米インテル社の超低消費電力CPU「Atom」プロセッサーと、Atomプロセッサーを核としたモバイル機器向けプラットフォーム「Intel Centrino Atom プロセッサー・テクノロジー」(以下Centrino Atom)。
Centrino Atomとは何かを解説する本特集の前編では、Centorino Atomがどのようなプラットフォームであり、どのように利用されるかを解説した。後編では、Atomプロセッサーのアーキテクチャーと専用チップセット(Poulsbo)の詳細に関して解説する。
トランジスターを減らして低消費電力
Atomは既存のインテルCPUと異なり、低消費電力・低発熱で、ある程度のパフォーマンスを目指したプロセッサーとなっている。製造プロセスとしては、最新のCore 2 Duoプロセッサー(Penrynファミリー)と同じ45nmプロセスを採用している。
「Atomが低消費電力を実現しているのは、トランジスター数の少なさが大きなポイントです。最新のCore 2 Duoのトランジスター数は約4億1千万個ですが、Atomでは約4700万個です。Core 2 Duoと比べると、約1/9のトランジスター数でしかない。これに、最新の45nm製造プロセスが組み合わされて、低消費電力を実現しています。もちろん、トランジスタ数が小さくなれば、プロセッサーのコストも安くなります」とインテル(株) インテル技術部長の土岐英秋氏は述べる。
実際にAtomの最高速品であるAtom Z540は、クロック周波数1.86GHzながら、2.4WのTDPを実現している。これは、ノートパソコン用の超低消費電力版Core 2 Duoプロセッサー(1.33GHzで10W)はもちろん、UMPC用のCPUとしてリリースされているIntel A100・A110プロセッサーと比べても、非常に消費電力が低い。
AtomとIntel A100・A110の主な仕様
プロセッサナンバー | クロック周波数 | TDP(HT OFF) | TDP(HT ON) |
---|---|---|---|
Z540 | 1.86GHz | 2.4W | 2.64W |
Z530 | 1.60GHz | 2.0W | 2.2W |
Z520 | 1.33GHz | 2.0W | 2.2W |
Z510 | 1.10GHz | 2.0W | ― |
Z500 | 800MHz | 0.65W | ― |
A110 | 800MHz | 3W | ― |
A100 | 600MHz | 3W | ― |
例えばIntel A110は、90nmプロセスのPentium M系CPUコアを、800MHzと低クロックで動作させることで3WのTDPを実現している。CPUアーキテクチャーや製造プロセスの差はあるが、AtomはA110の2倍近いクロックを実現しつつも、TDPはA110から80%も低くなっている。