このページの本文へ

いまどきのインターネットインフラ事情

長距離無線LANで変わる山間部インターネット

2001年02月21日 04時13分更新

文● NETWORK MAGAZINE編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

NETWORK MAGAZINE
 山で遮られた村役場と魅惑の里を結ぶ場所を選定する作業は、当初の予想以上に困難なものとなった。本来吉和村では、一番高い山として、役場の裏手に標高1082mの女鹿平(めがひら)山がある。地図上では、この山を中継地点とすれば簡単に魅惑の里と結ぶことができそうだった。しかし実際に現場で確認したところ、役場周辺からは山の途中の起伏や樹木などにより、両方を直接見渡せる場所は見つからなかった。

 そこで、ほかの場所が検討されることになった。地図で候補を考えたあとは、実際にさまざまな現場を見て回り、検討を行なった。しかし、最終的には1カ所を経由して村役場と魅惑の里を結ぶことは不可能だと判断された。次に考えられたのは、2つの場所を経由して村役場と魅惑の里を結ぶというものだった。その候補に挙がったのが、村役場からは直接見渡すことが可能だが、魅惑の里から正反対の方向にある「妙音寺原中継所」という場所だった。この妙音寺原中継所は標高が920mで、女鹿平山よりは低いが、吉和村内の山を見渡せる高さは十分である。さらにこの場所には、従来からテレビ棟などが設置されており電源の確保も容易だったことから、最終的にこの場所が選定された。

 次は、妙音寺原中継所から魅惑の里を結ぶ中継地点を探す作業が始まった。この「2つ目の中継所」を探す作業は、やはり机上でポイントを想定してから、実際に山を歩いて探すというものとなった。これらの作業は今年の2月下旬ごろに行なわれたもので、山には1メートルを越す積雪が残っていたこともあり困難を極めたという。最終的には役場の裏にある女鹿平山の中腹地点に焦点が絞られた。  こうして大体の場所を決めたあとは、実際にアンテナを設置する「点」を探す作業になった。この点を探し出す作業は、通常昼間に望遠鏡などを利用して特定する。しかし、ここでも問題が発生した。それは、山に茂る樹木だった。樹木が生い茂る山の中では、いかに相手が見晴らしのいい場所にいようとも、木々に遮られてもう一方の作業者を見つけることができないからだ。そこで、それまでの発想とは逆に、夜間に車のテールランプを元に望遠鏡でそれらを探すという方法を考えついたという。しかしこの作業も、夜間の冷えこみで雪が凍ることにより短時間の作業しかできず、トータルで1週間程度かかったという。

 こうした作業によりアンテナ設置場所をほぼ特定することができ、最後はその場所で動作検証が行なわれた。特殊な高所作業車を用意し、作業員と電波測定器(写真3) を、約15mの高所までクレーンで引き上げ、妙音寺原中継所と魅惑の里との電波状態が最適なアンテナの方向を決めた。



スペクトラムアナライザ
写真3:アドバンテスト(http://www.advantest .co.jp/)のスペクトラムアナライザを使って電波の強弱を計測しながら、アンテナの設置方向を探る

15mの高さというのは、実際に電柱を建ててアンテナを設置する際を想定したのものだ。これにより、現在アンテナが設置されている女鹿平山の標高880m地点を決定できた。

 しかし、まだ問題があった。それは電源の確保だった。すでに100mほど下に別荘地があり、そこまでは電柱があり電気が通っていたが、今回決定した中継所までは電源が到達していなかった。そこで、同社でも製品化している太陽電池や風力発電による無電源中継システムなどを採用することを考えた。ただ最終的には、今回のシステムが公共のシステムということもあり、中国電力の協力により新たに電柱を建ててもらうことで対応できたという。

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ