデータ保護技術で、基本的にはRAID 5を拡張したもの。RAID 5のシステムでは、それぞれの物理HDDにパリティーデータを分散して記録することで、ディスクアレー中の1台のHDDに障害が起きた場合にデータを復旧できるが、2台以上のHDDに障害が起きた場合はデータが失われてしまうため、HDDを多数使ったディスクアレーではリスクが大きい。RAID ADGでは2セットのパリティーデータを物理HDDそれぞれに記録するため、ディスクアレー中の2台のHDDに同時に障害が発生しても、データを復旧できる。RAID ADGの概要 |
コンパックコンピュータ、取締役副社長兼エンタープライズビジネス統括本部長河合聰氏 |
標準構成のMSA1000では、電源のみが冗長構成となっているが、RAIDコントローラー『MSA1000 コントローラオプションキット』(82万円)、ファイバーチャネルスイッチ『MSA ファブリックスイッチ6オプションキット』(96万円)をオプションとして用意しており、これらを追加することで、RAIDコントローラーとファイバーチャネルを二重化可能。
エンタープライズビジネス統括本部ストレージ製品本部ストレージ製品企画部部長の本間孝秀氏 |
コンパックコンピュータのストレージ製品本部ストレージ製品企画部の本間孝秀部長は、MSA1000の“際だった特徴”として3つを紹介した。
1つめは“DtS(DAS(※2) to SAN)アーキテクチャ”。MSA1000では、ProLiantで使われているRAID構成のHDDをProLiantから取り出し、MSA1000のHDDベイに挿入して、ストレージボリュームとサーバー(HDDを取り出したProLiant)の所有関係を設定することで、DAS環境からSAN環境への移行できるというもの。コンパックがSAN製品として初めて可能にした技術という。MSA1000が、挿入されたHDDのパリティーデータをスキャンしてRAIDボリュームを自動的に再構成するため、SAN環境への移行に関するストレージ管理者の手間とリスクがわずかですむとしている。
※2 DAS(Direct Attached Storage):ネットワーク経由で接続するストレージに対して、サーバーに直接接続されたストレージを指す言葉。2つめは毎秒2Gbitのファイバーチャネルスイッチを内蔵したこと。これまでSAN製品はファイバーチャネルスイッチが外付けになっていることが一般的だったが、これがSANシステムが複雑で高価になる一因になっていたという。MSA1000ではファイバーチャネルスイッチ内蔵することで、「非常にリーズナブルな価格付けができた」(本間部長)としている。なお、価格については、同クラスのストレージ製品とファイバーチャネルスイッチの組み合わせと比べ、「およそ半分」(本間部長)程度としている。
3つめはRAID ADG機能。SAN関連のストレージ製品ではディスクアレーを構成するHDDの数が多いため、同時に1つ以上のHDDに障害が発生する可能性を考えると、RAID 5ではなくRAID ADGが最適であるという。
また、本間氏はDAS環境と比較した場合のSAN環境の利点について、「DASではサーバーごとに用意しなくてはならず、ストレージが分散するために利用効率が悪い。SANなら利用効率が上がるとともに、サーバーとストレージを独立して管理・運用でき、柔軟なシステム構築が可能になる」という。データのバックアップについても、SAN環境であれば、利用しているネットワークパフォーマンスを低下させない高速バックアップや、集中管理が可能だとしている。
SAN環境に移行することによるバックアップ作業についてのメリット |
IT産業を取り巻く経済状態は厳しく、IT管理者への予算は2001年には前年比5%しか増加しなかったが、企業のデータ量はここ1、2年は100%の伸びとなっており、効率的なストレージ管理に対する要求があるという。本間氏は、米メリルリンチが行なった、DASからSANへの移行によって、個別の管理を統合化し、容量利用効率が向上することで、ストレージ管理者の管理効率が5倍になるという調査結果を挙げ、SANの導入メリットはIT企業にとって非常に大きいと述べた。
MSA1000が狙う市場。コンパックのストレージ製品中、最大のボリュームゾーンになるという |
MSA1000は、ProLiantのDAS環境SAN環境への移行をねらい撃ちした製品といえるが、ProLiantシリーズは、世界で120万台以上を販売しているベストセラーIAサーバーであり、かなりの需要が見込めると考えられる。コンパックはMSA1000の国内販売目標として、初年度500~1000台という数字を挙げたが、同社が販売目標を具体的に示すことは珍しく、このこと自体、MSA1000へ相当の自信を持っていることの現れだろう。発表会では、2台のサーバーで動いていたDASのRAIDシステムを、MSA1000を使ったSAN環境へ移行するというDtSアーキテクチャーのデモンストレーションが行なわれたが、システムの設定も含めて10分ほどで終了し、確かに移行に際する手間は少なく、短時間に行なえることを見せつけた。価格もこれまでのSANの半額程度ということで、MSA1000の投入によって、国内でのSAN環境への移行を強く促す製品であるといえる。
MSA1000の管理画面。ウェブベースで、リモート管理が可能。もともと2つのディスクアレイ構成のシステムに、2台のProLiantのRAIDシステムを追加し、4つのアレイ構成になったところ |