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「つみきのいえ」でアヌシー映画祭&メディア芸術祭の2冠を達成

加藤久仁生監督に聞く、ネットアニメの現在地

2009年02月06日 20時00分更新

文● 盛田 諒/トレンド編集部

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約10分間のアニメ製作にかかったのは約1年間

―― イメージからいよいよ作品を作ることになると、もちろん1人ではなく、アニメーターとの共同制作になると思います。全編を見ると10分強のショートアニメではありますが、どれくらいの時間、どれくらいの人たちと一緒に作り上げていったんでしょう。

加藤 もちろんレイアウトは自分で組み上げますが、そこから先は自分でやる場合、誰かにお願いする場合と分かれていきます。 動画作業はメインの作画スタッフ3人が付きっきりでやってくれ、あと外のプロダクションの3人くらいにお願いしています。

 あとはデジタルの仕上げや、鉛筆のタッチの仕上げ、そして編集の方がいて、という感じです。製作時間は、これだけの人数なので短くなるはずだったんですが……(笑) 動画にあわせて、影のタッチをすべて鉛筆で仕上げるという気の遠くなる作業にものすごい時間がかかってしまいました。「本当に終わるのか」と現場もざわつきっぱなしでした。

 結局なんだかんだで、はじめの1枚絵を作ってから、企画からの総製作期間はざっと1年間くらいかかっちゃいましたね。今までは2~4ヵ月のスパンだったんですが、これまでやってきたことの集大成というかベストを作りたいという意味で、無理を通してもらいました。

「つみきのいえ」より海のシーン。鹿児島出身の監督は海が好きだという。今回は波の描写がなかったのがちょっと残念とのこと (C) ROBOT


―― 集大成というのを「ショートアニメの集大成」と考えると、ファンというのは贅沢なもので「次は長編に?」と考えてしまうのですが、挑戦したいという気持ちはありますか。

加藤 具体的に構想があるわけではないんですが、なんとなく長く出来るものがあれば、とは考えています。タイミングとネタ次第、というところでしょうか。

 それと今回のように「誰かと一緒にやる」スタイルではなく、あくまで脚本から何から「1人でやる」という、作家としての方法をあらためてとってみたいという気持ちもあります。

 やっぱり作家ではなく「監督」としてイメージを誰かに伝えながら作っていくのは難しいという気持ちもあるし、自分が作家として、作品そのものに1人きりで向き合いたいという思いもあるんですよね。

同上。壁や床に落ちる影の描写はすべて、1枚1枚がアニメーターによる手書き(!)というすさまじい労力が隠れている (C) ROBOT


―― 作家として、今回のメディア芸術祭で気になったアニメ作品はありましたか。

加藤 残念ながら選からは漏れていたんですが、「福助が空から落ちてくる」というコンセプトのショートアニメが面白かったです。これから何か楽しいことをやってくれるんじゃないかという期待が持てる作品でした。あとアニメではないですが、「TENORI-ON」も観ていて楽しそうでした。


―― 最後になりますが、今いちばんしたいことは何ですか? どこかへ旅に出たいとか、そういったことでもいいんですが。

加藤 旅には行きたいですね。行くとしたら「港のある場所」がいいです。瀬戸内海とか……ざっくりしてますけど(笑) 海はやっぱり好きなんですよ。今回は波がほとんど描けなかったので、次作では描きたいですね。波というテーマそのものは、いずれちゃんとした形で1度挑戦してみたいなと思っています。


―― 北斎の「神奈川沖浪裏」をそのままショートアニメにするとか?

加藤 いいですね、それいただきですね(笑)

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