IT業界で働く桜子のビジネスリーダーズインタビュー
高校野球のWeb的楽しみ方を生んだasahi.com
2008年08月06日 04時00分更新
ライターでもない、記者でもない一介の女子社員が、IT業界を含め、各界の著名人に体当たりインタビューをして話題を呼んだブログ「VIVA!桜子の超気まま日記」。ASCII.jpでは、ブロガー桜子氏に超きまま日記のASCII.jp版インタビューをお願いした。経営戦略の話よりも、もっと身近な、仕事への考え方や生活スタイルについて、桜子氏が聞く連載第2回。
夏の風物詩といえば甲子園。真夏の炎天下、大勢の観客で溢れる応援スタンドに、試合開始のサイレンが鳴り響く。毎年、この瞬間を心待ちにしている人も多いであろう国民的行事の歴史は、第一次大戦の翌年(1915年)に大阪豊中球場にて全国中等学校優勝野球大会(大阪朝日新聞社主催、現在の全国夏の高校野球)の幕を開けた。羽織袴姿で帽子を被った当時の朝日新聞村山社長が、マウンドへ処女球を投じたのがその始まりだ。
2008年の今夏は第90回全国高校野球選手権記念大会を迎えた。主催する朝日新聞のデジタル部門の高校野球プロデューサーに、高校野球の魅力とネットならではの取り組みについて話を伺った。
高校野球の始まりとasahi.comにおける高校野球の位置づけ
大正4(1915)年、人気が先行していた学生野球界で、教育とアマチュアリズムを土台にした考え方の全国大会を創設しようとしたのが当時の社主だった。その頃は勝者には高価な景品を贈るのが一般的慣習だったが、 これは教育的でない。そういう大会にしてはいけない。優勝校にはその代わり日本一の旗を出そうと言う社主の発案で優勝旗が京都で作られた。
桜子 朝日新聞社のニュースサイト『asahi.com』開設が95年。高校野球の配信を始めたのはいつから?
洲巻 高校野球の報道自体は当初からやっていました。ただ地方大会の速報を配信し始めたのは2000年です
ブログやSNSが普及した昨今では、ネットでローカルニュースがすぐ読めるのは当然だが、2000年当時は今と事情が違う。中央集権型の編集システムで新聞を作っていた朝日新聞社にとってネットによる情報発信はともかく地域発信は革新的な出来事だった。システムを開発し、マニュアルを完備して、運用に乗せるのに1年かかった。人手不足の地方支局に、ネットの情報発信という新たな作業負荷を加えるのは簡単ではなかったが、それがネットによる地域発信「マイタウンasahi.com」の仕組みとなり、現在の高校野球地方大会速報のネット配信の原型となった。
洲巻 現在では全国の総局の協力を得て、地方大会の試合結果をほぼリアルタイムに集めて配信しています。また全国大会では打者成績だけでなく、投手一球ごとの配球情報がわかる一球速報というサービスを数年前から導入しています
地方大会に参加する学校は約4100(6月中旬現在)。うち1校につき少なくとも9人以上の球児と計算すれば参加者だけで約4万人、さらに父兄や学校関係者、OB等を含めれば、関係者の数は何万人にも膨れ上がる。
洲巻 誰もが甲子園を目指しつつも、全国にはその県なりの甲子園のような舞台があり、そこで試合したいという場所が目標だったり、チームや人によって憧れの舞台が違うんです。asahi.comではそうした舞台から盛り上がっている高校野球を報道していきたいですね
出場校の状況はさまざまだ。選手全員を集めるのがやっとの学校もあるし、ドラフト指名を狙う選手を抱え優勝を目指すチームもある。野球に対する取り組み方もそれぞれだ。参加校の半分は1回戦で敗れるが、勝ち残った人だけにドラマがあるのではなく、負けても携わった人々にはその人なりのドラマがそこに生まれている。asahi.comでは、それぞれの局面での高校野球の魅力を余すところなく伝えていきたいと考える。では、どのような取り組みがあるのか。
(次ページ「甲子園大会より、地方大会を求める高校野球ファン」に続く)

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