(株)ネットワールドは13日、“混沌の時代を勝ち抜くネットワークへ”をテーマに、Networld
Winning Forum'98を開催した。フォーラム開催にあたり、同社代表取締役専務 中村康彦氏は、「ネットワークの普及は、情報のあり方だけでなく、企業や社会のあり方そのものを変えようとしている。」とネットワークの重要性と将来性を強調した。次に、ネットワークの現在と未来について慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科の中島洋教授が“ビックバン時代におけるインターネットの行方”と題する基調講演を行なった。
中島氏はまず、「日本は今、ダブルビックバンつまり金融ビックバンと情報通信ビックバンを迎えている」と日本の現状を分析。「ムーア(インテルの創業者)の法則によれば、18ヵ月で情報技術コストは、半分になる。ビル・ジョイ(サン・マイクロシステムズの創業者の一人)の法則ではさらに、10年で通信ネットワークコストが1000分の1になる。今後日本では、規制緩和による情報通信コストの低下と、来年のNTTの分割および海外市場への進出とを背景に、本格的ネットワーク時代が到来する」と述べた。
また、最近の世界的な情報通信ビックバンの象徴として、米ワールドコム社の存在を挙げた。同社は、米国の長距離および国際の電話業界で現在第2位。「ワールドコム社は、10年前たった2人で地方電話を扱う零細企業だった。しかし、通信ビックバンの中で買収と合併を繰り返し、わずか10年で世界最大規模の企業と言われるAT&T社に次ぐシェアを獲得した。これがビックバンの影響力ということだ。」
EC(Electronic Commerce)の台頭も目ざましい。米ジュピターコミュニケーションズ社の調査では、米国のAutoByTel社がインターネットを通じて42万台の自動車を販売、アマゾン・コムがオンライン書店で8740万ドルの売上をあげている。中島氏は「比較的品質が安定していている本、PC、自動車新車、希少商品はオンラインで売れる。中間経費を節約した低価格とWebのブランド力が、売れる要因だ」と分析。電子マネーの運用なども含め、ECは現在の2兆円規模から、2002年には15兆円に拡大するという数字を引用した。
次に、ネットワーク社会が本格化するか否かについて懸念を示す人は3つの問題を挙げていると続けた。「インターネットリテラシーの問題、端末料金、ネットワーク料金の行方である。」これらの問題に対し、「最近の経営トップの電子メール熱は、すごい。’96年の経営陣の電子メール利用率が、24パーセントだったのに対し、’98年には59パーセントにまで上昇している。企業を巻き込んだ電子メールによるコミュニケーションが、さらに加速するのでリテラシー問題は解消。ムーアの法則が指標となるので端末料金も問題ではなくなる。米国ノースカロライナ州のインターネット料金に比べ、日本の津山市はその200倍だが、ビックバン後にはノースカロライナ並みの相場になる。3つの障壁の解消は、時間の問題だ」と指摘した。
最後に「インターネット革命の影響は、BPR(Business Process
Reengineering)という企業環境の変化だけに留まらない。インターネットは、距離と時間の限界を超え、地球規模の巨大市場を生み出す。ネットワークのなかった時代に構築した環境の仕組みはもう通用しない。ネットワークによる新しいプラットフォームの上に社会全体の最適な仕組み作りを考えるというSPR(Social
Process Reengineering)の時を迎えている」として講演を締めくくった。(報道局 篠田友美)
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