大きなボタンとシンプルな機能で、シニア以外にも「使いやすい」と人気の高い、富士通製の携帯電話機「らくらくホン」。そのらくらくホンの使いやすさや安心感を、パソコンでも実現しようというのが、同社が6日に発売したシニア/初心者向けパソコン「FMVらくらくパソコン」(FMV-BIBLO NF/BR)だ。
パソコンの世帯普及率はすでに85%を超えているが、総務省の調査によると、60歳以上の中高年層のパソコン使用率は、それより若い世代に比べると低く、パソコンに対する意欲や興味は高いものの、積極的に使用するには至っていないのが実情だ。同社は今夏に、シニア層向けメニューソフトを搭載した「FMVらくらくパック」を発売しているが(関連記事1)、FMVらくらくパソコンはハードウェア面も含めて、シニア/初心者に使いやすいパソコンを目指した製品だ。
FMVらくらくパソコンは、2008年秋冬モデルの「FMV-BIBLO NF/B70」(関連記事2 2ページ目)をベースに、新開発のキーボードとメニューソフト、そして専用サポートサービスを組み合わせたものだ。CPUはCore 2 Duo P8400(2.66GHz)を搭載。メモリー2GB、HDD 250GB、15.4型ワイド 1280×800ドットディスプレーなど、スペック的にはオーソドックスで過不足のない製品だ。
一目見て分かる特徴は、文字が大きく、色分けされたキーボード「らくらくキーボード」だ。数十種類の試作品を実際にシニア層向けパソコン教室に持ち込み、ヒアリングを重ねて完成したというこのキーボードは、まず英数キーの文字が大きく、非常に読みやすい。シフトキーやよく使う記号(!や%など)は赤文字で記されているほか、EnterキーやBackSpaceキー、Spaceキーなどには、大きな日本語で機能が記されている。初心者がまずつまづきやすい、キーボードに対する抵抗感を払拭する試みだ。
英字キーは目立つように白いキートップになっているほか、ローマ字入力で使用頻度の高い母音やLキーは、さらに目立つように別の色で色分けされている。大きな文字と相まって、キーを探してまごつくことは少ないだろう。さらに、ローマ字入力のキーを印刷したポップも付属していて、パソコンの横にでも置いておけば、迷ってもすぐにキー操作が分かる。
また、ノートパソコンではよくあるFnキーとの組み合わせ操作を廃したり、かな漢字変換のオン/オフ操作を、キーボード上のワンタッチボタンで行なえるようにするといった工夫も行なわれている。
ソフト面の工夫も見逃せない。シニア層がよく使う機能に絞り込んだ「らくらくメニュー」を用意。ウェブブラウズやメール、ワープロソフトの起動、乗り換え案内や地図表示など、利用頻度の高い(同社調べ)機能を簡単に選べるようになっている。
らくらくメニューには、ウェブ検索を使いやすくする「かんたん検索」という機能も備わっている。調べたいことが漠然としている人に、いきなり「キーワードを打ち込んで検索しろ」というのは敷居が高い。そこで、検索に使われやすいキーワードをボタン上に配置して、画面からボタンを選んでいくことで、目当ての検索が行なえるようにしたのが、かんたん検索である。
例えば、「浅草でお寿司を食べたい」という場合は、「食べる」→「すし」→キーワード入力で「浅草」という手順を取ると、@niftyの検索サービスを使って、浅草の寿司屋の情報が検索される、という仕組みだ。
OSはごく標準的なWindows Vista Home Premium SP1だが、ウインドウのタイトルバーやボタン、メニューの文字サイズなどが、デフォルトで大きく設定してあり、視力の弱った人でも使いやすくなっている。
サポートサービスに関しては、1年間無料の購入者向け専用電話相談窓口を用意。ベテランの専任スタッフがただ問い合わせに応じるだけでなく、使い方提案やリモートでのサポートを行なってくれる。また、見やすいデザインを採用した専用ホームページや、有料の訪問サービスなども用意される。
「シニアにやさしい」は「みんなにやさしい」?
FMVらくらくパソコンは、特にシニア層への使いやすさに配慮した製品であるが、そこに盛り込まれた工夫は、シニアや初心者以外にも使いやすいのではないかと思うものが多く見られる。
例えばキーボードだが、大きな文字と色分けのおかげで、目当てのキーを探しやすいし、機能を日本語で書いてあるのも分かりやすい。単品のキーボードとして商品化したり、この製品に限らずにFMVシリーズの標準キーボードに採用してもいいのではないか、と思うくらいだ(あるいは、直販サイトである「富士通 WEB MART」では選べるようにしておくとか)。
文字の大きく読みやすいマニュアル類や、ローマ字入力表といった工夫も、シニア向けに限らず役立つものだろう。欲を言えば、タッチパネル式のディスプレーなど、マウスやパッドに慣れない人でも使いやすい入力機器の活用などもしてほしいところだ。
価格はオープンプライスで、予想実売価格は17万9800円前後とのこと。いきなり大ヒットする製品ではないかもしれないが、パソコンの使いやすさを高める工夫として、高く評価したい取り組みだ。