──ゆうきまさみさんの原作は独特の間というか、空気感があると思うのですが、そのあたりを映像化する、視聴者の方に伝わりやすくする点で苦労されたことはありますか?
【赤根監督】 たしかに、ゆうきさんの漫画って独特の間合いがあるので、リズム感を保ちつつ間合いを取るっていうのが、映像表現的に難しいところではありましたね。今どきのフィルムのテンポって、かなり上がってるんですよ。 あんまり間を取っちゃうと、だるーくなっちゃってリズム感がなくなっちゃう場合があるので、その辺のテンポを取りつつ、作品テイストに合った間合いが出せていればいいなと思っています。
──設定なんかを見ているとシャマランっていうオリジナルのキャラクターはその間を出すためのキャラクターなのではないかと思ったんですが、そういうわけではないんですか?
【赤根監督】 そういうわけでもないですね(笑)。 やっぱりゴメスとか、ゆうきさんの原作に登場するネーチュラーとかが、間合いを取るキャラクターなんじゃないかと、自分は考えています。
──逆に原作にない表現を用いている部分はありますか?
【赤根監督】
つとむの日常なり、つとむの初々しさ……15歳の少年の初々しさを出せればいいなと思っていて、その辺は今の原作にプラス・アルファして表現しているかもしれません。
幼なじみの夏美とか、オリジナルキャラクターでクラスメイトの小夜香とかとの絡みを面白くしたり。あとは、バーディーとのギャップを男女っていうだけでなく、年齢の部分でも出せると面白いかな、と思っています。
──つとむとバーディーは同い年ぐらいかと思っていました。
【赤根監督】 ええー(笑)! 22~23歳ぐらいの設定です。お姉さんですよ。
──今回、バーディーはアイドルをやられているんですよね。
【赤根監督】 地球に潜伏して半年ぐらい経つんで、身分を隠すためと、捜査のためにグラビアアイドルをやってるっていう設定です。
──グラビアアイドルにしては、ちょっと年齢が高くないですか?
【赤根監督】 いや、そんなことはないですよ。 その辺は「ヤングサンデー」のグラビアページをリサーチしたり、写真撮影の現場を取材させてもらったりしてますから(笑)。有田しおんのスタジオ撮影風景とかは、取材したものを参考に絵を作っています。
──本作品でいちばん力が入っている点、注力している点はどこでしょう?
【赤根監督】 やっぱり、アクションですね。ただ、バーディーは女性のキャラクターなので、ただ単純に「ぶっ壊す」とか「倒す」といった男ヒーロー的なものとはちょっと違う、ヒロイン・ヒーローの面白さを追求したいと思っています。ちょっと可愛らしくて、可憐で、美しいアクションを考えています。それでいてパワフル。その辺が他の作品とはちょっと違うところになっていますね。
──アクションシーンも美しく見えるように気を配っていらっしゃるんですか?
【赤根監督】 そうですね。ただ、殴ったり蹴ったりするところは、男性以上にヒステリックなんですよ(笑)。 1話を観てもらったら、「プッ」と笑ってもらえると思います。その辺りのメリハリはつけているんで(笑)。空中を飛ぶ時は舞うように飛んでいるけれど、殴りかかるともう並の男よりも……1発殴るたびに、ついでに5、6発くらわせていたりします(笑)。
──そうすると、闘っている時とアイドルの時のギャップもまたバーディーの魅力ですね?
【赤根監督】 そうですね、有田しおんの時は天然ボケっていう感じで、ちょっとおっとり系なんですけど、バーディーの時はかなり勝気で、チャキチャキな江戸っ子~みたいな……古いな表現が(笑)。
──本作品を立ち上げるにあたり、気を配った点はどこでしょう?
【赤根監督】
キャラクターデザインが自分の中ではかなりしんどかったかな? ゆうきさんの絵っていうのは、かなり密度の濃い絵なんですよね。
「鉄腕バーディー」をやるにあたって、プロデューサーからは「やっぱりアクションを見せたい」っていうオーダーがあったんですが、密度の高い絵をアニメーションで起こすのは、かなりしんどいんですよ。だから、線を動かしやすく、アクションを付けやすいように線の密度を減らしながらも、ゆうきテイストを残すっていう点には気を配りました。
あとは、デザイナーのりょーちもが持っている要素もキャラクターの中に入れたいっていう意識があったので、その3つの要素を融合させるのに、かなり時間がかかりましたね。
でも、いいキャラクターに仕上がったので、自分では満足しています。動けば動くほど可愛らしいんで、ぜひ動いてるシーンを観てあげてください。
──本作品では原作にいないオリジナルキャラクターが登場しますが、その成り立ちなどで裏話などはありますか?
【赤根監督】
原作には氷川っていうバーディーに敵対するキャラクターが出てくるんですけど、このエピソードが長いんです。これを13話にまとめようとすると、もうダイジェストのダイジェストになってしまって、原作を壊してしまうような気がしたんで、氷川は出せないだろうと。じゃあ氷川以外に新しい敵を作りたいなということで、シナリオ会議の場でいろんなライターさんやシリーズ構成の大野木さんたちのアイデアをもらいながら、オリジナルの敵を作っていきました。
あと、小夜香っていうのはつとむをクローズ・アップさせたかったので登場させました。やっぱり15歳の男の子だったら、好きになる女の子がいるじゃないですか? はじめは夏美かな?と思ってたんですが、ゆうきさんに聞いたら「う~ん、夏美は違うんじゃないかな?」って(笑)。じゃあどうしようかな~?と悩んで、オリジナルキャラクターの小夜香を作ったんです。
ただ単につとむが好きになるだけのキャラクターじゃなくて、つとむが一つ成長する要因となるキャラクターにしようと。
つとむの周りには、バーディーや夏美、あと姉のはづみとか、女性が何人かいるんですけど、みんな男勝りな性格なんです。きっとつとむは生まれた時からずっと女の人にいじめられて育ったキャラクターなんだろうと(笑)。だから男勝りじゃない、バーディーとは性格が正反対の、可憐で優しげでひ弱な感じのキャラクターを出したいなと思いました。それでつとむは小夜香に惹かれるんじゃないかと。「ああ、俺の周りにいた女の子と全く違う!」……みたいな(笑)。「彼女こそ自分の理想の女だ!」……みたいな(笑)。 でも、その小夜香も実は……まだ内緒です(笑)
──オリジナルストーリーにはなかった“リュンカ”について……ヒントをいただけませんか?
【赤根監督】 まだまだ内緒ですね(笑)。 シリーズ全体に絡んでくる重要な存在です。 1話から順番に観ていってもらえれば、わかるように作ってあります。ヒントは……1話にも2話にも出てきます(笑)。
──主題歌アーティストが、ともに沖縄の「あじさい音楽村」出身なんですよね?
【赤根監督】
ええ、オープニング、エンディングともに。
聞かせてもらった候補曲の中で、一番ポップで、音楽的に良かったっていうのがりました。あと詞の内容がバーディーの世界をうまく内包したっていうか、暗示したような詞の内容で。ストレートなんですけど、いい詞の内容でした。とても気に入っているので、ぜひオープニングは楽しみにしていてください。映像も面白いですから(笑)。ちょっと一工夫してありますので。
本編に流れているBGMもとても豪華な美しい曲に仕上がっているので、劇中の音楽もぜひ楽しみにしていてください。
──本作はまさに総合エンターテインメントですね。
【赤根監督】 音楽もいいですし、役者さんもいいですし、映像ももちろん、ひとひねり、ふたひねりしてありますので、観ていて損はさせませんよ(笑)! 20分あっという間っていう感じのフィルムに仕上がったかな?という感じです。
──それでは最後に、読者へのメッセージをお願いします。
【赤根監督】 「鉄腕バーディー DECODE」はいかにお客さんに楽しんでもらえるか? という事を考えて作っています。ストーリーにもいろいろな伏線なり仕掛けはしてありますし、映像的にもいろいろなチャレンジをして、観ている人に面白がってもらえるもの、楽しんでもらえるもの……エンターテインメントというものを目指して作っています。 ハリウッドに負けないようなエンターテインメント(笑)! 是非お楽しみください!
──お忙しいところをありがとうございました。
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