「Intel Developer Forum Shanghai 2008」(以下IDF上海)1日目の基調講演の後半では、モバイル分野についての講演が行なわれた。米インテル社のモビリティーグループ担当主席副社長のデビッド・パルムッター(Dadi Perlmutter)氏は新しいCentrinoプラットフォームに関して述べ、ウルトラモバイルグループ担当上級副社長のアナンド・チャンドラシーカー(Anand Chandrasekher)氏が「Atomプロセッサー」(関連記事)に関しての発表を行なった。
フル装備ノートパソコンからNetBookへ

インテル モビリティーグループ担当主席副社長のデビッド・パルムッター氏
パルムッター氏は、米ガートナー社の調査データを提示し、「ノートパソコンの出荷量はどんどん増えている。2011年には、デスクトップPCの出荷量を超えると予測される。これは、多くの人がデスクトップの代わりではなく、ノートパソコンを最初のパソコンとして購入することを意味する。ということは、ノートパソコンはデスクトップよりも、よりパーソナル化したテクノロジーやバリエーションをそろえる必要が生じている」と語っている。
インテルでは、モバイル(広義のノートPC)用のプラットフォームとして「Centrino プロセッサー・テクノロジー」を提供しているが、PC向けのCentrinoだけでは、多くのユーザーにとって満足いく製品を提供できていない。ユーザーがモバイルに求めるものは多岐に渡り、ひとつのバリエーションでは実現できない。そこで、モバイルも用途別に作っていこうという方向性が出てきた。そのひとつがAtomプロセッサーだ。
パルムッター氏はAtomプロセッサーにより、インターネット利用中心の超低価格PC「Nettop」や「Netbook」、さらにネット利用に特化した携帯デバイス「MID」(Mobile Internet Device)が促進されるとしている。NettopやNetbookでは、Atomプロセッサーの別バリエーション(コード名 Diamondville)が利用される。
DiamondvilleはMIDに使われるAtomプロセッサー(4月2日に発表されたコード名「Silverthorne」)とは異なり、Intel 945Gチップセットとの組み合わせで使われる。チップセットとしては数世代前のものだが、ウェブブラウジングを主体とするNettop/Netbookの使われ方を考えると、性能面では十分で、コストも安く済む。
インテルでは、Netbookを「10インチの液晶ディスプレー、WiFi、LinuxかWindows XP Home Edition」などで構成して399ドル(約4万698円)以下で、Nettopはさらに安い100~299ドル(約1万2000~約3万498円)で登場すると計画している。実際にNettopやNetbookが市場に出荷されるのは、5月以降になる。
「Centrino2」がノートを加速させる
Atomに続いて紹介されたのは、3月に発表された「Centrino2 プロセッサー・テクノロジー」プラットフォームである。Centrino2は「Montevina」(モンテビーナ)のコード名で呼ばれていたもので、CPUは現行Core 2 Duo/Quadと同じCPUを採用し、新たなチップセット「Cantiga」(カンティガ)とWiFiモジュールで構成される。WiFiモジュールのバリエーションには、高速無線ネットワーク「WiMAX」対応版も用意される。
Montevinaプラットフォームでは、パフォーマンス、バッテリー駆動時間、ワイヤレス、管理性などが大幅に向上するとしている。内蔵するグラフィック機能は、3Dグラフィックスベンチマーク「3DMark06」で現行世代の2倍以上のスコアを実現し、BDタイトルのHD映像の再生や映像出力インターフェースの新規格「Display Port」への対応など、大きく機能拡張されている。それでいて、今までよりも低消費電力化を実現することで、バッテリー駆動時間をさらに延長するという。リリースは2008年6月頃になる予定だ。
また、Montevinaのリリース時期に、フラッシュメモリーを使ったSSD(ソリッドステートディスク)を提供する計画も公表した。これは1.8または2.5インチHDDの大きさで、32~160GBまでの容量を持つ。このSSDを使うことで、Montevinaを使ったノートパソコンは高速に動作し、バッテリー駆動時間の長い製品になるだろう。
さらにMontevinaでは、ビジネスパソコン向けのプラットフォーム技術「vPro」の機能拡張も行なわれる。vProは大企業ユーザー向けの機能と考えられがちだが、新しいvProでは盗難対策など、個人ユーザーにも便利な機能が用意される。この機能を利用すると、例えばノートパソコンを盗まれても、登録したユーザーしかパソコンのデータが読み取れなくなる。またHDD自体を暗号化することで、ノートパソコンからHDDを取り外しても、中身を読み取ることはできない。
パルムッター氏は次々世代のモバイル向けプラットフォームについても言及。2009年には「Calpella」(カルペラ)プラットフォームのリリースを計画していると述べた。
