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極寒と悪天候に耐えて――100年前の蒸気機関車に会いにヒマラヤへ!

2008年04月01日 15時03分更新

文● 斉藤博貴

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奇跡の瞬間が訪れるのは年に数回


作例2

ダージリン・ヒマラヤン鉄道は切り立った崖にへばり付くようにレールが敷かれている。この写真のレールの向こうには深い深い谷底がある。山脈はインドからネパールを超えて、さらにパキスタンまで続いている。使用機材:オリンパス「E-510」+「ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5」+「EC14」(1.4倍テレコン)(F16、1/60秒、ISO 100、WB太陽光)

 ASCII.jp編集部は帰国直後の筆者に「愚痴っていいよ」、と言う。思わず口を滑らせると最初に出てきた言葉は「この写真は、年に2・3度くらいしか見れない光景を収めたもの」というものだ。事実、もっとも確率の高い時期のロケながら、12日連続で失敗した末にようやく撮影できたのだ。

 すでに書いたが、ダージリンは年間を通じてほとんどが雨天、よくても雲天という土地柄だ。ここで長時間青空が保たれる日は少ない。しかも、全天が青空という日は年に数度しか見れない。基本的にロケの主な失敗要因は、「雨天」、「どん曇り」、「SL通過位置のみ日陰」、「ヒマラヤ山脈が雲で隠れた」などだ。

 晴天だったのにSLと同時に雲までやって来て、シャッターチャンス寸前で辺り一面を日陰にしてしまうことがある。また、晴天だったはずの空からピンポン球状のヒョウが前触れもなく降ってきて、筆者とカメラを襲うこともある。さらに、晴天で「今日こそ撮れる!」と、成功を確信していると、突然にヒマラヤ山脈の頂上周辺に雲が発生し始めて、SL通過時に肝心なところだけ隠してしまうこともある。ダージリン名物のバンダ(ジェネラル・ストライキ)が、奇跡的に続いた晴天週間と重なってSLが運休が続いたこともあった。



いかに時間をつぶせるか


ループ橋を通過する蒸気機関車牽引列車

バタシア村にある第3ループ橋を通過する蒸気機関車牽引列車。なお、この写真でも分かるが、皮肉なもので天頂方向では青空が現われることが多い。しかし、地表近くの空というものは雲や霞(かすみ)が出やすい

 待ちに待って盛り上がった末に……大自然のイタズラで失敗というのがよくあるパターンだ。運命不信に陥りそうだ。だから、列車のウヤ(運休)や大幅な遅延程度では気を落としてはいられないのだ。「人知を尽くして天命を待つ」という言葉があるけれど、今回の撮影は正直そういった心境に到達させる。

 そう言えば、友人のインド人たちによる現地危険情報の提供などのサポートもなしではやってられない。「今日は×××茶園の若いのが動員されるから×××方面は行かない方がいいよ」などという予想はまず外れることがない。また、予想不能な長い待ち時間の話し相手、うたた寝中の荷物番、お茶やお菓子の差し入れなどを考えると大変ありがたい。だから、差し入れのオヤツのドーナツの油が日本人には許容範囲を超える酸化状態になっていて、後にトイレの住人となる運命が待っていたとしてもしかたがないのだ(笑)。

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