写真1:村役場の屋上に設置されたハードウェア。アンテナ以外は、風雨から守るために、屋内もしくは専用のボックス内などに設置されている。一番上に設置されているのが、11Mpbs対応の「AIRPORT LAN JET LINK」で、下にあるのが2Mbps対応の「AIRPORT LAN LINK2」の本体となる。外部のアンテナからのケーブルは、写真右上にある穴から内部に入り、それぞれに接続される |
それぞれ「ALJ-2412LNK/Y」という指向性のある八木アンテナタイプ*と、「ALJ-2412LNK/D」という無指向性のダイポールアンテナタイプ(写真2)である。
写真2:電柱の突端に設置された無線LANのアンテナ。写真は指向性のある八木アンテナタイプの「ALJ-2412LNK/Y」。無指向性のダイポールアンテナ「ALJ-2412LNK/D」は、次々ページの図の中にある魅惑の里の写真を参照 |
また今回の事例では、一部の場所で同社の2Mbps対応の無線LANシステム「AIRPORT LAN LINK2」も利用されているが、基本的には11Mbps対応の「AIRPORT LAN JET LINK」が使われている。ではここで、吉和村のネットワークの構成を見てみよう。吉和村には、村内に複数の観光施設や公共施設が点在している。今回の計画では、まずは比較的大きな施設である福祉センターや小中学校などと、「魅惑の里」と呼ばれる観光スポットを中心にインフラ作りが行なわれた(100ページの図を参照)。村役場と魅惑の里は、直線距離にして約4km離れているが、その間には800m以上の山が連なり、直線では見通すことができない状態となっている。
ここで「無線であれば直接見通せなくても無指向性のアンテナにより電波が届くのでは?」と思うのは間違いで、ここに長距離無線LANの特異性がある。確かに、家庭内などで利用する無線LAN製品では、アクセスポイントからアンテナが直接見通せなくとも、無指向性のアンテナを使って通信は可能だ(もちろん電波状況の変化によるスループットへの影響はあるが)。一方の長距離無線の場合、アンテナ間の高低差や距離が、数10メートルからキロメートル単位になる場合が多い。このように距離が長いと、その間にあるさまざまな障害物(山や川などの物理的障壁だけでなく、その他ノイズを発生させるさまざまな要因)からの電波の乱反射が大きな影響をおよぼす。その影響は、アンテナ間の距離が数10~100メートル程度の屋内無線とは比べものにならないほど大きくなる。よって長距離無線LANの場合、電波を拡散させる無指向性よりも、少しでもスループットをよくするために指向性のアンテナを利用するのが一般的だ。ただし無指向性アンテナは、設置なども含めたコストが安いというメリットがあるので、すべてに対して指向性アンテナを利用する必要はない。距離が短めで、アンテナ間の高低差も少ない場合は、コスト的に無指向性アンテナのほうがよい場合もある。なお、今回の事例では1カ所をのぞき、すべて指向性のある八木アンテナタイプのものが利用されている。
関西電機の角屋氏
関西電機の製品営業部取締役部長の角屋敏道氏 |