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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第17回

CESで見えた「2009年、ノートパソコンはこうなる」

2009年01月26日 13時18分更新

文● 西田 宗千佳

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「Yukon」が見せた、モバイルノート低価格化のシナリオ

 Netbookの隆盛は、明らかにもうひとつのトレンドをもたらしつつある。それは「他のノートパソコン市場の侵食」だ。

 ひとつの象徴となるのが、ASUSTeKの光学ドライブ搭載Netbook「Eee PC 1004DN」だ。光学ドライブを内蔵可能という以外、スペックとしては特に目立った部分はない。しかし、今後はNetbookでも「光学ドライブ搭載モデル」が増えるとすると、一般的なノートパソコンとNetbookを分ける壁がひとつ減ることになる。

 なお、CES閉幕直後に日本では、マウスコンピューターが光学ドライブ搭載Netbookを発表した。日本は一歩早くその流れに乗っているといえるだろう。

ASUSTeKの光学ドライブ搭載可能Netbook「Eee PC 1004DN」

ASUSTeKの光学ドライブ搭載可能Netbook「Eee PC 1004DN」。光学ドライブは「搭載オプションあり」という扱いだが、おそらくは搭載モデルが中心となるだろう

 もちろん、Atom系のCPUを使ったNetbookは、速度の面で一般的なノートパソコンに比べ劣る。「それでもかまわない」と言える差かどうかは、正直微妙なラインだ。2009年中にその差が、「気にならない」レベルへと埋まるというわけでもなさそうだ。

 だが他方で、別のルートから低価格化は進行しつつある。AMDが「Yukon」のコード名で開発していた、低価格モバイルノート(米国流にいえばウルトラポータブルノート)向けプラットフォームは、このジャンルに大きな影響を与えるだろう。

Yukonプラットフォーム採用ノート「HP Pavilion dv2」

Yukonプラットフォーム採用ノート「HP Pavilion dv2」。写真は、光学ドライブをつなげてのビデオ再生デモ。位置付けとしては、「エンターテインメント性能を犠牲にしないモバイルノート」ということのようだ

 CES開幕前日の1月6日に発表された「HP Pavilion dv2 Entertainment Notebook PC」は、いわゆる「フル機能」の12.1型ノートパソコンでありながら、価格はNetbook+α程度に収まる699ドル。しかも、チップセット内蔵GPU「Mobility Radeon HD 3410」にはMPEG-4/AVCの再生支援機能が搭載されており、外付けのBDドライブさえつなげば、この価格のノートパソコンでありながら、BDビデオの再生さえこなす。これを搭載する製品では、「速度が遅い」と不満を感じる人は、おそらくかなり少ないだろう。実際会場でも、HP Pavilion dv2での映像再生に見入る来場者が目立った。

 HP Pavilion dv2そのものは、重量が1.7kgと重めで、日本人の目で見れば、「まだまだ普通の低価格ノート」という印象を受ける。

 だが、Netbook的なものづくりに慣れたメーカーは、Yukonのようなプラットフォームを採用することで、フル機能モバイルノートを容易に製造できる。「高付加価値パソコン」の代名詞であったモバイルノートですら、低価格化の波にさらされるわけだ。

 同様の製品を狙ったプラットフォームは、AMDだけでなく、インテルも企画中と言われている。両者のプラットフォームが出そろえば、2009年中頃から後半に向けて、「新しい低価格モバイルノートが一気に出そろう」ことになるだろう。

 注目すべきは、ちょうどそれに前後してWindows7が登場するだろう、ということである。Windows7になったからといって、劇的にNetbookの性能が向上することはない。しかし、「低価格化を狙ってXPを搭載するために、わざとスペックを落とす」必然性はなくなる。

 結果的にWindows7の登場は、「普通のノートパソコン」と「高付加価値モバイルノート」の地位をさらに危うくするだろう。その時、日本メーカーはどこに付加価値を見いだせばいいのだろうか?

 VAIO type Pが同じタイミングでCESにおいて発表され、来場者から注目を集めたことは、非常に象徴的な出来事といえるのではないだろうか。


会場で見つけた面白いモノ

BDドライブ搭載NAS

LG電子が展示した、BDドライブ搭載NAS。BDにNASの内容をバックアップできるほか、BD内のファイルをNAS内に転送できる。市販のBD映像ソフトをリップしたり、映像ディスクを作成できるわけではない

超小型PCの代表格「OQO」もモデルチェンジ

超小型PCの代表格「OQO」もモデルチェンジ。世界初の「有機EL搭載パソコン」となった。CPUなどもAtom Z540+US15Wに変更され、パフォーマンスが向上したという

小型PCファンの密かな注目株は、韓国UMID社の「mbook M1」

小型PCファンの密かな注目株は、韓国UMID社の「mbook M1」。Atom Z520+US15Wという組み合わせで、重さは315g。「小さくて軽いことが正義」ならば、type Pよりこっち? 韓国では2月~3月に出荷予定で、日本市場へも投入の予定アリとのこと


筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」。


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