ライターでもない、記者でもない一介の女子社員が、IT業界を含め、各界の著名人に体当たりインタビューをして話題を呼んだブログ「VIVA!桜子の超気まま日記」。ASCII.jpでは、ブロガー桜子氏に超気まま日記のASCII.jp版インタビューをお願いした。経営戦略の話よりも、もっと身近な、仕事への考え方や生活スタイルについて、桜子氏が聞く連載第13回目。
私たちの日常生活にあふれる音が、エネルギーになる。今まで迷惑な存在でしかなかった騒音や振動が、生活に役立つエネルギーに変わるという夢のような話が実現しつつある。
慶應義塾大学の博士課程に在籍する速水浩平氏(27才)は、音や振動をエネルギーに変換させる発電装置を大学在学中に発明し、2006年に株式会社音力発電を起業した。
その装置を使った実証実験の代表格が、首都高速中央環状線の五色桜大橋のLED(発光ダイオード)照明だ。車の振動に反応してライトアップされる仕組みは、速水氏の発電方式が一部用いられている。
私はこのニュースを知って、この研究開発が現役学生の若者の手によるものと聞いて興奮した。記事などを読むと、彼はどうすれば世の中がよくなるかを子供の頃から考えて起業したという。今どきそんな真面目な人物がいたことに驚きを覚えて、慶應藤沢イノベーションビレッジ(SFC-IV)内にある音力発電のオフィスを訪れた。
高校時代から起業を志し、慶應のSFCへ進学する
桜子 音や振動をエネルギーに変える、というアイデアは小学生のとき思いついたそうですね。勉強が好きなお子さんだったのですか?
速水 はい。色んなものに興味があって、よく考える子供でした。特に理科が好きで、授業中にモーターが発電すると聞いて、スピーカーからの発電を思いついて、進学するかたわら、そのことをずっと考えていたんです。
桜子 起業への志は高校時代からあったとか?
速水 最初は医師志望でしたが、予備校の先生が「これからは大学発ベンチャーがおもしろいよ」と。人から与えられたことをやるのがあまり好きな性格ではないので、自分で会社を作るのは面白いなと思ったんですね
そこで、速水氏は慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)を目指した。SFCは企業や官公庁と共同研究を行う産学連携のSFC研究所があり、起業への環境が整っている。同大学の環境情報学部に入学した速水氏は音や振動に狙いを定め、大学2年の夏から本格的に研究を始めた。
桜子 研究発表をしたら周囲が好反応を示したそうですね。それが速水さんにとっての転機でしたか?
速水 確かにそこで評価を受けたから研究が続いているかな、とも思うのですが、私は一度やり始めたら納得するまでやる性格で、別にそれが無くても続けていたかもしれません。それに研究会の中間発表では「音で発電なんてやめた方がいい」と反対されたんです。それでも半年間続け、最終発表で同じ人から「凄いじゃないか!」と褒められたんです。
速水氏は「そりゃあ、もう、うれしかったです」と当時を振り返った。
速水 うれしかったというのは原動力になりました。「頑張ってよ」と言ってくれる人が増え、研究室の先輩からも「今どんなことやってるの?」と話しかけられ、興味を持たれるようになった。ちょっとしたそんなコミュニケーションで勇気づけられますよね。
次ページ「次世代発電界のインテルを目指す」に続く
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