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Linus Torvalds記者会見全記録

2001年05月30日 01時33分更新

文● 編集部

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[記者] 前回の来日の際には秋葉原に行かれたそうですが、今回はどちらに行かれる予定ですか?
[Linus Torvalds氏(以下Linus)] 前回の来日のときに京都にも行きました。今回は東京が中心で、時間があれば富士山や秋葉原にも行きたいです。
[記者] 眼鏡をされていませんが、いつからかけなくなったのですか?
[Linus] 眼鏡は10歳のときからかけていましたが、2カ月前からレーザー矯正を始めたので眼鏡をやめました。子供達と泳ぎに行くときにも子供達がきちんと見えるし、そうするとおぼれたときにも助けられるでしょう。
[記者] 子育てに熱心だと聞いていますが、子育てに費やす時間は一日何時間くらいですか?
[Linus] 基本的には妻が子育てをしていますが、できるだけ手伝うようにしています。子供達のために夜も早く帰るようにしているし、旅行にも連れて行くようにしています。今回も、私がここでこうしている間、妻と子供達が東京で私のお金を使っていることでしょう。子育てにかかわっている時間は、一日平均すると、1~2時間くらいか……よく分かりません。
[記者] 本を書くということの楽しみは何でしたか? またそれは達成されましたか?
[Linus] 今までしてきたこととは違う、ものを書くということ自体が楽しいことでした。一緒にハイキングや海水浴、レストランや遊園地にいったりしながら本を書いたので、楽しかったです。
[記者] この本を誰に一番読んでもらいたいですか?
[Linus] 特に誰に対して、というわけではありません。技術者の方でも、ほかの技術者がどんなことを考えているのかを知りたい人には読んでもらってもいいし、むしろより広い人々向けに書いたつもりです。Linuxのことを聞いたことがあって、OSをタダで配ってしまうというクレイジーな人について知りたい人に読んでもらえればと思っています。ですからこの中にはBill Gates氏も入るかもしれません。
[記者] 本書の冒頭にある謝辞には多くの「スシバー」の名前が挙げられていますが、お寿司が好きなのですか?
[Linus] 本書を書くときにも何度もスシバーには行きました。カリフォルニアに行く前は寿司は嫌いだったのですが、カリフォルニアに住むようになってからは好きになりました。好きなネタはマグロ、トロ、イクラなどです。一番好きなのは「スパイシーツナロール」なんです。でも、これは日本にはないそうですね。
[記者] シリコンバレーの住み心地はどうですか?
[Linus] フィンランドからシリコンバレーに移ってきたのは、フィンランドも確かにNokiaに代表されるようなハイテク企業がありますが、シリコンバレーのほうが技術の多様性があったからです。今は住んでいて非常に満足しています。面白い仕事もあるし、気候もフィンランドより温暖だし、いいところです。でも、いつまで住み続けるかは分かりません。
[記者] Linux開発に際して、たいへんだったことは何でしたか?
[Linus] 技術的に難しいことは、確かにたくさんありました。でも、それが楽しかったのです。技術屋さんやプログラミングが好きな人にとって、技術的な難問があって、それを乗り越えることは何よりも楽しいことなのです。でも、楽しくなかったこともいくつかあって、一番楽しくなかったことは公の場でスピーチをさせられることでした。
[記者] Linus氏にとって仕事とは何ですか?
[Linus] ほかの人とは違うかもしれませんが、今は好きなことをやって給料をもらえています。
[記者] 会社はどうですか?
[Linus] 米Transmetaは、社内はオープンな雰囲気です。ただ、外から見るとどうしても閉鎖的に見えます。数年先に出荷される予定の製品情報なども、出荷されるまでは外に漏らしてはいけません。ですから、自分の現在の仕事について話すこともできません。
[記者] Davidさんは側で見ていてどう思われますか?
[David Diamond氏(以下David)] Linusはとても楽しそうに仕事をしています。本当はLinusがTransmetaにお金を払っているのではないかと思うほどです。
[記者] Transmetaについてはほとんどふれられていないのですが……
[Linus] 本書の執筆時にTransmetaが上場する準備をしていたので、法的な理由から書くことができませんでした。それに、先ほどもお話ししましたがTransmetaは将来のことについては公開していませんし、私はエンジニアなので、そういったことはマーケティング担当に任せています。
[記者] どうしてLinuxを売ろうとは思われなかったのですか?
[Linus] 私は基本的に怠け者で、好きなこと、技術的なことにしか興味がないのです。販売するとなると、パッケージングとかマーケティングとかいろいろなことをしなければなりませんが、そういったことにはまったく興味がなかったのです。また、フィンランドの大学は「いたいだけいてもいい」というところだったので、そういった雰囲気にも合っていたと思います。それに、そのほうが楽しかったのです。商業的にOSを開発している人たちはほかにもたくさんいるけれど、そういった人たちが本当に楽しいかどうかは疑問です。

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