日本が資源大国になると話題になった「都市鉱山」。廃棄された電子機器や製造工程のスクラップなど、ゴミの山に埋もれた資源を掘り出して、リサイクルする取り組みのことだ。この都市鉱山がいま、現実のビジネスとして動き始めている。その現状を探った。
輸入するのではなく“回収”する
富山県高岡市にある、リサイクル事業者ティーエムシーエムアールの工場内。水蒸気の立ちこめるなか、板状の電極をクレーンで引き上げると、その表面には銀色の金属が分厚く積み重なっている。これは、水溶液から電気分解によって回収された高純度のコバルトだ。
コバルトは、携帯電話やリチウムイオンバッテリーなどに使われ、供給のほぼ全量を海外に依存していることから、国家備蓄の対象にもなっている。
だが、ここで生産されるコバルトは、輸入されたものでも、わずかに産出される日本国内の鉱山のものでもない。“都市鉱山”から産出されたものなのだ。
実はニッポンは資源大国?
マルコポーロが“黄金の国”と紹介したように、日本はかつて鉱物資源の豊富な国だった。江戸時代、石見銀山から採掘された銀は、ヨーロッパの銀の価格を押し下げ、流出する銀に頭を悩ませていた江戸幕府が代替輸出物としたのは、同じく鉱物資源の銅だった。
翻って現在の日本はというと、鉱物資源のほとんどを輸入に頼っている状態だ。資源エネルギー庁の調べによると、1970年の段階で246あった鉱山も、2007年の段階でわずか11カ所を残すのみ。売るほどあったはずの銅は、現在では99.9%(2001年)を輸入に依存するまでになっている。
だが、最近になって、実は日本には驚くほど巨大な“鉱山”が存在するのではないかという意見が出てきた。
2008年1月、独立行政法人 物質・材料研究機構は「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」と題するレポートを発表した。それによると、日本国内でリサイクルの対象となる金属を合計すると、世界埋蔵量の1割にも達するものが数多く存在するという。
具体的に見てみると、金は6800トンで世界埋蔵量の16%。銀は6万トンで22%、インジウムは1700トンで15.5%、スズは6万6000トンで11%。バッテリーなどに使われるリチウムに至っては、地球全体で1年に消費する量の7倍以上の量が、実は日本にあるというのだ。このレポートによると、日本は「リサイクル資源大国」というこ とになる。
“都市鉱山”とは、こうした国内にあるリサイクル資源のことを指している。
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