月刊アスキー 2008年8月号掲載記事
'98年の創業以来、検索窓のみのシンプルなトップ画面をアイデンティティとしてきたグーグル。そのグーグルの、日本語版のトップ画面が今年3月に変更された。検索窓の下に「YouTube」や「Gmail」などへのリンクが設けられている。
グーグルは、「ユーザー層の拡大により選択肢を増やす必要が生じたための変更」としている。だが、これまでずっと世界共通のデザインを展開してきたグーグルにとって、日本だけが例外になることは、ブランド戦略に影響はないのだろうか?
検索担当プロダクトマネージャーの倉岡 寛氏によると、トップ画面の変更は意外にも各国のオフィスの施策に任されているとのこと。実際、韓国と中国でもトップ画面が変更された。ただし、これらの国ではタブやアイコンはなく、検索窓の下に、各サービスへのリンクが張られたカラフルなドットが並んでいるだけだ。
「デザインではなく、“世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできるようにする”というミッションが、我々のアイデンティティ。そのミッションのためには各国の事情に合わせたトップ画面が必要であり、各国の事情を最もよく知るのはその国のオフィスだというのがグーグルの考え方です」。倉岡氏は今年5月、急激に検索数が増えているキーワードを表示する「急上昇ワード」を開発。これも、テレビを見ながら検索する人が多い日本の事情に合わせて企画されたという。
もっとも、本社との調整にはそれなりに苦労があるようだ。「東京に来ればすぐに理解できるはずですが、カリフォルニアにある本社の人間には旅行でもないのに乗り換え案内を使う理由がわかりません」。
今回の変更は、検索エンジンの市場シェアでヤフーがグーグルを上回る日本では、トップ画面から各サービスにアクセスする方法に慣れている人が多いことが背景にあるのだろう。だがその一方で、キーワード検索によって情報を探すことが一般化した現在、そもそも多くの人はトップ画面を経由せずに、ウェブブラウザの検索窓から検索エンジンを利用している。果たして、“検索のグーグル”を象徴するトップ画面のデザイン変更は、グーグルの日本におけるシェア拡大につながるだろうか?