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桜子のビジネスリーダーズインタビュー 第4回

IT業界で働く桜子のビジネスリーダーズインタビュー

今、ネット社会に何が必要なのか!?

2008年09月24日 04時00分更新

文● 桜子(Interviewer&blogger)

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メディアのあり方――インターネットのプラスとマイナスの面

 飽戸氏は、Googleを使わない日は一日もないというほどネットを愛用している。だが、心配なこともあるのだという。

飽戸 テレビ・新聞の一番の命はジャーナリズム――取材と編集です。ところがGoogleは取材も編集もせず情報を並べて出す。それらは取材や編集がいいから一番上にヒットされて閲覧されるのではありません。コマーシャルベースで情報の順序が決まります。そういう時代になってくるとジャーナリズムは困るわけですね。本当にいいニュースがあっても、後ろのページなら誰も読まないわけで、一般の庶民に伝わる情報というのが違う形で広まっていく。プラスもあるけどマイナスもあって、まだ見通しが立たっていません。そのことによって非常に大事なものが失われていく危険性もあると思っています。

 一方、インターネットの問題として、大学では「コピペ問題(注1)」が今取り沙汰されているが……。

飽戸 教育という面でも、インターネットは甚大な影響力を持っていると思います。光と影の、影の方も一緒に見ていかなきゃいけないでしょう。

注1
コピペ問題とは、学生がインターネットを活用してコピーとペースト(貼り付け)でレポートや論文などの課題を提出すること。日本の大学だけでなく各国でも問題となっている。

インターネットは子供にとって「悪」なのか?

桜子 教育においてネットの光と影の部分を見極めていくというお話が出ましたが、子供とインターネットメディアの関係などはいかがでしょうか。

飽戸 テレビが暴力番組を放送するので、その影響で子供が暴力を振るうのではないかということが、一時期、問題視されましたよね。心理学者がそれについて研究したところ、結局暴力的な番組を一年間見ていた子と見ていなかった子では、ほとんど差が出ないことが判明しました。だから大人が考えているほど、ストレートに子供にメディアの影響が出ているわけでもないでしょう。

 結局、子供というのは自分自身で取捨選択をして、必要なものを取り入れ、不必要なものを自分で削除しているのだと思います。テレビやゲームの影響は若干あるかもしれないけれど、調査結果を見るとそういう風に言えると思うんですね。だから、暴力などの問題はインターネットなどのメディアの責任じゃなくて、家族や友人関係といった人間関係が希薄になってしまったことにある。子供たちが、相談する相手もいなくて思い悩んで突進してしまっている結果ではないかと考えています。

桜子 意外でした! インターネットは使っちゃいけません、という発想かと。

飽戸 違います。子供は抵抗力を付けなくてはならない時代ですからね。100%暴力番組を見せないでいると、初めて見たときにショックが大きいわけでしょ? もし見ていれば免疫性ができるかもしれないわけですよね。

桜子 実は私はミッション系の学校卒で、学生時代に聖書の「悪事においては幼子であれ」という言葉を自分なりに解釈して、悪いことはなるべく知らない方がいいんだと思っていたんですが。

飽戸 それで一生過ごせればいいけど、そのままでは世の中で生きていけないでしょう。だからある程度の免疫力がないと。僕は、免疫力は非常に大事だと思うんですね。

 僕らの子供の頃は、年中取っ組み合いのケンカを毎日のようにしてましたね。僕なんか田舎へ疎開したとき都会者だと苛められたんですね。学校からの帰り道10人位に襲われて。

桜子 ……それは可哀想に。

飽戸 でもね、やったやつの顔を覚えていてね。そいつが一人で歩いていると後ろから襲うんですよ(笑)。そしてね、抵抗力がついてくるんです。要するにどの位まではやってもいいと分かってくる。子供のケンカというのは“この程度”という加減を身に付けていくんですね。げんこつで殴るのはいいけど、煉瓦でゴンと殴ったらいけない、とかね。免疫力ができて適切に使う能力が身に付いてくる。今の子はね、ケンカしない。大学生でもほとんど口論しない。僕は、もっと取っ組み合い、ケンカをしなさい、と言うんだけど。

 相手を傷つけないことは非常にいいことなんだけど、傷つくまい、傷つけまいと非常に委縮しているから、どこまでやってどこまでやっちゃいけないのかというルールが身に付いていないんですね。

桜子 うーん、その話を聞くとギクリとしますね。私自身、思い当たるんです。誰かと衝突するくらいなら小さく縮まっていた方がいいって思ってしまう。

飽戸 そういうことでしょ(笑)。攻撃されたときの防衛の技術も身に付かない。それで爆発しちゃって殺しちゃう。まあ、一つの考えですけれど、僕は子供には“ケンカさせろ”と。

桜子 てっきり今日は、インターネットを使うときの心得(10カ条)をうかがうのかと思っていました。これやってはいけません、これはダメとか。

飽戸 いや、だからね、やっていいこと悪いことの“範囲”を教えてやることは絶対必要ですよ。

次ページ「日本人の『バチ』の精神――秋葉原事件の背景」に続く

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