インターネット標準となる文書RFC(Request for Comments)として、2000年4月1日付けで「RFC2795 The Infinite Monkey Protocol Suite (IMPS)」が発行された。RFCは、Internet Society(ISOC)の下部組織であるIETF(Internet Engineering Task Force)を擁するIAB(Internet Architecture Board)が発行しているドキュメントであり、多くのインターネットの技術的な文書や、運用方法などのドキュメントが提供されている。 今回発行されたRFC2795では、無限数の猿をタイプライタの前に座らせて、シェイクスピアの全作品や面白いTVのシチュエーションコメディを書かせるためのシステムを実現するためのプロトコルスイート「The Inifinite Monkey Protocol Suite (IMPS)」を提唱している。
文法どころかシェークスピアさえ知らない猿にランダムにタイプライタを打たせて有意な文章ができあがるか、という疑問は確率を論じる際によく挙げられる例である。このIMPSでは、それをシステマティックに実現する方法を提示している点で非常に興味深い。
IMPSによるシステムは、猿に装着するインターフェイスであるSIMIAN (Semi-Integrated, Monkey-Interfacing Anthropomorphic Node)と、猿を装備しタイプライタに打たれた結果などを管理するZOO(Zone Operations Organizations)、さらに文学的なテキストを評価するBARD(Big Annex of Reference Documents)と、新たなテキストを評価するCRITIC(Collective Reviewer's Innovative Transcript Integration Center)などからなる。IMPSでは、その間のやり取りに利用されるプロトコルを詳細に定義している。
IMPSでは、IP(Internet Protocol)にIPアドレスがあるのと同様に、先に紹介したSIMIANやZOOなどのオブジェクトを一意に識別するユニークなIDが必要となる。しかし、IMPSでは、「無限数の猿」と「タイプライタ」によるシステムを前提としているため、他のプロトコルのように、IDとして有限数を利用することはできない。それを解決するために、IMPSでは、I-TAG(Infinite Threshold Accounting Gadget)というエンコーディング方法を採用している。
詳細は、RFCを参照していただきたいが、実際のやりとりのイメージをお伝えするために、ZOOであるSanDiegoと、猿BoBoに付けられたSIMIANであるBoBoSIMとのKEEPER(Knowledgeable and Efficient Emulation Protocol for Ecosystem Resources)によるやり取りを紹介しておこう。
SanDiego> STATUS BoBoSIM> DISTRACTED SanDiego> TYPE BoBoSIM> REFUSE SanDiego> TYPE BoBoSIM> REFUSE SanDiego> TYPE BoBoSIM> GONE
これによると、猿のBoBoは、自意識と独立心を持ち始め、ZOOからのタイプせよとのリクエストを拒否していることがわかる。
編集部としては、このシステムが実現すれば、第2のLinuxカーネルを独自に実装することも可能であると注目している。
なお、RFCでは、ほかにも革新的なアイデアを持ったドキュメントが毎年4月1日に発行されている。興味のある読者はぜひ、過去に発表されたRFCを参照していただきたい。その多くは、いまだ実装されておらず、実装にチャレンジして一躍名を挙げてみてはいかがだろうか。