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Linus Torvalds記者会見全記録

2001年05月30日 01時33分更新

文● 編集部

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[記者] Linusさんが個人的に次のバージョンのLinuxに実装したい機能はありますか?
[Linus] 技術的にはいろいろあるのですが、まずサポートしたいのは、大規模なクラスタです。しかし、世界中にそういったシステムはあまりないので、マーケットという観点からはあまり重要ではないかもしれません。もう1つ関心があるのが、組み込みデバイス向けのマーケットです。小さなデバイスでもパワフルなものがありますので、Linuxとしても対応していきたいと考えています。
[記者] デスクトップのマーケットについてはいかがでしょうか?
[Linus] デスクトップ環境についてはあえて触れなかったのです。というのも、デスクトップはカーネルの外側ですから。技術的には非常に興味深いし、マーケットとしても重要ですが、私が直接関わっているわけではありませんので、今回は触れていません。
[記者] 日本でのオープンソースの環境についてはどう思われていますか? また、日本でオープンソースを広めるために何かアドバイスなどはありますか?
[Linus] 日本でも開発はされていますし、実際にとり入れられた機能というのもいくつかあります。PC-98シリーズや日立SuperHプロセッサなど、日本でのいろいろなハードウェアをサポートしてもいます。ただ、プログラミングの数としてはそれほど多くはないようです。これは社会的な背景によるものかもしれません。しかし、オープンソースのよいところは他人の作ったソフトウェアをいつまでも使い続けるのではなくて、誰もが自分の好きなようにできるということなので、ですから、日本にも潜在力はあると思います。
[記者] 本書では将来のことについて触れられていませんが、なぜですか?
[Linus] 将来の計画が特にないからかもしれません。今後やっていくことも、面白いと思えることでしょう。Linuxに関して、今後こうしていこうということは特にありません。
[記者] Midori Linuxの名前とマスコットの由来は?
[Linus] たまたまです。もともとはMobile Linuxと呼ばれていたのですが、実際には多くのプラットホームがモバイルではないので、別の名前を探していたのです。とにかく「M」と「L」が含まれる言葉を探していたのですが、そんなときに誰かが「Midori」という言葉をいい出して、実際、緑色というのはLinuxのエネルギーを表わす色でしたし、近くのスシバーにも同じ名前のところもあったのですが、とにかくたまたまです。

マスコットの女の子は、Linuxコミュニティには若い男性が多いので、若い女の子がいいというアイディアが自然に出てきました。また、製品の名前が日本語なので、日本人風にして、緑色の服を着ています。

[記者] 本書はオープンソース、無料配布にはしないのですか?
[Linus] 私はオープンなLinuxコミュニティとクローズドな会社にいてバランスをとっています。本はまたちょっと違うし、OSはプログラミングであり、オープンソースのほうが改良したりといった面白いことができます。本はまた違ったものでしょう。部分的にサンプルを公開することは考えていますが、実現するかどうかまだ何ともいえないので、よく分かりません。
[David] プログラムを改良するのはあるでしょうけれど、本を改良することはないでしょう。
[記者] 監修者の中島洋氏が、解説でLinuxコミュニティは「1960年代後半から70年代に至る世界的な反体制運動が引きずっている雰囲気」に後押しされたというお話がありますが、ご自身ではどのように思われますか?
[Linus] 私は60年代は3日しか経験していないのでコメントできないのですが、共通点があるとすれば「殺し合うのではなく愛し合おう(Make Love,Not War)」というスローガンが、「金儲けはしないでソフトウェアを作ろう」といい換えることができるかもしれません。IBMのキャンペーンでも「Peace,Love & Linux」という言葉を使ったりしているので、そういった部分で共通点があるかもしれません。
[記者] 本書のサブタイトル「全世界を巻き込んだLinux革命の真実」とありますが、Linuxは「革命」だと思われますか?
[Linus] 私はこの「革命」というサブタイトルは気に入ってはいません。私は「Just for fan」というタイトルだけしかいいませんでした。ただ、今までと違って、楽しむためにソフトウェア開発をするという、ソフトウェア開発に対する考え方が変わったという意味では「革命的」といえるかもしれません。

「パブリックなスピーチは苦手、楽しくないことはしたくない」というLinus氏だが、今回の記者会見では記者達の質問に対して、ときにユーモアを交えながら明快に答えていただくことができた。

なお、日刊アスキー Linuxでは、Linus氏への合同インタビューも行なっており、それを記念してサイン本のプレゼントを行ないます。詳細についてはこちらの記事をごらんください。

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