サプライチェーンに都市鉱山を組み込む
個人や事業者の努力によって、都市鉱山を取り巻く状況は前進しつつある。だが、全体としてはまだまだ課題がある。
物質・材料研究機構の原田氏は「環境負荷の低減や、廃棄物を減らすという考え方は広まっています。しかし、それは義務感としてのリサイクルです。“鉱脈”を見つけるということは、廃棄物でなく資源としてとらえるということ。そこに価値を見いだし、ビジネスとしてのサプライチェーンを作り出していかねばなりません」と語る。
購買、生産、流通、販売といった各プロセスを有機的に組み合わせ、価値の最大化を図るサプライチェーン。そこにリサイクルを組み合わせるという先進的な取り組みを行うのは、OA機器を手がけるリコーだ。
同社は、製品設計から始まり、製品としての再生、部品の再生、材料の再生といったサイクルの全部分で、環境負荷の把握と削減、それに伴う関係企業とのパートナーシップや情報の可視化を実現している。社会環境本部本部長の谷 達雄氏は語る。
「このまま世界全体の需要が伸びた場合、金属資源は2040年ごろに枯渇する可能性があります。これまでのように、資源を使い続けるわけにはいかず、システムを変えなければなりません。ですが、省資源、省エネルギーは、省コストにつながります。つまり、企業にとっても競争力になるのです」。
同社がこうした試みを開始したのは、今から15年前の'93年にさかのぼる。
「環境に対する取り組みは、これまでは法律がそうなっているから、他社もやっているからなど、どちらかというと受け身の対応でした。しかし、環境保全そのものが経済活動であるととらえるべきです」(谷氏)。
目指したのはリサイクル事業そのものの黒字化だが、決して簡単ではなかった。
「外部から納品される部品の価格は意識できても、そこに使われている梱包材の廃棄費用には目が行きにくい。あるいは、製品を資源ごとに分別しようにも、分別にコストがかかりすぎる。そういったことを個々に検証し、ルールを作りながらリサイクルシステム全体の設計を行う必要がありました」(谷氏)。
システムの設計には3年かかった。単純に分別しやすい製品をと言っても、製品の設計者にとっては負担になるために、当然不満も出てきた。そういった意識から変えていかなければならなかったという。
それから2年かけて、同社は“コメットサークル”と名付けたリサイクルシステムの概念を独自に構築し、200項目におよぶ環境に配慮した製品設計上のルールを策定。再生機の販売やリユース部品の使用に着手し、2006年度にはついに事業として黒字化を実現した。
「環境と経済は対立するものだと考えられてきました。しかし、地球を変えられない以上、社会のシステムが変わらなければなりません」(谷氏)。
環境経営がうたわれる昨今。企業が環境保全と経済活動を両立するためにはまだまだ多くの知恵が必要で、及び腰では実現できないのだ。
本記事は月刊ビジネスアスキー 2008年12月号 特集3から抜粋・再編集したものです。
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