2008年12月12日、iPhoneに「産経新聞アプリ」がやってきた。
早い時間からニュースメディアやブログで紹介され、新聞ビューワーアプリとして1週間で相当数のダウンロードを記録し注目を集めている。アプリのダウンロードも、毎朝5時に配信される朝刊データのダウンロードも無料。新聞の新しい形として登場したこのアプリの狙いと、未来はどこにあるのか?
大きな紙と親和性の高いiPhone
産経新聞アプリは、1面ごとの記事を大きな1枚の紙としてiPhoneの画面で見渡せる。この段階で、大見出しや大きめの図版はちゃんと識別することができる。ダブルタップやピンチの動作で拡大していき、記事が読める大きさまで拡大すれば、あとはタッチしながら紙をたぐり寄せる感覚で見ていくことができる。
この産経新聞アプリを使って思い出したことがある。初めてiPhoneを使ったときのことだ。
僕がiPhoneを初めて使用したのは2007年9月、秋口のニューヨークだった。アッパーウエストで以前行ったことがあるアジアンフードのお店を探していたのだが、お目当ての店があった場所には違う店が。正確な店名も忘れていたので、iPhoneで「asian restaurant」と探してみたら、何本も赤いピンが立って、店が近所の別の場所へ移動したことを知った。
そのときは自分の現在位置と目的地をiPhoneで確認しながら、3ブロックほど歩いて、おいしいランチにたどり着けた。同じような使い方を2008年の日本のiPhoneユーザーの多くは行なっているし、必要であればストリートビューで現実の世界を掴むこともできる。
これが大きな紙の地図なら、折りたたんだり目的の場所をリアルタイムで探すのは面倒だし、細かい部分は見にくい。ただし、エリアの全体像を把握してルートを見つけるには便利だ。
iPhoneのマップ機能ならタッチで移動したり、タップして拡大したりすることで、大きな紙の地図と、ガイドブックの地図の便利さや検索性を兼ね備えることに成功している。
非常に便利なiPhoneのマップ機能だが、僕がここで気付いたことは、iPhoneのインターフェースは、大きな紙で提供されていた情報と非常に高い親和性を持つという点だ。紙をたぐり寄せたり、詳しく見たり、折りたたんだり。こういう作業が伴う大きな紙の情報を、iPhoneなら本当にスマートに使いこなせる。そして、このインターフェースは、新聞にぴったりだった。
通勤電車で観察していると、僕よりも年上のサラリーマンは、本当に器用に新聞を読んでいる。新聞を横1/2に折ったり、1/4に折ったりして、紙幅をセーブしながら的確に読みたい記事を進んでいく。もっとも、僕はいくら練習しても新聞がくしゃくしゃになってしまうので、机の上に広げて読むけど。
新聞の扱いすらうまくできない、ましてや新聞をほとんど読まないワカモノにとっては、ポケットの中に入っているiPhoneで紙の新聞が再現されると、もっと新聞が身近になるかもしれない。

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