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「未踏ソフトウェア」海外進出支援事業(その4)

Google本社で一世一代のプレゼン──米国進出の手応えを掴んだ未踏メンバー

2008年03月18日 02時49分更新

文● 林信行(ITジャーナリスト)

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4日目で大成長したプレゼンテーション


 一行は昼食のあと、別のビルに案内されてプレゼンに臨んだ。プレゼン会場にたどり着くと、会場は中国人のエンジニアであふれかえっていた。この日は、未踏メンバーに加え、中国系エンジニアが大きなプレゼンを行なう「チャイニーズデイ」でもあったのだ。

 グーグルでは、このように社内のそこかしこにあるプレゼンスペースを使って、グーグル社員や世界中から集まってくる最高水準の科学者、エンジニアが常に何らかの発表を行なっている。

 あらかじめプレゼンテーションの告知をチェックして見に来る人もいれば、たまたま前を通りかかって聞いて行く人もいる。グーグル社員達は、聞いていておもしろくなければ、そのまま立って自分の部屋に戻ってしまう。

斉藤匡人氏

慶応大学の斉藤匡人氏。UNBはビジュアル的にも面白い。それが関心を引きつけたのか、プレゼン中に何人かのグーグラー(グーグル社員)が足を止めて、席に座った

 2日目とは違うプレッシャーの中、日本人プレゼンの一番手を切ったのは、慶応大学湘南藤沢キャンパスの大学院生の斉藤匡人氏で、彼が開発する「Ubiquitous Network Browser」(UNB)を紹介した。

 2日目のベンチャーキャピタリスト向けの発表では、聞き手が技術的なことが分からない可能性があったが、今日、目の前にしているのは世界最高レベルのエンジニアたち。用語解説を入れるよりは、むしろ細かいところに突っ込んだ方がいいと、技術的背景を詳細に話した。

鎌田長明氏

情報基盤開発の鎌田長明氏。「今はマイクロソフトOfficeのWordのみの対応だが、いずれはGoogle Docsにも対応する」とも発言した

 2番手は、(株)情報基盤開発の鎌田長明氏。手元からさっと一枚の紙を取り出し、「さっき、グーグル社内でこんな紙を見つけてしまった」と切り出して、社員達が座る座席の中に割って入って行った。

 鎌田氏は「これはどうやら社員の健康状態に関するアンケートのようだ。こうしたアンケートは便利だけれど、手で入力するのは大変」と言って、手書きのアンケートを市販スキャナーを使って効率的にパソコンに取り込む「AltPaper」の必要性を説く。聴衆を意識して、親近感を持たせる鎌田の作戦は成功し、プレゼンテーション中は何度か笑い声や歓声があがった。

大塚俊一氏

LoiLoの大塚俊一氏

 3番目はLoiLoの大塚俊一氏。内容は2日目のプレゼンをほぼ繰り返すような話だったが、デモの時間を多少多めに用意していた。

 ビデオ編集ソフトの「LoiLoScope」とビデオ管理ソフトの「Magnet」は、なんといってもそのユーザーインターフェースのかっこよさと、レンダリング時間不要なところが売りだ。このプレゼンテーションの後、LoiLoの2人はグーグルと数回に渡って個別のミーティングをすることが決まった。

大囿忠親氏

ウィズダムウェブの大囿忠親氏

 最後の締めは、(株)ウィズダムウェブの大囿忠親氏。パソコン用のウェブサイトをFlashフォーマットに変換して携帯電話で見られるようにする「Mobile Glimpse」を、詳細なスライドや周到に用意されたデモムービー(日本の携帯電話を使って開発されているため、日本であらかじめ撮影しておいた)を使って丁寧に説明していった。

 4人のプレゼンは、グーグルのTechTalkチームによって記録されており、現在、YouTubeで見ることができる(関連リンク)。

 プレゼンテーションの後、グーグルの一室で未踏参加メンバーらとグーグル社員らの懇親会が開かれた。自分の技術をグーグル社員に熱心にデモをする人もいれば、グーグルの日常について熱心に聞いている人もいた。グーグル社内に、日本人が予想以上たくさんいたことに驚いた人もいるようだ。

 グーグルでは、日本で就職しても、日本での勤務を始める前に数ヶ月本社で研修を受けることになっている。毎月ものすごいペースで人が増え続けているグーグルは、「2ヵ月もいると古株の仲間入りができる」と言われているが、研修を受けた社員もこの古株になってから帰国するわけだ。

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