国家戦略を変える“都市鉱山”
鉱物は、鉱山から採掘された状態では、さまざまな金属や不純物が混ざり合っている。それを精錬して、はじめて純度の高い金属ができ上がる。同じように、金属と不純物の混ざった金属スクラップを精錬すれば、理屈の上は純度の高い金属を得られるだろう。だが、この都市鉱山話、廃棄物を集めて資源にするという都合のいい話は、どこまでうまくいくのだろうか。
エネルギー資源・鉱物資源の開発や国家備蓄を行っている独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の目次英哉氏は「自動車のバッテリーなどに使われる鉛は、使用量の半分は回収され、金属として再資源化されています。銅は現在10%ほどですが、将来的には40%くらい回収できると考えています」と、すでに成果を上げていることを語る。
ただし、金属によって、回収・再資源化しやすいものとそうでないものがある。
「携帯電話・デジタルカメラの電子部品、液晶などには、希少なレアメタルが含まれていますが、微量なのでなかなか回収しにくいのです。微量だが価値の高いこれらの金属を再利用するには、1カ所に大量に集め、一挙に処理するシステムの構築が重要です。そして現在、レアメタルの多くは中国で採掘されますが、中国の経済発展や産業の活性化を考えれば、今後消費の中心も中国ということになってくるでしょう。必要なレアメタルが日本になかなか入ってこないということも考えられます。そうなった場合のためにも、国家戦略として都市鉱山は重要なのです」(目次氏)。
'98年に家電リサイクル法が施行されて以降、日本でも資源リサイクルへの意識は高まっている。だが一方で、軽トラックで廃家電を違法に回収する業者の存在が問題になっている。こうした通常のルートを外れて回収されたものが、不法投棄の温床になると指摘されているからだ。
資源となるべきものがゴミとして投棄されているような状況で、果たして都市鉱山などが本当に稼働できるのだろうか? 材料分野の研究開発を行う物質・材料研究機構の原田幸明氏の見解は厳しい。
「現状は、都市鉱山の可能性を見いだしたにすぎません。“鉱脈”を見つけたわけではなく、砂金を拾っているといったほうがいいのではないでしょうか」。
(その2に続く)
本記事は月刊ビジネスアスキー 2008年12月号 特集3から抜粋・再編集したものです。
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都市鉱山を掘れ!! (その3) -
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