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レッツゴー肉ビル探険隊with万世レディ

2001年02月27日 19時51分更新

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エキスパート(あるいはVIP) 編<予算レベル50~200(×100円)>

○8F :多目的ホール『TIARA(ティアラ)』
○9F :和風個室『万世 味香華(みかげ)』
○10F:鉄板ステーキとワイン『万世 千代田(ちよだ)』

 肉ビル攻略もいよいよ佳境。ロールプレイングゲームでいうならば、ラスボス直前といったところか。7Fで受けた思わぬ精神的ダメージにより満身創痍のカラダをひきずりつつ、8F「多目的ホール TIARA(ティアラ)」へ向かう。
 ココはいわゆるパーティースペースであり、フロアが丸ごと大広間となっている。秋葉原エリアで最大級の広さを誇り、立食なら最大で200名様まで収容が可能……という万世レディのよどみない説明を聞きながら、ふと思ったのは8Fで行われるイベントがどんなものかということ。肉ビルだけに、パイ投げならぬ、生肉投げ大会でもやるんか?
「ふー(ため息&暴れん坊の幼稚園児に対する園長先生のような目)。いえ、メーカーの製品発表会や親睦パーティーが多いです。年末年始などのハイシーズンは、半年以上前からご予約しないと確実ではないほど人気があります。あとはそうですね、万世側の企画として、カップルのためのクリスマスディナーですとか、周富徳さんとお食事する会ですとか」

ええっ、中華の鉄人がココでイベントを……?
「はい。まさしくテレビのままの歯切れのいいトークで講演していただきました。そのほかにもいろいろな企画を提案してますよ。たとえば毎年8月のお盆シーズンに開催する『おこさまワイワイランド』。駄菓子やオモチャを満載にして、この8Fをお子様の遊び場として無料開放しているんです。ちょっとした縁日みたいな感じですね。親子で楽しめると、お客様から大好評ですよ!」
 オトナにとってはワンダーランドな秋葉原だが、コドモの目からするとゲーム以外に楽しめるスポットは非常に少ない。交通博物館か、せいぜい駅前広場のイベントが関の山だろう。キッズに優しい万世。ちょっと意外だけれど、そのぶん目からウロコのグレイトさです。

8F→9Fへ上がる階段の途中にあやしい物体をふたつ発見! ひとつはこの「ホーリーくん」だ。「おこさまワイワイランド」にて大活躍するとの話だが、詳細は不明である……
あやしい物体その2は「万世丸」。本来はお刺身の「舟盛り」用のアイテムだが、サイズが非常に大きいため、神田川を航行できそうなフンイキ

 さて、ワンフロアアップして9Fの和風個室『万世 味香華(みかげ)』へ。フードメニューは懐石料理のコースにしゃぶしゃぶ(またはすき焼き)が組みこまれ、キモノを着用した女性スタッフがスタンバイしていると、7F以上にハイグレードな仕様になっている。取材時はちょうど休憩タイムで、料理そのものをチェックすることはできなかったが、旬の素材をふんだんに使った献立であることは確実だ。本業が小料理屋のセガレである私としては、同業者的視点でも要チェック。ショウジのサンを指でなぞってホコリの積もり具合をみるなど、姑さんライクなハードさで360度あらゆるところを確認してみると……、なんだか各個室の名称が気になってしかたがない。神戸、前沢、近江、そして松坂。あっ、コレ牛肉の産地名じゃん! なんとこのフロアの個室名は、ブランド和牛の産地なのだった。
 ということは、もしや今までチェックしてきたフロアにも、同じようなエピソード・ネームが付けられていたのだろうか。肉の万世だけに、肩ロースやカルビなんて肉の部分だったりして。
「そんな名前は付けません! 部屋名ではないのですが、ほかでは10Fのビーフステーキのコースがそれぞれ万世、和泉、昌平、聖となっています。この名称、じつは神田川にかかってる橋の名前なんですね。エピソードがあるのはそれくらいです」
 おっと、忘れてた。七不思議の確認をしなくっちゃ。万世橋という地名は「肉の万世」から取ったんですよね?
「うふふ、違いますよ(笑) よくいわれるんですけどね。万世橋のたもとにあるから「万世」。万の世紀ということで縁起がいい名前でもあるので、そのまま店名におしいただいたんです。むかし中央線の終点の駅として、いま交通博物館がある場所に「万世橋」駅があったという話ですし、地名じたいは江戸時代くらいからあるみたいですよ」
 ナルホド、真実は逆だったわけだ。それにしても、店名が地名になったといわれても信じてしまうとはね(←自他ともに)。万世がいかにビッグネームであるかを端的に物語るエピソードだといえよう。



カジノのポーカーテーブルのように、10Fの席は一組づつ別になっている。それぞれ目の前でシェフが肉を焼いてくれるのだ

 さあ、いよいよファイナルフロアに突入だ。
「秋葉原いちの展望を誇るこちらでは、万世で最もハイグレードな品質のブランド肉を、お客様の目の前でシェフが焼き、ご要望に合わせて切り分けるというきめの細かいサービスを実行。また、ソムリエがお料理にぴったり合うおいしいワインをチョイスいたしております。もちろん、リーズナブルな価格のものもご用意しておりますので、ご予算に合わせてお選びいただけます。また、このフロアにはバーラウンジが併設されており、アペリティフあるいはアフターディナーにお酒を楽しめるのも魅力。リラックスして食事が楽しめるとお客様からご好評でして、PC業界のVIPの方や芸能人の方にもご愛顧いただいております」



10Fの窓からの展望は本当に素晴らしい。しかし、やはり昼ではなく、ディナータイムに見たいものだ

 展望は本当に素晴らしく、眼下には電脳街AKIHABARAのメインストリート・中央通りがまっすぐ走っているのを見ることができる。ディナータイムともなれば、映画「ブレードランナー」的アジアンサイバーな風景が広がることが予見され、外国人も「オー、ファンタスティック!」と大喜びする可能性120%のグッドすぎるロケーションだ。そんな場所で、ハイクオリティのステーキを食べ、ハイグレードなサービスを、ベリーキュートなパートナーとともに受ける……。これぞ秋葉原エリアにおける飲食の最高峰、すなわち究極の贅沢といっても過言ではないだろう。

 本コラムはストリート系のB級グルメを紹介する趣旨ではじまったのだが、どうやらその対照の頂点を見極めてしまったようだ。ていうか、1FでB級グルメ(万かつサンド)を販売し、10Fでアキバ最高級の料理を出している万世って、もしや秋葉原最強の飲食店なのでは? まだ連載初めて数ヶ月足らずで結論を出してしまうのはナンだけど、肉ビル全フロアを踏破した私の脳裏には、そんな考えが浮かんだのであった。
 最後に、これから肉ビルへ出かける方のために、全フロアを踏破した者としてアドバイスを贈ろう。



<肉ビルでメシを食う際のお約束>

(1)月曜日は地下のラーメンコーナーが「サービスデー」。割引価格で排骨拉麺(パーコーラーメン)を食べることができるぞ

(2)5、7、9、10Fなどディナーのイメージが強いフロアにも、ランチメニューはちゃんと用意されている。落ち着いた雰囲気のなか、上質の食事をリーズナブルな価格でいただける穴場なので、土日の混雑時などにうまく利用しよう

(3)7Fのミスター・タカハシはたしかに不思議な方だが、本来は責任感の強い頼れる男である。しかもフロアの最高責任者でもあるので、長嶋カントクの真似など宴会芸を強要しないこと

<P.S.> 万世七不思議のラストワン「万世はマンガ化されたらしい」の真偽ですが、懸命な捜索の末「事実」と判明いたしました。かつて存在した「パンジャ」という雑誌に掲載されていた『孤独のグルメ』がそう。私が手に入れたのは大型サイズの単行本だが、現在は文庫化もされている。興味ある方はチェキラー(check it up)!

●矢部直治氏プロフィール
某小料理屋4代目若旦那 兼 バカ系体力派ライター。文章力はともかく、料理に関する知識だけは豊富(本人談)。

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