ライターでもない、記者でもない一介の女子社員が、IT業界を含め、各界の著名人に体当たりインタビューをして話題を呼んだブログ「VIVA!桜子の超気まま日記」。ASCII.jpでは、ブロガー桜子氏に超気まま日記のASCII.jp版インタビューをお願いした。経営戦略の話よりも、もっと身近な、仕事への考え方や生活スタイルについて、桜子氏が聞く連載第12回目。
電通の「日本の広告費」によるとネット広告が、ラジオにつづいて雑誌も抜いたという結果が出た。ネット広告が今後その重要性を一層高めていくことは間違いない。インターネットを用いた広告ではクチコミが特に重要になってくるが、かといって「自社商品をクチコミで流行らせたい」と思っても狙いどおりにコトを運ばせるのはなかなか難しい。
そんな中、ソニーのビデオカメラ“ハンディカム”のプロモーションサイト「Cam with me」がネット上で大きな話題を呼んだというので仕掛け人をたどってみたら、実は知り合いだった。というわけで、その仕掛け人である博報堂エンゲージメントビジネス局の堀 宏史氏を訪ねた。
女の子が成長していく過程をネット上で追体験できる
「Cam with me」は子どもの成長過程を“ハンディカム”で録画して思い出を残す疑似体験ができる、Flashによるムービー型サイトである。Enterボタンを押すとタイムカウンターが動き始め、季節の移り変わりとともに赤ちゃんはあっという間に少女、そして大人の女性へと成長していく。
堀 このサイトは通常のビデオ再生なら当然あるべき停止、巻き戻し、スキップといったボタンがないことがポイントなんです。子どもの成長に連動して時が過ぎ去っていくのは、巻き戻せないということを、よりリアルに実感してもらうために、録画ボタンだけを用意したんです。さらに、余計な情報は一切載せず、ユーザーが映像の提供する世界に没入しやすい配慮をしました。
早速私も体験してみた。途中で録画ボタンを二度押し、女の子が26歳になると花嫁姿になってタイムカウンターが止まった。26歳でゴールインって、今どき早過ぎない? などとあらぬ方向に思いがおよんだが、竹内まりやさんの「毎日がスペシャル」が流れた瞬間、広告の世界へ一気に引き戻された。
桜子 曲が流れ始めるタイミングが絶妙ですよね!?これって、自分で作業(録画)しているから、まるで主人公かのように気分が盛り上がりますよ!
私はサイトが思いのほかおもしろかったので、その安堵とともにとても興奮したことを話していたら、最後に“あなたが残さなかった思い出48/50”というコピーでエンディングを迎えた。
堀 この意味は「あなたが撮った映像は2つだけ」というのではなく「あなたが残せていなかった映像は48もあるよね。だからハンディカムをまわしておこうよ」ということなんです。(リアルな)人生は追体験できないですけど、ここで疑似体験していただき、「日常で他愛ないシーンを撮り逃していた。後で見たらかけがえのない思い出になるのに」と、感じてほしかったんです。
実はクチコミで広がっているとは聞いたものの、広告代理店が仕掛けたものだし、その噂ってホント?という疑いの目を持っていた私だったが、サイトの完成度は高く、疑っていたぶんだけとても感動した。
次ページ「クチコミに最初に重要なのは人の心を動かすこと」に続く
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