Centorino Atomのロードマップは?
前編でも触れたように、インテルでは2009年に、次世代のCentrino Atomである「Moorestown」(ムーアズタウン)プラットフォームのリリースを予定している。Moorestownプロットフォームは、CPUの「Lincroft」(リンクロフト)、チップセットの「Langwell」(ラングウェル)、無線LANチップの「Evans Peak」(エバンスピーク)などで構成される。
新しいCPUとなるLincroftは今回のAtomをベースに、CPU側にGPUとメモリーコントローラーが統合される。一方チップセットのLangwellには、各種I/OやSSDのコントローラなどが統合される。CPUの性能も、LincroftではIntel A100から40%ほど向上するとしている。
さらに無線チップのEvans Peakでは、無線LANだけでなくWiMAXやBluetooth、GPSなども搭載される。オプション機能としては、3G携帯電話やモバイルTVなどの機能も用意されるようだ。
Moorestownの最大のメリットは、すべてのチップを搭載したマザーボード部が、クレジットカード大に収まるほどコンパクトになることだ。ここまで小型化されれば、さまざまなフォームファクターのMID(Mobile Internet Device)が登場するだろう。Evans PeakでTV受信機能がサポートされれば、ワンセグ放送受信機能付き携帯電話機にも使われるかもしれない。さらにMoorestownプラットフォームでは、消費電力も現世代(Menlow)の1/4になり、アイドル時の消費電力は1/10になる計画だ。
Atom単体では、6月3日から台湾で行なわれる国際見本市「Computex Taipei 2008」で、低価格パソコン向けのAtom「Diamondville」が正式発表される。Diamondvilleのデュアルコア版も発表されると見られている。
Centrino Atomが適する機器とは
Centrino AtomはMID用プラットフォームであるが、実際にMIDを作るに当たっては、OSやアプリケーションが問題になってくる。SCHがメモリーを1GBまでしかサポートしていないことを考えると、Centrino AtomマシンでWindows Vistaを動かすのは非常にきつい。Windows XPでもメモリーが十分とは言えない。
となると、Centrino AtomマシンはOSにLinux系を採用し、特定の組み込みアプリケーションだけを動かすMIDが中心となるのではないか。一部ではWindows VistaやXPを搭載するUMPCも出てくるが、パフォーマンス不足が否めない現状では、日本ではあまり普及しないのではないかと筆者は考える。WindowsベースのMIDやUMPCは、Moorestownプラットフォームが本命となりそうだ。今回のCentrino Atomはある意味、大規模なテスト製品なのかもしれない。
Computex Taipeiでは、Diamondvilleを使用した低価格パソコン「Netbook」「Nettop」が数多く発表されるだろう。Diamondvilleは低価格パソコンを、本格的に製品ジャンルとして確立させるのではないか。
やや懸念しているのは、Diamondvilleと組み合わせるチップセットが、パソコン用としては旧世代のIntel 945Gシリーズである点だ。グラフィックスからI/Oまわりの性能まで、最新チップセットと比べると機能や性能で見劣りする。チップセットの製造プロセスも古いため、消費電力も大きい。Netbook/Nettop市場が本格的に立ち上がるなら、Netbook/Nettopに最適化されたチップセットや、メモリー容量を拡張したSCHなどを提供するというのも、悪くないのではなかろうか。
- 記事中に登場、記事に関連するコード名
- Silverthorne:MID/UMPC用Atomプロセッサー
- Diamondville:Netbook/Nettop用Atomプロセッサー
- Menlow:Centrino Atomプラットフォーム
- Poulsbo:SCH、Centrino Atomプラットフォームのチップセット
- Moorestown:次世代のCentrino Atomプラットフォーム
- Lincroft:次世代のAtomプロセッサー
- Langwell:次世代Centrino Atom用チップセット
- Evans Peak:Moorestownに組み合わせる無線通信/GPS機能チップ